斎藤さん
心優しき剥製技士。
潜りの剥製技士でワシントン条約で定められた動物などの身体を極秘裏に加工するために海外を行ったり来たりしている。時折、人体の保存を頼まれることもあるのでエンバーミングの加工技術を習い始めた。生前の生き生きとした美しさを失わずに剥製加工を施す技術に優れているので蒐集家からは定評を得ている。
背が高くておしゃれに気を使う。「愛すべきものは形あるもの」という独特のポリシーを持っていて、魂や霊など目に見えない存在を信じることが出来ない。そのために火葬や土葬を嫌う。
死というものを概念的には理解し、また理解しようと努めているのだが本心では死そのものよりも、それによってその形が崩れてしまう方が悲しい。心を持たなくとも人形のようにその型を保ったまま側に居てくれれば幸せだと思っている。
料理が得意で子どもが好き。近場の孤児院に寄付をするのが趣味で、子どもたちからは「あしながおじさん」として慕われている。ご近所には親の遺産を継いだ有閑貴族だと思われているのでしょっちゅう海外に行ったり屋敷内に動物の剥製がゴロゴロ転がっていても特に不思議に思われたりはしない。
親友の私鉄運転士・清永さんに篠原さん一家の剥製加工を依頼されたときには『失敗しても構わないのなら無償で引き受ける』と言って初めてのエンバーミングに挑んだ。結果、三人の遺体は綺麗なものの、水に浸した陶器のように生気の無い顔になってしまい斉藤さんとしては納得できない形となった。彼は後にこれを『失敗だった』と語っている。
私鉄運転士・清永さんの死後、篠原さん一家の剥製を引き受けて外国に売ったのは斉藤さん。形が残っても失敗作を愛することは出来ず困っていたところ
「欲しいと思う人のもとへ渡った方が篠原さんたちも幸せだろう」
と思い立ちオークションへ出品するに至った。