ラッシュアワー！！
朝７時５０分頃、俺たちは横浜駅の東海道線下りホームから、正面の上りホームで繰り広げられている通勤ラッシュを観察していた。これから湘南へ観光だ。
ホテルの最寄駅である桜木町からだと根岸線でそのまま大船に出るのが近道だが、せっかく首都圏に来たので他の地方とは桁違いのラッシュを見学しようと俺が提案した。
横浜駅の東海道線ホームは同一方向へ向かう列車を２本ずつ停められるようになっていて、上りのラッシュアワーは定員約２２００名の４ドア１５両編成の列車が２〜４分間隔で運転されているため、前の列車のドアが閉まる頃に次の列車が入って来る。
「うおお、人が乗り切れてねぇな。２階建てグリーン車も立ってる人が結構いるぜ」
電車の出入口にある聴覚障がい者用の赤いランプを何度も点滅させながら、ドアはぎこちなく閉まってゆく。そうこうしているうちにも階段からホームへ上がってくる人の流れは止まらない。
「あれじゃ痴漢騒ぎになってもおかしくないわね」
「女は被害受けたら嫌だろうし、男は冤罪被ったらたまらんな」
そうだそうだ。男にだって女を選ぶ権利がある。冤罪被せてくるような女なんか願い下げだぜ！
「なんだぁ勇、痴漢しようとしてんのかぁ？」
「大丈夫だ。間違えても静香に手は出さない」
「なんだとコラ！ Ｆ〇ｃｋ Ｆ〇ーｃｋ！！」
勇と静香は朝から元気だな。俺はストーカーの撃退方法を考えてたら寝不足になってちょっとフラついてるぜ…。
だが結局ションベンをぶっかける以外にコレといった撃退方法は思い付かず、正直いざという時に頭が働かない自分のバカさ加減にムシャクシャして機嫌が悪い。
「まもなく６番線に〜、普通列車、伊東行きが２つドア、短い１２両編成で到着いたしま〜す。軒下『踊り子号』乗車口、４番から１５番でお待ち下さ〜い」
おっと、俺たちが乗る電車が到着するみたいだ。特急用の車両を使った普通列車ってヤツだな！ 俺の分身、『スーパーカムイ』を思い出すぜ！
他の新しい電車が走る中で一際浮いている古い電車に揺られて２０分弱、大船に到着した。下り列車もかなり混んでいて、客室で立ちっぱなしだった。余談だが、車内広告は夜更かしした時に見たアニメと鉄道会社とのコラボ広告で統一されていた。
大船駅構内にはステーションルネッサンスが施されていて、書店やカフェ、スイーツショップ、無印良品や２件の異なる系列の立ち食い蕎麦屋などが立ち並ぶが、まだ朝早いため開いている店は少ない。
ＪＲの改札を出て、駅ビル『ルミネウイング』に沿って歩くと大船〜湘南江の島を結ぶ『湘南モノレール』の駅がある。俺たちはこれに乗って混雑しないうちに江ノ島観光を楽しむ計画だ。同じ島を指す『江の島』と『江ノ島』の表現は会社や個人によって異なるらしいが、後者が一般的だ。
きっぷを買ってホームで待っていると、列車は異様な格好で登場した。同時に、メンバーの一人が蒼褪め始めた。
ご覧いただき本当にありがとうございます！
今回は話の流れを鑑み文字少なめとなりました。
神威たちは江ノ島へ向かいますが、私は先程アニメグッズの物販に参加するため行ってきました。
