10000の愉快な仲間
麗ちゃんがウチに来てから3日後の日曜日。今日は萌香が来ていた。14時30分頃とあって、うす塩味のポテチを持参してごきぶりんに会いに来たそうだ。うんうん、ポテチ持参とごきぶりんとの面会、どっちも良い心掛けだな。
母チャンは昼頃からデパ地下に行くと言って出掛けたきり帰って来ねぇから、またも女子と二人きりというシチュエーションだ。
しかしアレだ。なんで女子は休みの日も制服なんだ? 気になったから萌香に訊いてみた。
「それはね~、服選びが面倒だからだよ~」
おぉ、手抜きだったのか。なら俺みたいにパンツ一丁で出歩くか、ジャージで良くね? というのはご法度だってくらい俺でも理解してるぜ。
「あれれ~? もしかしてねっぷくん、私と何かイイコトしたくなっちゃったぁ? さっきから胸元と太ももを交互にガン見してるよね~」
ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら上目遣いで俺を見る萌香。
「おう! バッチリガン見してるぜ! ちょっとパイタッチしていいか?」
リボン緩めてるから屈むと谷間が見えるんだよな! いやぁ、絶景だぜ!
「あはは~、ねっぷくんは欲望に正直だね~。でもダメ~。そういうのは、好きな人とするんだゾ☆」
萌香に可愛らしくウインクして拒否された。
「おいおい、冗談だって! 紳士たる俺がセクハラなんかする訳ないだろ!」
「えっ? 何か言った?」
なんだ、聞き取れなかったのか。じゃあ声のトーンを上げて喋るペースを緩めてもう一度。
「紳士たる俺が、セクハラなんか、する訳ないだろ!!」
「ゴメン、なんか私、幻聴を患ってるみたい」
「おいおいおい! 大丈夫か!? 耳鼻科行くか!?」
「うん。行ったほうがいいかも。ねっぷくんが紳士だなんて、聞き間違いにも程があるもんね!」
「なんだ、ちゃんと聞こえてんじゃねぇか!」
「あ、もしかして私いま、夢みてるのかな?」
「ん? 夢なんかじゃないぞ。試しにあちこち触ってやろうか?」
「ううん、大丈夫。いまの発言で夢じゃないってわかったから」
「そうか! 良かったな! おっ、サンキューごきぶりんと愉快な仲間たち!」
萌香と会話をしていると、ごきぶりんと無数の愉快な仲間たちがポテチとウーロン茶を用意してくれた。1匹居たら50匹というが、軽く10000は超えている。さすが俺の相棒! 友達多いぜ! たぶんウチは北海道で一番ゴキブリが住んでる家だな! もしかしたら世界一かもしんねぇぜ! これは自慢できるな!
ごきぶりんと愉快な仲間たちは細長い触角をピクピク上下させながら『どういたしまして』の合図をした。
「あははー、みんなカワイ~」
すると、ごきぶりんは嫉妬したのか、萌香の左腕に飛び付いた。
「エヘ~、ごきぶりんヤキモチ妬いてるんだ~。よしよ~し、ごきぶりんが一番カワイイゾ☆」
萌香はごきぶりんの触角を撫でながら宥めた。愉快な仲間たちは各自何処かの隙間に入り込んで散会していった。
萌香は面倒見がいいから、年下とか草食系男子と付き合うといいかもな。
『『ピピピピピピピピピピッ!』』
「マッキー!?」
「万希葉!?」
ストーカー対策用端末から緊急の呼び出しだ。発報主は案の定万希葉。場所はこのマンションのすぐ近くにあるコンビニ付近だ。
「俺は万希葉を助けに行くから、萌香は警察に通報してくれるか」
一刻も早く助けないと、万希葉が危ない。
「うんわかった。通報したらすぐ行く」
「ダメだ。下手すりゃ萌香も何されるかわかんねぇ」
「うん。それでもマッキーを助けたいから」
萌香は強い意志を露にした眼差しで俺の目を真っ直ぐ見詰めた。こりゃ撒いても追って来るな。
「よし、わかった。もし襲われそうになったら俺に駆け寄れ」
「ありがとう」
「よし、行くべ」
「うん」
俺と萌香は拳を軽くぶつけ合って外へ飛び出した。
待ってろ万希葉、すぐ助けるからな!
ご覧いただき本当にありがとうございます!
ごきぶりん大活躍でしたw これからもっと活躍するかもです !




