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さつこい! 神威編  作者: おじぃ
修学旅行編

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32/69

ぶっかけんぞ!

「お待たせしましたYCATワイキャット行きで~す」


「俺たちが乗るのは横浜駅行きのバスだからこのバスは違うな!」


「これでいいんですよねっぷせんぱい! 『YCAT』は『ヨコハマ・シティ・エア・ターミナル』の略で横浜駅のバスターミナルの名前です!」


「うおっ、さすが水菜ちゃん! 神奈川育ち!」


「いや~、それほどでも~」


 埼玉の国民的5歳児のように照れる水菜ちゃん。これが水菜ちゃんの照れスタイルなのか。


 丘の上を一通り廻った俺たちは、暇潰しのためバスに乗って横浜駅直結のデパ地下へ向かう。さすが横浜! バスはハイブリット式の最新型だ。


 さっそくKitacaをパネルにタッチして運賃決済!


 ビビビッ!


「あれ!? エラー起こしたぞ」


「ねっぷせんぱい! Kitacaは北海道以外のバスでは使えません!」


 ニカッ! と宣言する水菜ちゃん。なんか憎めねぇ。


「マジか! やべえやべえ、両替しなきゃピッタリ払えねぇ! って、両替機ねぇぞ!」


「ちょっとねっぷ何やってんの? 後ろ詰まってるんですけど」


 戸惑う俺に追い討ちをかける万希葉。


 後ろには同行面子全員と他の乗客たちがズラリ。バス停で数分しか待ってないのに人多いな。


「何アイツ、高校生くらいだよね」


「高校生にもなってバスの乗り方も知らないの? ダッセー」


 後ろに並んでる小学校低学年くらいの坊主がうるせぇ。


「るっせーぞガキ共! 顔に小便しょんべんぶっかけんぞ!」


 生意気なガキには制裁が必要だ。俺の聖なる神水を有り難く浴びるが良い!!


「うわキモ」


「迷惑かけて逆ギレしてるし」


「確かにそうだけど言い方ってもんがあんだろ! てめぇら見た感じガリ勉っぽいけど勉強とか仕事が出来るだけじゃ社会に出たら潰されんぞ!」


 うぜぇガキにも教育的指導を施す俺! 神懸かってるぜ!


「多めに入れればお釣り出ます!」


 俺が熱心に指導していると、後ろから水菜ちゃんが有り難いアドバイスをくれた。


「おおっ! さすが横浜! ハイテクだぜ! サンクス水菜ちゃん!」


「ゆあうぇるかむです!」


 アドバイスを受けた俺は、500円硬貨を入れて機械から出てきた釣銭を財布に入れた。


 さてさてそんなこんなでYCATとうちゃーく!! どっちもビルの中にあるからか、札幌駅のバスターミナルと何となく似てるぜ。


 直結する通路は地下街やデパートに続いている。


「このデパ地下ってジェラートが有名だよね~」


「万希葉は他所の土地も詳しいな! いずれ宇宙進出するアタシも見習わなきゃな!」


「私、食べてみたいって、ずっと思ってた」


 おお! 麗ちゃんが自己主張したぞ! ここのジェラートそんな美味いのか!?


「美味しいですよ~ぉ。食べたコトないですけど」


 女性陣が盛り上がっているので、評判というデパ地下にあるジェラートの店に立ち寄った。清楚で控えめで、か弱い麗ちゃんが自己主張するくらいだから、俺も気になる!


 初めての店ではベーシックなメニューをチョイスするのが俺のポリシー。ラーメン屋なら『ラーメン』、牛丼屋なら『牛丼』、アイス屋なら『バニラ』だ。


 みんな迷ってる様子だが、何を選ぶんだろ? 俺の次に麗ちゃんが注文した。


「バニラお願いします」


 うほっ!? うほほほほーいっ!! さすが麗ちゃん、わかってるぜ!! やっぱ基本はバニラだよな!!


「さてさて、溶けちまうからお先にいただきマッスル」


 言って、俺は一口ひとくちベロリンチョした。


「うおっ! コクがあるのにシャリシャリしてスッキリした味わいだぜ」


「どれどれ一口」


「うわっ!?」


 突如、弾力性の何かが俺の右肘に押し付けられた。


 俺がベロリンチョしてる横から不意に万希葉がペロリ。色々ビビるわ…。


「うわ、グルメ番組みたいにワザとらしいこと言ってると思ったらホントに美味しい」


「お、お前は早く自分の買えよ…」


「はいは~い」


 万希葉はつまらなそうにそっぽを向いて現在注文中の勇の後ろに並んだ。


 麗ちゃんとの運命を感じたジェラートだったが、結局みんなバニラを選んだ。


 ◇◇◇


 ジェラート食ったらホテルがある『みなとみらい』にレッツゴー! パシフィコ横浜の近くらしいが、そもそもパシフィコ横浜が何だか知らねぇぜ!


「この電車は、京浜東北根岸けいひんとうほくねぎし線、各駅停車、大船おおふな行きです。次は、桜木町、さくらぎちょう、お出口は、右側です…」


 いま、俺たちは最新型の電車に乗って桜木町へ向かっている途中。


 各ドアの上に16対9の液晶ビジョンが2つずつ、二等辺三角形の真っ黒な吊り革と海っぽい青いバケットシート。


 優先席付近は黄色い吊り革と赤いバケットシートで壁がクリーム色。床の中央1メートルの立席スペースがグレーの縞模様になっている。他の箇所は白い壁と赤茶色の床で、立ち席スペースは茶色い。


 バケットシートというのは、一人ひとりの席がケツにフィットするような形で区切られているシートで、坐り心地が良く、脚を開いて座ったり、隣の席を侵害しにくい構造になっている。


 各ドアの前には黄色い滑り止めマットが貼り付けられている。


「…The next station is Sakuragicho. The doors on the right side will open」


 案内事項が多く、横浜駅を発車してから桜木町駅に到着する直前までの約3分間、二ヵ国語の車内放送が続いた。


 さすが新型車両! バイリンガルだぜ! 首都圏に来て英語の放送がなかったのは、古い電車を使ってるスカイツリーラインと特急『踊り子』に、箱根の温泉へ行く時に乗ったローカル線だけだった。


 いやぁしかし、俺ってつくづく天才だな! 電車なんて北海道のも『スーパーカムイ』以外は全然知らない俺が、こっち来て色々覚えたぜ!


 しかも覚えただけじゃない。なんで新型車両は座席が区切られてたり、吊り革が抗菌仕様だったりドアが片側4つだったりみたいな理由まで覚えたぜ! これならもし万が一、仮に心理学者になれなくてもJRの車両開発部とか営業戦略課あたりからオファーが来るぜ!


「ねっぷ、さっきからニヤニヤしてるけど、電車そんなに楽しいの?」


「ガハハッ! 電車も好奇心を駆り立てるがそっちじゃなくて、俺には将来、JRからオファーが来るってのが分かったんだ!」


 いやはや、俺みたいな天才は引く手数多で困っちまうぜ!


「はははっ! ねっぷがJR!? 有り得ないんですけど! マジで電車に目覚めちゃった!? あっ、JRって、鉄道会社じゃなくて『女子凌辱』の略か」


「なんだと!? それはそれでやってみたいが、革命児たる俺はNASAでも通用するぜ!」


 皆の者、今のうちに『宇宙そらを駆ける少年、神威さま』を崇めるが良い! 大人になったら握手しておけば良かったとか、仲良くしておけば良かったとか後悔する日が来るぜ!


「はいはい。凄いでちゅね~」


 万希葉のヤツ、バカにしやがって。


 ◇◇◇


 ティトーンティトーンティトーン。

 

 チャイムが鳴って頭上の赤いランプを点滅させながら電車のドアが開いた。実は未来の学園とか戦隊が舞台のアニメに登場する『プシューッ!』て音を立てて開くドアより先進のシステムなんだとか。


 え? なんで俺がアニメを語れるかって? そりゃエロ本読んで夜更かししてたら目が冴えて、テレビを点けるとアニメがやってたりするからさ! 中にはエロいアニメもあって、部活が休みの木曜日、学校帰りに見知さんと一緒に大通公園の近くにあるアニメショップへ原作本を買いに行くこともしばしばなのだが、アニメショップには店毎にレベルがあって、異様な雰囲気を放っている連中が多い店は遠慮している。


 電車を降りて改札口を出ると、目の前には超高層ビルが聳え立っている。


「うほーおっ! スカイツリーとか東京タワーもだけど、ランドマークも間近で見ると雲に届きそうなくらい高いな!」


 電波塔みたいに鉄骨剥き出しじゃなくてコンクリートがずっしり構えてるから迫力は一番だな!


 近くには扇形の白いビル、『パシフィコ横浜』や、小さな遊園地と麗ちゃんと一緒に乗りたいやたらデカイ観覧車や船着き場があり、時々汽笛が聞こえる。


 デパ地下でパシフィコ横浜について勇に訊いたところ、国際会議場、展示ホール、ホテルから成る日本最大の複合施設で、世界でも最大級の規模だという。


 ホテルに着いたらメシ食って、後は部屋の風呂に入りながらオナッて寝るだけだ。部屋は今夜も勇と同室。


『ブルルルルーン!! ぶるぶるぶるるーん!! ぶぶっ!! ぐふぇっ!!』


 メシを食って風呂に入ろうとした時、スマートフォンの着うたが鳴った。バイブだと思っただろー? 何処のオッサンが歌ってんだか知んないが、最後に息が続かなくなって咳込む所は特に渋くてハイセンスだぜ。


 先方は我等が新聞部長、見知みしるさんからの着信だ。土産の請求か? 崎陽軒きようけんの『シウマイ』なら買ったぜ!


 そうそう、神奈川では『シュウマイ』を『シウマイ』って呼ぶと水菜ちゃんが言ってた。


 とりあえず、俺は受話をONにした。

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 小便ぶっかけは犯罪ですので遠慮しましょう!


 さてはて遥か北海道から電話してきた見知とのトーク内容とは!?


 次回お楽しみに!

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