どうすりゃいいんだああああああ!!
なんてこった…。神の歌声があまりにも強大なソウルパワーとなって麗ちゃんに届いてしまったようだ。
麗ちゃんは俺たちに、今日のおかずは卵焼きです。と告げると一人でスタスタと戻ってしまった。
ジト目の勇と気まずそうな広視さん。
あぁ、なんてこった。今度こそ失恋だ…。
考えているうちに甘い匂いが漂うキッチンに着いた。あぁ、きっと麗ちゃんが作ってくれた卵焼きの匂いだ。
それから俺は、無意識のうちに人数分のグラスを運搬したようで、次に意識を取り戻したのはリビングのテーブルに俺の分のグラスをカタンと置いた時だった。
「ねっぷどうしたの? 元気ないよ?」
傍から見ても様子がおかしいのか、万希葉が心配そうに声を掛けてくれた。
「強大な神の力は時に災いをもたらす…」
「はぁ…。解りやすく説明してくれれば相談乗るけど…」
ククク万希葉よ、この程度の日本語が解らんとは勉強不足だな。そうだ、女子は自分がオカズにされると予告されたらどんな気持ちになるか、万希葉に訊けば参考になるかも。
「そうか、じゃあ後で二人で話せる時間作れるか?」
すると、万希葉は斜め下に目を逸らして表情が見えなくなった。なんだ? 俺、何かおかしな事言ったか?
「う、うん。わかった。じゃあ適当にタイミング見計らって、ね?」
「サンキューな」
お? 万希葉と話してたら少し元気出て来たぞ? いま俺、少し笑顔になれた。
「うん。ご飯食べて元気出しなよ?」
ドキッ!
「お、おう。悪いな、気ぃ遣わせちまって」
あれ? なんかヤバイぞ。万希葉への想いは俺の度重なる自爆による大失態で諦めた筈。ましてや今の俺は麗ちゃんが好きなんだ。スカートめくりとか覗きは複数の女子を対象にやっても、恋愛だけは一途ってのが俺のポリシーだ。そうだ、この焦がれる感覚は何かの間違いだ。
「べ、別に? ねっぷが元気ないと調子狂うから…」
恥ずかしそうに頬を赤らめる万希葉。なんだコイツ、普段の当たりが強いからってこんなに照れやがって、なまら可愛いぞ…?
「そうか」
気持ちが整理出来なくて、この場は必要最低限の返事に留めた。
麗ちゃんもこういう素気ない返事をする時ってこんな気持ちなのか?
ああああああ!! やっぱ麗ちゃん好きだああああああ!! でも万希葉への恋も再燃しそうだあああああ!! どうすりゃいいんだああああああ!!
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今回は大変短いお話となりましたが、神威の気持ちが揺れ動くポイントを詰めてみました。はてはて恋の行方はどうなるのやら。
『さつこい!』は両作ともおバカなお話多めですがジャンルは『恋愛』です。
予定では少女漫画のように恋愛に傾注するつもりでしたが、実際のところ想い人が四六時中頭から離れなくても、日常生活や趣味、目標等、他の要素もあると思います。ですので恋愛のみに囚われるのでなく、恋愛意外でも美化や飾り気のないキャラクター本来の持ち味をしっかり活かしてゆきたいと考えました。




