~神様の贈り物~
『我々は、この都と共に逝くよ』
『でも、貴方たちにはその子が居る』
『その子は我らの最後の希望。我ら一族が生きた証しだ』
『だから行きなさい、ムーカイトへ』
それが手向けの言葉だった。
その言葉を残して僅か百人足らずの人々は、滅び逝く都と運命を共にした――
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
母はぼくが二歳の時に他界した。
そしてその五年後、父もまた静かに息を引き取った。
身罷る寸前、父はこんな言葉をぼくに残してくれた。
――新しい命の誕生など望むべくもない、年老いた滅び逝く一族だった。
誰もがただ、静かに死を待っていた。
お前の誕生は奇跡だったよ。
一族の誰もが祝ってくれた。
お前が失われたムーカイトの碧い髪を持って産まれた事も……
それは、まるで暗闇に灯りが燈ったようだった。
私が死んでもお前は独りじゃない。
お前には沢山の友達が居る。
空も海も草も木も、鳥や動物たちも……みんなお前の傍に居てくれる。
だから生きなさい。
私たち一族の存在を神様は決してお許しにはならなかったけれど……お前は、お前自身は神様に愛されているのだと私は思う。
たとえ――
「淋しいよ。でも、お姉ちゃんにはお姉ちゃんの帰りを待ってる人がいるから。わがままは言えないでしょ? それに、ぼくは一人じゃないから大丈夫だよ。ぼくの命はね、ぼく一人のものじゃないんだ」
「えっ?」
「ぼくの命は、この島の命でもあるんだよ」
「この島の、命?」
「うん! だからね、ぼくは……」
――だから神様は与えて下さったんだよ。
私たち一族を神様は愛しては下さらなかったけれど……
お前はこの世の全てのものに愛されている。
それこそがお前が神様に愛されている証し。
神様からの贈り物。
だから生きなさい。
たとえ短い命であろうとも、その命尽きるまで精一杯!
お前は独りではないのだから――