第一章 ウワサのゲーム
今日は待ちに待った日だ!
やっと、やっと今日”あのゲーム”が届くんだ!
俺が“あのゲーム”の噂を聞いたのは、今からちょうど半年前だ。中学二年の夏、まさに中二病の真っ最中だったおれはあやしいオカルトにハマっていた。その頃ネットで注目を集めていたのは、あるゲームの噂だった。
ネットをしていれば誰もが目にするだろう広告欄、色々な広告がある。いつも通り色々な広告が目に入ってくる中で、ひとつだけほかの広告よりも小さくて、ただ真っ黒な広告があるそうだ。その広告をクリックすると、真ん中に白い文字で「ゲーム、しませんか?」と書かれただけの、そのほかは真っ黒なサイトに飛ぶらしい。そして、その白い文字をクリックするとゲームが送られてくる、そんな噂がはやっていたのだ。この噂には奇妙なところがいくつもあった。まず、そのゲームは住所などを記入しないのに送られてくるというところだ。「ゲーム、しませんか?」の文字をクリックすると、その下に日付が表示されるらしい。たったそれだけで、その日付にゲームが届くという。そして、特にお金が請求されるようなこともない。そして、そのゲームはその人が最もよく使っているゲーム機に対応したものが送られてくるらしい。例えば、プレステを一番よくやっている人にはプレステのカセットとして届くし、PCゲームをよくやっている人にはPCゲームのカセットとして届くらしい。そして、一番奇妙なのはそのゲームが届いた人は必ず行方不明になることだ。はじめにこの噂を聞いたときはよくある都市伝説のひとつとして特に注目していなかった。なんだか不気味な噂ではあるが、それほど怖いわけでもないし、他にもっとそそられるような噂話はたくさんあった。おれがその噂に興味を持ったのは、オカピーの事件があったからだった。
その頃のおれは四六時中オカルト掲示板に入り浸っていた。おれが入り浸っていた掲示板にはオカピーというハンドルネームのやつがいた。オカピーはいろんな都市伝説、あやしい噂や呪いのたぐいをことごとく自分で試しては結果を書き込んでいた。都市伝説や呪いなんてどれもただの作り話だ、そう思っていても、実際にやってみるとなると怖くてできない。そんなオカルトばなしをどんどん試していくオカピーは、オカルト界では有名だった。そしてあるとき、オカピーが噂の広告を見つけたという書き込みをした。
オカピー:「謎のゲームが送られてくるという広告を発見しました」
オカピー:「その広告をクリックしたら本当に“ゲーム、しませんか?”としか書かれていないサイトにとびました」
オカピー:「“ゲーム、しませんか?”をクリックしてみます。」
オカピー:「“ゲーム、しませんか?”の下に、明日の日付が表示されました」
オカピー:「もうすぐ24時をまわるので、郵便受けを見てきます」
オカピー:「何も入っていませんでした」
オカピー:「学校から帰宅しました。17時半ですが、まだ届いていません」
オカピー:「23時です。見てきます」
オカピー:「何も入っていませんでした」
オカピー:「23時半です。これから24時まで郵便受けを見張ってきます」
オカピー:「驚きました。ずっと見張っていて、誰も来なかったのですが、23時59分に見たらCDのようなものがそのまま入っていました」
オカピー:「いつも使っているプレステに入れてみます」
オカピー:「画面が真っ暗です。起動はしているはずですが」
この書き込みを最後に、オカピーの書き込みはなくなった。いままで噂の検証を途中でやめたことなどなかったオカピーの書き込みが途絶えたこのオカピー事件から、このうわさは一気に注目のまとになった。おれはこのオカピー事件をリアルタイムで見ていた。そしてもちろんこの噂のゲームに夢中になった。それから三ヶ月は毎日、学校とご飯とトイレと風呂と睡眠以外のすべての時間を噂のゲームに費やした。でも結局、小さくて真っ黒な広告は見つからず、もうだめだとあきらめていた。
そして昨日、学校から帰るといつものようにパソコンをつけてオカルト掲示板を開いた。
いつも通り、サイトの上の方の広告欄があり、そこに並ぶ派手な広告が目に入ってくる中で、一番右端の広告だけが妙に浮いている。ほかの広告よりも小さく、真っ黒なのだ。“やっと見つけた!”その小さくて真っ黒な広告があの噂の広告だとわかった瞬間、反射的にその広告をクリックしていた。ウワサ通り、真ん中に「ゲーム、しませんか?」という白い文字がある以外は真っ黒なサイトが開かれた。またもや反射的にその文字をクリックすると、その下には今日の日付が表示された。
それから、嬉しさと緊張感がまざりあった何とも言えない気分のまま、一睡もせずに学校に行き、授業中に爆睡していびきをかき、先生にこってり説教された。まったく、あのくそ教師め。これからオカピー事件の真相を確かめられるかもしれないというのに、くだらない時間を使わせやがって。まあそんなことはどうでもいい。現在、23時57分。23時から10分ごとに郵便受けをチェックしているが、まだ何も入っていない。外にある郵便受けは玄関のドアにある覗き穴から常に監視している。しかし、今のところだれも来ていない。もう58分になった。やっぱりこのウワサも単なる作り話だったのか?まあ、冷静に考えれば住所も何も書いてないのにゲームが届くわけないよな。オカピー事件だって、ただオカピーが書き込みをやめただけで、本当に行方不明かどうかなんてわからないし。もう59分だけど、やっぱり誰も来ない。あー、すごいドキドキして損した。おれの三ヶ月間の努力もまったく無意味だよ。やっぱオカルトなんてみんな作り話に決まってるよな。なんかばからしくなってきた。はい、24時になりました。だれもきません。あー、なんかほんとにばからしい。ほんと、こんなのでどきどきして、おれはなにをやってたんだ。一応郵便受けの中も見てみるけど、もちろん何も入って…。え、あ、入ってた。
真っ黒いCDのようなもの。そうとしかいいようがない。郵便受けにこの真っ黒いCDのようなものを発見した俺は、頭に浮かぶいろんな疑問をひとまず無視して、真っ黒CDを取って自分の部屋に駆け込んだ。明るい部屋のなかで見てみても、真っ黒CDは真っ黒CDとしか言い様がない。ていうか、なんでだれも来てないのにいきなり郵便受けの中に入ってんだよ!いつから入ってたんだよ!23時50分に見たときは絶対に入ってなかっただろ!ふざけんな!よし、落ち着くんだ。落ち着け。とにかく、ここまではあの噂の通りだってことだ。よし、落ち着いて考えていこう。それじゃあ、このあとはどうなる?このあと俺はいつも使ってるプレステを起動して、この真っ黒CDを入れる。そして、行方不明になる。え、こわッ!そうじゃん、噂の通りならおれ行方不明になっちゃうじゃん!怖すぎるって!いやまて落ち着け。確かに怖いが、ここまできたらやるしかないだろ。うん、ここまできたらやるしかないな。よし、まずはテレビをつけよう。そして、プレステを起動させる。よし、そうしたら、プレステに真っ黒CDをセットする。…。なにも起きないぞ。テレビ画面は真っ黒なまま、、あれ、なんか周りも暗く…。
…ここ、どこ?




