神の血を奪いし者
俺たちは今、江ノ島シーキャンドルの展望台で360度の絶景を堪能している。
南には大海原に浮かぶ伊豆大島、東に三浦半島や房総半島、さっき見下ろしたヨットハーバー、北には藤沢市街、西には真鶴半島や伊豆半島、丹沢山脈や富士山が見える。
しかしあれだ、猫寄せ術は予想以上の効果で猫と戯れる動物好きな俺となる予定が、猫に襲われて失墜するという無惨な結果に終わってしまった。麗ちゃんにはきっとシュールな画として映っただろう。
シーキャンドルを出て、母チャンそっくりな顔した阿吽の象の前を通り過ぎた後、商店買ったサイダーを飲みながら島を散策した。
小魚など磯の生き物と触れ合える岩場では何故か俺だけ海のゴキブリと言われるフナムシに全身を覆われて、万希葉と静香に大爆笑された。
鍾乳洞に入ればたちまちヒルに全身を覆われて神の鮮血をどっぷり吸われたのだが、ななんと、みんなが逃げ出したというのに、麗ちゃんはヒルを取り払って助けてくれた。
あんなナメクジみたいなの触るなんて相当な勇気が必要だろうに、なんて優しいんだ…。
「あ、ありがど…」
やべ、血が足りなくてクラクラする。立ってるのが精一杯だぜ…。
「大丈夫?」
ありがとう…。どうしようもない俺を心配してくれてありがとう…。
「…大丈夫。貧血になっちまっただけさ…」
その後、俺は勇の肩を借りて島の入口まで戻った。
「おう! ねっぷと愉快な仲間たち!」
学校制服を纏ったスポーツ刈りの少年が俺たちに声を掛けてきた。
「おおお!! 師匠!!」
この場所で待ち合わせをしていた師匠と感動の再会! 貧血吹っ飛んだぜ!
ご覧いただき本当にありがとうございます!
今回は今後の展開を早めるために短めのお話となりました。




