もえるナイト
なんか知らんが俺ん家に泊まることになった萌香は、風呂を掃除してそのまま入浴中。シャワーと洗濯機の音が聞こえる。
そういや萌香のヤツ、着替えどうすんだ? 乾燥機はあるけど性能良くないから乾かすまで1時間くらいかかる。残念ながら母チャンの服は俺のより倍近くでけぇから着れないだろうし、下着なんかブカブカ過ぎて役目を果たせないし、洗ってはいるけど味噌付きっぽくてなんかきったねーから貸せねぇ。
まぁ、女子なら1、2時間くらい風呂入ってても平気か。
考えてるうちに風呂場のほうからガタガタと音がしてカラダに白いバスタオルを巻いた萌香が出てきた。
「おいおいおいっ! 性欲魔神の前にこんな格好で出てくるとはイイ度胸じゃねぇか!」
「あははー、着替え無いの忘れてたー」
「そうか! だが俺が性欲魔神ってのは否定しねぇのか?」
「ナニ言ってんのさー、否定したらねっぷの存在を否定するのと同意じゃ~ん」
「なんだと!? 俺は神聖な存在だぞ!」
「神聖なアリプロの曲をよく聴いてみ~。たまにアレなのあるから」
「アリプロ?」
「あ~、知らないか~。んとね~、とりあえず乾燥機壊れてるよ~ぉ」
「なにー!? おいおいおいっ! なんてこった! じゃあ今夜はノーパンノーブラで過ごすのか!? まぁ母チャンの部屋で寝る分には俺が勝手にオカズにすれば無問題だけどな!」
「え~、せっかくお泊まり会なんだからねっぷくんと一緒に寝るよぉ」
「そうか! じゃあ俺は今から風呂入ってイッパツぶちまけっから!」
「浴槽の中で?」
「おう! 色々妄想しながらな!」
俺が言うと、萌香はクスリと鼻で笑ってからボソリと言う。
「へぇ、意外とマトモじゃん」
ん? オカズ宣言はぶっちゃけ俺自身さえマトモとは思えんが、どういう意味だ?
◇◇◇
俺は興奮しながらぬるま湯に浸かって浴槽の中をくまなく探索したが何も見付からなかった。けどオカズはバッチリだぜ!
で、何故か歯磨きセットを持ち歩いてるという萌香とオーラルケアをし、寝る時間になった。
萌香はバスタオルを巻いたまま、さも当然かのように俺のベッドに横たわった。
「ほらほら、早く寝ないとオバケが出ちゃうゾ☆」
「なんだと!? なんか知らんがオバケ苦手なんだよ!! なんかこう、トラウマなんだ」
「あははー、マッキーもオバケの話するとヤな顔すんだよね~。恐怖感というよりは気持ち悪いものを思い出したみたいな。あとハゲオヤジが苦手っぽい」
「ハゲオヤジ? なんか引っ掛かるぞ。まぁいい。きっとオバケに記憶を封印されてるんだ。無理に思い出す必要はない。それより萌香、俺は床で寝ろってか?」
「いやいやぁ、さっきも言ったけど一緒に寝るんだよぉ~。じゃなきゃせっかくのお泊まり会なのに寂しいじゃん」
「お、おぅ、そうだな。萌香の言う通りだ」
「そうだ! 私の言う通りだぁ♪」
萌香は左の人差し指から小指までの四本を上に向け、クイクイッと手招きした。萌香のヤツ、挑発してんのか? それとも生理前で欲求不満? いや、もしかして萌香には俺みたいに性的な意識
がないのか? 万希葉だったら一緒に寝るとか言ったら殴られたり蹴られるだろうし、麗ちゃんにはスカートめくりしたら気絶させられた。俺はそれらを思い出しながら、恐る恐る萌香の横に寝転んで毛布と布団を掛けた。
やっべぇ、シャンプーの甘い香りが鼻をくすぐるぜ…。使ってるのは俺と同じシャンプーの筈なのに、不思議なもんだ。
「ねぇねっぷくん、寒いから抱き枕になってもらっていい?」
「おう、ナニされてもイイならな」
「あははー、じゃあ遠慮なくー」
うおお、俺の左腕に萌香の柔らかい感触が。さっきヌイたばっかなのにムスコが元気になってきたぜ。
どうすんべ、萌香にはスカートめくりもパイタッチもお尻パンパンもしてるから少しくらいの手出しは許してくれるだろうけど、今回はタオル一枚だ。下手に手出しして興奮度マックスになったら妊娠させちまうかもしんねぇ。
『ス~、ス~…』
っておい! こっちがガチで悩んでんのにもう眠ってやがる! せめて1分くらいは起きてろよ!
ゴロンゴロン!
うおおっ! さっそく寝返りうって毛布と掛け布団奪いやがった! くそっ! なんてこった! 今度は俺がさみいじゃねえか! いくら6月だからって夜は冷えるんだよ! 萌香のヤツ、私はバカだからみたいなこと言っといてとんだ策士だぜ!
バサバサッ!
なんだ、また寝返りか。って…。
うおおおおおおっ!! 今度は布団も毛布もタオルも剥いだぞ!! つまりアレだ!! 萌香メッチャ綺麗なカラダしてやがるぜ!! 俺のムスコが大変になっちまったあああ!!
◇◇◇
「ふぅ…」
萌香のヤツ、スヤスヤして、なんだかすげぇ気持ち良さそうに眠ってんじゃねえか。
俺は萌香にタオルと毛布に布団を掛け直した。
◇◇◇
トントン!
誰かが俺の肩を叩いてる。あぁ、萌香か…。俺、何時間くらい寝たんだ? 今日は休みの土曜日だから遅刻の心配はねぇけど…。
「ねっぷくん、朝ごはんできたゾ☆」
「お、おぅ、サンキュー…」
ぼんやり目覚まし時計を見ると8時半。
「えへへー、今日はハムエッグにしてみましたぁ。神奈川で定番の朝食らしいよ~。あ、勝手に冷蔵庫開けちった」
「おぉ、冷蔵庫は勝手に開けてくれ」
「うん。でさ、ねっぷくん、朝起きたら私のお腹にパリパリしてるのが付いてたんだけど~」
「あれ? おかしいな。ティッシュで拭いたんだけど…」
やっべぇ、拭きが足りなかったか? 実は我慢できなくて萌香の腹にイッパツぶっかけちまったんだよな…。
「はははっ! そうだったんだぁ~」
「おいおい、俺が言うのも変だけど、怒んねぇのか?」
「え~、ねっぷくんなら怒らないよ~。今までだってセクハラされてきたもん」
つまりアレか? 俺は呆れられてんのか? そりゃそうだよな。万希葉みたいにいちいち怒ってたら普通は疲れちまうもんな。
「でも…」
制服と赤いエプロンを纏った香は
、祈るようなポーズで両手を組み、顎に当てて頬を赤らめた。
「今回はさすがにちと、恥ずかしかったかな。へへっ!」
うおっ、萌香のヤツ、照れてやがるぜ…。
◇◇◇
なんやかんやゲームとかトランプで盛り上がってたら夕方になり、俺はマンションの昇降口まで萌香を見送りに出た。
「じゃあ、また学校でね! 楽しかったゾ☆」
「おう! じゃあな!」
俺は萌香が角を曲がって見えなくなるまで見送った。
中坊の頃に勇を泊めた時の勢いで泊めちまったが、良かったんかな?
まぁもう後の祭りだし、考えてもしょうがねぇか!
ご覧いただき本当にありがとうございます!
後ほど公開予定の『麗編』第64話ではちょっと大変なことが起こります。




