なんなんだこの展開は!?
「ぅほーいっ!! ぅほほほーいっ!!」
「うーっ!! はーっ!! うーっ!! ぎひゃあああ!!」
「おりゃおりゃおりゃー!!」
ササッ!! シュシュッ!!
びゅびゅっ!! びゅーっ!!
「はい、お疲れ様でした」
午後4時、麗ちゃんがみんなに号令をかけた。
近頃の新聞部では、部員全員で麗ちゃんに武術の稽古をしてもらっている。
これは留萌家に伝わる奥義で、ご先祖様の家族がヒグマに食われたのを機に、麗ちゃんみたいなか弱い女性でも使える武術を開発したらしい。
俺と水菜ちゃんと見知さんは声を出してパンチとかキックのトレーニングをしてたけど、新史さんは無言で坦々と、勇は紫色の液体が入った注射器を持ちながら正拳突きしてた。しかもどぴゅどぴゅ噴射して危険なニオイがするぜ…。
「いやぁ、さすが麗ちゃん! 神たる俺をも凌駕する技を習得してるとは驚きだったぜ」
「そ、そんな…」
あれれれれ?
俺が称賛すると、麗ちゃんは何故かシュンとしてしまった。
「ねっぷせんぱい、無神経です!」
「だね。麗姫は乙女なのだよ? 強いみたいなことを言われてもあまり嬉しくは思わないだろう」
水菜ちゃんと見知さんの冷ややかな眼差し。やべ、これガチだ。
「うおおお!! そうだったのか!! 済まない麗ちゃん!! この通りだ!!」
なんてことを、俺はなんてことをしちまったんだあああ!!
俺は麗ちゃんの前に跪き、両手の平を擦り合わせて拝むポーズを取った。
「えっ!? そんな、大丈夫、なんでもないから、ただ、返答に困っただけで…」
「うおおおっ!! 俺は麗ちゃんを困らせたのか!! 申し訳ありませんでしたー!!」
「う、うん、大丈夫だよ」
とは言ってくれたけど、後日何か詫びなきゃな。
◇◇◇
「おーっすねっぷくん!」
駅前で新聞部のみんなと分かれて、自宅マンションの前に辿り着くと、萌香と鉢合わせた。
「おう! バイト帰りか?」
「ううん、マッキーん家であんなコトやこんなコトしてきたー。ねぇねぇ、ごきぶりんに会っていっていぃい~?」
万希葉とあんなコトやこんなコト? まぁいっか。
「おう!」
ということで、萌香は俺の部屋でごきぶりんと戯れ始めた。母チャンは夜勤だから今夜は帰らない。
「私ねー、自分が予想以上にバカだって気付いたのー。マッキーが人質に捕られてる時に能天気でさー、この前マッキーにショックだったって言われちゃった。そりゃそうだよね」
唐突に言った萌香の額ではごきぶりんが触角をピクピクさせている。
「それは俺が原因だろ。犯人の神経逆撫でして、自分のバカさ加減で万希葉を殺しちまうとこだった」
「でも、ねっぷくんは犯人との交渉頑張ってた。私はDQNな発言繰り返して、何も出来なかった」
「そんなことねぇ。万希葉のために自分が殺されるかもしんねぇ現場に走ったじゃねぇか」
「それはみんな同じだよ」
「いや、出来ねぇヤツだって多い。俺らはそういう集団だけど、普通のヤツなら尻込みするぜ?」
「でも…」
萌香のヤツ、俯いちまって当参ってるな。
「大丈夫だ。ごきぶりんに優しく接するヤツに悪いヤツはいねぇ。最初は物騒なこと言った万希葉だって改心したしな!」
ごきぶりんは萌香の左肩に異動して、右手を上下に動かした。たぶん萌香の肩を叩いて励ましてるつもりだろう。流石ごきぶりん! 気が利くぜ!
「あははー、ごきぶりんにも励まされちゃった。うん、なんか元気出てきた」
「そうか! 良かったな! じゃあパイタッチさせてくれ!」
「あははー、逆に何も言わないでやれば許したゾ☆」
「おっと! しくじったぜ!」
「じゃあ、今夜泊まっていい?」
「おっ?」
あれ? なんだこの展開? 基本的に来る者拒まずだから断る理由はねぇけど。
「ん? どうなの?」
萌香は柔らかい表情で俺を見詰めている。
「いいぜ。歓迎だ」
「あははー、ありがと♪ じゃあお風呂掃除してあげるー。その代わり一番風呂ねー」
「お、おう…」
な、なんなんだああああああ!?
ご覧いただき本当にありがとうございます!
ラストに向けてイベント目白押しです!




