試食!
食後、アロハさんに冷凍室を開ける了解を得て自作のシャーベットを取りに行った万希葉だが、5分経っても戻らない。待ってるみんなが異変を感じ始めているようだ。
アイツ、失敗したな。冷え固まってなかっただけならすぐに戻る筈だ。
味見で芳しくない結果になったから、みんなに食べさせるのを戸惑って戻れないんだ。
「ねっぷ、ちょっと万希葉の様子見て来てくんないか」
「おう」
静香に言われ、キッチンへ向かった。俺たちが居るリビングは、接待用の広いリビングで、キッチンは隣の家族用のリビングを隔てている。
ってか静香、お前が行って慰めてやれよ。察してんだろ?
キッチンに行くと、万希葉が呆然と立ち尽くしているのが見えた。
「おいおいどうした〜。なかなか戻って来ないからみんな心配してるぞ」
「ねっぷ!?」
万希葉は俺に背後から突然声を掛けられてビックリしたようだ。
「おう、なんだ、アイス固まってんじゃねぇか。一口くれるか?」
「えっ!? いや、ちょっと…」
「どうぞ…」
万希葉は戸惑いつつ、近くにあったデザート用の小さなスプーンで掬って、恥ずかしそうに頬を赤らめながら差し出した。くそっ、やっぱ可愛いな。二人の女性の間で揺れるマイハート。俺はスプーンと万希葉の胸元に交互に目をやる。
うおっ、うおっ! 胸チラだ! 谷間が見えるぞ!
俺は胸チラに気を取られつつ、万希葉が作ったシャーベットを一口含んだ。
万希葉はそわそわしながら俺の表情を窺っている。
「おっ、これアレだ! 流行りの塩風味だ! さすが万希葉! 流行に敏感だな!」
本当は塩辛くするつもりはなかったんだろうが、これはこれでイケるぞ! 甘過ぎないオトナの味ってヤツだ! オトナな俺はこの味の良さが解るぜ!
「そう! さすがねっぷ! やっぱ神様は違うわね!」
両手を打ってパッと笑顔華やぐ万希葉。
あぁ、これアレだ。誤魔化してんのバレバレだ。わざとらし過ぎる。万希葉はなんやかんやイイ子ちゃんだからハッタリかまし切れねぇんだよな。
「がーはっはっ! そうだろそうだろそうだろ! 全知全能の神の舌に狂いはないぜ!」
万希葉のヤツ、俺が失敗に気付いたって、気付いてねぇよな。
「ふふっ、そうだね!」
やべっ、やっぱ万希葉も可愛いんだよなぁ。
おっと、見惚れてないで何か言わなきゃな。
「…そうさ! 北大路魯山人もビックリさ!」
「エロいくせに北大路魯山人なんてよく知ってるわね」
北大路魯山人ってのはあの人だ! 確か丸い眼鏡掛けてて、『美味いは甘い』って言った人だ! 万希葉のシャーベットは塩が良い具合に甘さを引き立ててるぞ!
「おいおいおい! エロいのと博学なのは関係ないぞ! それに俺は昔ほどエロくないぞ!」
「スプーン差し出した時、胸覗いてたじゃん」
くっ、バレてたか! バレないようにチラ見したのになんという観察力!
「そうさ! 俺はエロいさ! なんだったら今ハメてやろうか!?」
おっと、ニーソ穿いてる万希葉の太ももを背後から見ながら言ってたら、ムスコが元気になってきたぞ! まったく、キレイで美味しそうな脚してやがるぜ!
「ちょっ!? 開き直ったと思ったらどうしようもない事言い出して!」
「相手を傷付けない事なら思った事を素直に言う。それが俺の生き方さ!」
「あ〜はいはい、そうでちたね〜」
万希葉のヤツ、毎度毎度赤ちゃん言葉使いやがって。
それからキッチンを出て、みんなでシャーベットを分け合ったが、俺が事前にソルティーシャーベットと説明したからみんな違和感なく美味しそうに食べた。
ふぅ、みんなオトナの味が解るヤツで良かったぜ!
ご覧いただき本当にありがとうございます!
修学旅行編はあと数話で終了予定です。北海道ではいくつかイベントを設けた後、続編に引き継ぐ予定です。




