ねこまっしぐら!
風来の試練を与えし神に抗い、怒涛の猛進により打ち勝った俺たちは江ノ島の頂上付近、『サムエル・コッキング苑』という南洋植物がニョキニョキ生えてる広場に辿り付いた。この後、『江ノ島シーキャンドル』という白い灯台に上るのだが、その前にやる事がある。
俺はさりげなく集団から離脱して茂みに隠れ、実は成ってないが南国情緒漂うぶっといヤシの木の下で全身に魔法の粉を振り掛けて再び合流した。
「ねっぷ何処行ってたの?」
万希葉が問うた。
「野グソ」
あ、野グソは場所じゃねぇな!
「警察呼ぼうか」
万希葉よ、お巡りさんはピンチの時に呼びましょう。
「冗談だよ! 紳士たる俺がそんな事する訳ないだろ!」
あれ? みんなの視線が湿っぽいぞ? 今回は麗ちゃんまで。
「おいおいおいっ! みんななんだその視線は! メンタルテロか! 俺はテロリスト、じゃなくてモラリストだからガチで迷惑掛けるような事はしねぇぞ!」
やっぱ俺って、下品な事なら何してもおかしくないレッテル貼られてんのか?
「じゃあ何してたの?」
相変わらずじっとりした目で俺を見る牧場、じゃなくて万希葉。多少湿り気があるほうが牧草育つよな! そんな事言ったら火鉢か土鍋投げられそうだから言わねぇけど。
ちなみに『牧場』の発音はトーンが三段階で上がるが、『万希葉』の発音はトーンが下がる。
「魔法の粉を少々」
「ドラッグやってるんだ」
なんでそういう解釈するんだ!? いや、魔法の粉なんて言えばそうなるか。ってか野グソって言うより『トイレ行ってた』って言えば余計な詮索されずに済んだな。
「ねっぷ、そんなに追い詰められてるなら何故俺に相談してくれなかった」
なんか話がヤバイ方向に進んでるぞ! でも勇よ、心配してくれてありがとう!
「大丈夫だ! 決して怪しいブツではない!」
なんだか面倒な事になりそうだ。ここは話を逸らそう。というより本来の目的に移ろう。
「この広場って猫がいっぱい居るよな!」
「はい! 広場だけじゃなくて江ノ島は猫ちゃんいっぱいです!」
実は江ノ島のあちこちに猫が居るという噂を神の力で事前にキャッチした俺は、予めペットショップで木天蓼粉を入手しておいた。さっき振り掛けた粉はそれだ。動物好きな麗ちゃんに、猫が俺に懐いてるのを見せてアピールする作戦だ。
「ってことで、動物と意思疎通できる俺が、今から猫ちゃんたちを呼び寄せようと思いまーす! おーい、そこの可愛い子猫ちゃーん! こっちおいでー!」
俺は近くに居た小さな三毛猫を手招きしながら、自らも相手を脅かさないように少しずつ距離を縮めていった。
「にゃー!」
「ごわあああん!」
「なー!」
すると、何処から沸いて来たのか、あちこちから猫が集まってきた。木天蓼効果絶大だぜ!
「すげぇ、ガチでねっぷにニャンコ集まって来やがった」
「さすがねっぷせんぱい! 神ですね!」
超常たる神の力に驚愕する静香と水菜ちゃん。
「がははっ! そうだろそうだろ! ほらほら来い来いニャンコちゃ〜ん!」
「うぎゃー!!」
「ニャウー!」
「わあん!!」
おおおっ!! 数十頭の猫が俺目掛けて我先にと一気に突進して来たああっ!! 予想外にモテモテだぜ!!
ドスドスドスッ!!
そして俺のカラダへ一斉ダーイブ!!
「うおおおおお!!」
猫の流星群だあああっ!! 比喩じゃなくてガチで猫が俺に降り注いでるぜ!!
「んんんんんん!!」
やべぇ!! なんてこった!! あまりの人気に前が見えねぇどころか全身にモサモサした毛の感触と呼吸困難がっ!! 麗ちゃん見てるかー!! どうだー!! 猫ちゃん可愛いだろー!!
「んんっ!!」
うぎゃあ!! 引っ掻くな!! キ〇タマ顔面に押し付けるなあああっ!!
「あははははっ!! ねっぷ何やってんの!?」
「ギャハハハハッ!! こりゃ傑作だ!!」
「何やってんだか…」
「ねっぷせんぱいモテモテです!」
おいこら万希葉と静香! 笑う場面じゃないぞ!
勇は呆れてやがるし、唯一水菜ちゃんは好感触だ。麗ちゃんは俺の勇姿を見てどう思ってるんだろう。
全身を猫に覆われた俺は、重みと視界遮断により上手くバランスが取れずふらついてきた。
だめだ、後ろから読んでも『だめだ』。もう立ってらんねぇ…。
バサッ!!
「うにゃー!!」
「わななー!!」
「ぎうぎー!!」
とうとう耐え切れなくなった俺がその場に倒れ込んだと同時に猫たちは四方八方へ解散した。
はぁ、助かったぜ…。木天蓼は猫にとってはドラッグだな。
ところで、今回の話は縦と斜めに読むと単語が成立するクロスワードが埋め込まれてるぜ!! さてどーこだ!?
レッツプレイアップ!!
ご覧いただき本当にありがとうございます!
更新遅れまして申し訳ございません。
マタタビを前にした猫ちゃんの狂いっぷりは凄まじいです。




