表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻の島  作者: トト
2/5

~神様の贈り物~

『我々は、この都と共に逝くよ』

『でも、貴方たちにはその子が居る』

『その子は我らの最後の希望。我ら一族が生きた証しだ』

『だから行きなさい、ムーカイトへ』


 それが手向けの言葉だった。

 その言葉を残して僅か百人足らずの人々は、滅び逝く都と運命を共にした――



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 母はぼくが二歳の時に他界した。


 そしてその五年後、父もまた静かに息を引き取った。

 身罷る寸前、父はこんな言葉をぼくに残してくれた。



 ――新しい命の誕生など望むべくもない、年老いた滅び逝く一族だった。

 誰もがただ、静かに死を待っていた。


 お前の誕生は奇跡だったよ。

 一族の誰もが祝ってくれた。

 お前が失われたムーカイトの碧い髪を持って産まれた事も……

 それは、まるで暗闇に灯りが燈ったようだった。


 私が死んでもお前は独りじゃない。

 お前には沢山の友達が居る。

 空も海も草も木も、鳥や動物たちも……みんなお前の傍に居てくれる。

 

 だから生きなさい。


 私たち一族の存在を神様は決してお許しにはならなかったけれど……お前は、お前自身は神様に愛されているのだと私は思う。


 たとえ――



  挿絵(By みてみん)



「淋しいよ。でも、お姉ちゃんにはお姉ちゃんの帰りを待ってる人がいるから。わがままは言えないでしょ? それに、ぼくは一人じゃないから大丈夫だよ。ぼくの命はね、ぼく一人のものじゃないんだ」


「えっ?」


「ぼくの命は、この島の命でもあるんだよ」


「この島の、命?」


「うん! だからね、ぼくは……」



    挿絵(By みてみん)



 ――だから神様は与えて下さったんだよ。


 私たち一族を神様は愛しては下さらなかったけれど……

 お前はこの世の全てのものに愛されている。


 それこそがお前が神様に愛されている証し。

 神様からの贈り物。


 だから生きなさい。


 たとえ短い命であろうとも、その命尽きるまで精一杯!

 お前は独りではないのだから――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ