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さつこい! 神威編  作者: おじぃ
北海道での日常編2

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仲間が増えたぜ!

 北海道へ帰還した翌日の土曜日、俺は勇、万希葉と一緒に近所のファミレスでランチすることになった。この三人はご近所さんだ。


 窓際にある四人掛けの席で、俺は窓側、勇は俺の隣、万希葉は二人の向かい側に座ってお揃いで注文したオムライスの到着を待っている。


「お待たせいたしましたー! オムライスでございまーす!」


 ムムッ!? 何処かで聞いた声と神威レーダーが判断した!


「ルッツーじゃん! ここでバイトしてるんだ!」


 誰かと思えば、俺のオチンを2番目に見た女子、留寿都るすつ萌香もえかだ。最初に見たのは中学の修学旅行でシコリンピックに乱入してきた万希葉だ。万希葉は一度に何人ものオチンを見ておトクな思いをしたぜ!


「おーす! なにマッキー、もしかして二股!? キャハッ☆」


「なんだ!? 俺と勇はいつの間にか万希葉とデキてたのか!?」


 さすがスターだ。やる事が違うぜ…。


「ち、違うし! 二人とも何言ってんのよ!?」


 真っ赤な顔の前で両手をブンブン交差させる万希葉。


「ははーん、じゃあ本命はどっちかな〜」


 ルッツーこと留寿都は配膳しながら不敵な笑みで俺と勇を交互に見る。


「わ、私たちは近所に住んでるから一緒にランチしてるだけですーぅ!!」


 万希葉のヤツ、妙に取り乱してるな。女子の間では意外とイジられキャラなのか?


「はいはーい、ではごゆっくり〜。私、そろそろバイト終わるから合流していいかなぁ?」


「わ、私は別にいいけど…」


「おう! 一緒に遊ぼうぜ! 勇はどうだ?」


「俺は構わんが」


「じゃあダブルデートけってーいっ!」


「べ、別にデートじゃないし!」


 留寿都は万希葉をさらりと交わし、ルンルンしながら厨房へ戻っていった。


 オムライスに描かれたケチャップの模様は、俺のは興奮して鼻をビンビンにしたゾウの顔。鼻から何かをビューッと出している。あぁ、アレだ! 水だな! しかし留寿都のヤツ、なんでゾウなんだ? 俺といえば神だから、鳥居とか自由の女神が合ってると思うぜ!


 勇のは飛行船のような丸みのある模様だが、よく見るとボディーに窓があり、両サイドにはお粗末な丸い翼のようなものがある。たぶん飛行機だ。勇のヤツ、ちゃっかりイジられてやがるぜ…。飛行機の件で学年ではすっかり有名人だからな!


 万希葉のは、『ネ申♪』と描かれていて、音符の右上には小さなハートマークが二つある。音符は音楽やってる万希葉らしいが、『ねしん』ってなんだ? オムライスのケチャップを見た万希葉は、沸騰しそうな顔で瞬時にケチャップを伸ばし文字と模様を消した。


 オムライスを食べ終え、俺と勇はおとこらしくボリュームたっぷりのいちごパフェを追加注文。万希葉はドリンクバーのハーブティーで心を落ち着かせようと必死だった。何をそんなに焦る必要があるんだ?


「お待たせー!」


 バイトを終えた留寿都が私服に着替えて万希葉の隣に座った。


「おーっす!」


「べ、別に待ってないし…」


「おやおやゴメンよマッキー、ちょっとイジり過ぎたかな?」


「べ、別にそんなんじゃ」


 万希葉、キョドり過ぎだぞ。


「ごめんねマッキー。んで、今日はなんでこんなイレギュラーな組み合わせなの?」


 留寿都は子供を宥めるように万希葉に詫びてから、俺ら三人に目を遣って訊いた。コイツ、凶暴な万希葉を飼い馴らしてやがるぜ。


「留寿都よ、生きてると色々あるんだ」


 今回集まったのは、万希葉をストーカーから護衛するために、具体的にどんな対策があるか、見知さんが開発を進めているケータイと無線の機能を併せ持つポータブル機器についてとか、つまりストーカー対策だ。


「色々あるよね〜。私なんかさ〜、横浜の中華街で肉まん買ったんだけど、後から聞いたら肉まんの中身がカラスの肉だったっぽいんだよね〜。道理で臭みが強いと思ったんだぁ」


 勇は『あぁ、留寿都ってバカなのか』みたいな表情だ。こらこら、失礼だぞ! 俺と静香に対してもな!


 しかし留寿都のヤツ、カラスなんか食ってよくピンピンしてるな!


「おう! それな、俺も買おうとしたんだけど、万希葉に止められてやめた」


「だって、明らかに怪しいもん」


「そんなこんなで、人生色々だ!」


「だね~。でさ、中華街の後に元町もとまちで買い物して、港の見える丘公園に続く『コクリコ坂』の段差で足踏み外して頭打ったんだよね~。ついでに10メーターくらい転げ落ちた。世界は物凄い勢いで回ってるって実感したよ~」


「おいおいおい! よく生きてるな!」


 留寿都はケロリしながら言ったが、実際にそんな目に遭ったら全身打撲して脳震盪のうしんとう起こすんじゃねぇか!?


「ルッツー頭大丈夫!?」


「私はそんなカンタンには死なないよ! マッキーは何気に失礼だゾ☆」


 なんなんだコイツ、侮れないニオイがプンプンするぞ!?


 『コクリコ坂』ってのは確か、外人墓地と横浜地方気象台の目の前にある階段状で車一台ちょっとくらいの幅がある坂だよな! 俺たちも通ったぜ!


「んで、本題は?」


 留寿都はにっこりしたまま俺に訊いてきた。


「それは、私が話す」


 言って、万希葉は一呼吸置いてストーカーについて話した。


「そっかぁ、ってかそれ、真っ先に私とかバンドの面子に話しなよ!」


 こういう場面で辛辣しんらつな表情を見せず、笑顔を保てるのは留寿都の良さかもな。


「だ、だって…」


 留寿都に言われて俯く万希葉。万希葉としても、先に留寿都やバンドの面子にぶっちゃけるべきだったと後悔しているのかもしれない。


「でも、マッキーらしい、かな? みんなに気を遣わせると思って、言いたい事とか相談事とか、限界まで我慢して…」


 万希葉を認めながらも、留寿都は笑みを保ったまま、しかし表情に若干の陰りがある。


 一方、万希葉は黙り込んだまま、少し頬を赤らめて目を潤ませている。


「でもね、ウチ等仲間じゃん! そんな台詞、在り来りかもだけど、私バカだからさ、咄嗟に言える事といえばそんくらいしかないけど、でもね、私はマッキーのこと、心の友だと思ってるから、だからね、ストーカーなんて、男子でもやっつけるの大変な相手でも…」


 ここまで寂しそうな笑顔のまま万希葉に語りかけていた留寿都は、キュッと表情を引き締めた。


「私は戦うよ」


 万希葉は相変わらず黙り込んだままだが、そ、そんな事言われたら恥ずかしくてどうしたらいいかわからないじゃない! って具合に真っ赤っだぜ!


「がーはっはっ! 万希葉は仲間いっぱいだな!」


 ついでに、留寿都は自分をバカと言ったから、静香に次いで赤点仲間が増えそうだ。他のみんなは何気に80点とかフツーに取るからな。まったく、ドイツもコイツもとんだコンピューターブレインだぜ。テストは俺みたいに平均30点くらいが人間らしくてちょうどイイのさ!


「よっしゃ! ここはイッパツ気合い入れるか! ほらほら、傍観者気取りの勇も! って、あれ?」


 勇はグスッと鼻を啜って涙を浮かべている。


「おうおうおう! なんだイサーム、感動して涙ちょちょぎれたか!」


「や、やばい、なんか、感動したっ…」


「そうかそうか! 良かったなイサーム!」


 さすが親友! コンピューターブレインのくせに人間くさいぜ!


「はははっ! なーんだ、ねっぷってマッキーの言う通りイイヤツじゃん! ついでに勇くんも!」


「ちょっ!? 余計な事言わないでよっ!」


 万希葉はまた沸騰したような顔になり、掌で留寿都の二の腕を強めに突いた。


 勇はポーカーフェイスだが『俺はついでかよ』とか思ってるだろう。


「なんだ万希葉、そんな事言ってたのか! ハッハッハッ! そうだろそうだろ! 俺はみんなを導く神だからな!」


「あ~、やっぱちょっと残念なんだ…」


 なぜか呆れ顔の留寿都。


「なんだと!?」


「ねっぷ、ファミレスであんまデカイ声出すな」


「おっと失礼! よし、気を取り直して気合い入れるぞ!」


 テーブルの中止でみんなの手を合わせる。


「神に抗う者、命なきと思え! 気合いだ! 勇気だ! 撃退っ、だあ!!」


 おっと、言われた矢先からデカイ声を出しちまった!


「だーあ!」

「だぁ!」

「だぁ」


 留寿都、万希葉、勇が俺に続いた。気合いがみなぎるぜ!


 仲間が増えたところで、神威セキュリティーは更に強化されたぜ! そろそろ『カムソック体操』を考えないとな!

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 再び北海道での日常が始まりました。


 当作品や他の拙作、アニメ等の作品の舞台となった土地の写真をTwitterにて公開しております。


 名義は0jii1、アイコンは海岸から眺めた初日の出の写真を使用しております。

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