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さつこい! 神威編  作者: おじぃ
北海道での日常編
17/69

パーティー組もうぜ!

 ゴールデンウイーク明けの月曜日。満開だった桜が緑色へと徐々に変化してきた。


「え~、修学旅行が近くなってきましたが、それに当たって皆さんには5人の班を作っていただきたいと思います。クラスメートなら誰と組んでも構いません」


 ただいまロングホームルーム中。教壇で安夢(やすむ)先生が生徒に指示した。よっしゃ、これはチャンス。ということで、俺は迷わず目の前の勇と、離れた窓際の席の麗ちゃんを呼び、二人とも承諾してくれたので行動を共にする事となった。


 さて、あと二人はどうすんべ。


「ねっぷ~、アンタ誰と組むか決まった?」


 隣の万希葉(まきば)が話し掛けてきた。万希葉の机の角に静香(しずか)が右手を突っ立てている。何度か紹介したが、コイツ等はいつも俺にケンカを売ってくる軽音部のコンビだが、万希葉とは昨日の夕方に少し仲良くなったようなならなかったような。


「残念ながらあと二人足りないな」


「そう。じゃあ私たちと組まない?」


「は? なんで」


 思ったままを口にした。まさか万希葉のヤツ、俺からカネを巻き上げるつもりじゃないだろうな。


 『まきば』から『まき』上げられる。なんてな!


「なんでって、人数的にちょうどいいじゃない」


「う~ん、そうだな。留萌さん、勇、いいか?」


 ぶっちゃけ男二人仲間に入れて麗ちゃんの魅力に気付かれたりしたら恋のライバル発生だから、万希葉と静香を仲間にするのは俺としては都合が良い。


「俺は特に」


「私もいいよ」


「ならしょうがねぇなぁ。入れてやるか」


 お前ら心の広い新聞部員に感謝しやがれ!


「は!? なによその言い方」


「F〇ck!」


「なんだと!?」


 お前らマンチョーすんぞ! とは麗ちゃんの前なので言えない。


「こらこら三人ともケンカはよせ。どうせ他に組むヤツも居ないだろう?」


 勇が喧嘩を止めに割って入った。


「まぁな」


 確かに勇の言う通りだ。他のクラスメートたちは早々に固まったようだ。


「そうね」


「Shit!」


 勇の意見に素直に納得する万希葉と、叩きつけるような手振りと舌打ちをした静香。


 軽音部で5人編成のバンドを組んでる万希葉や静香と仲の良い連中は別のクラスだからな。そいつらと一緒に旅行出来れば良かったんだろうけど仕方ない。


 さぁ、メンバーも無事に(?)決まったことだし、修学旅行が楽しみだ。


 潮風のビーチに麗ちゃんと二人。(ひるがえ)るスカートからチラッと夢が見える。


 なんてハプニングが起きたりしてな!


 おっといけねぇ、煩悩は恋愛成就を妨げる。


「行くぜ首都圏! タワーだ! ツリーだ! とうっきょー(東京)だあああ!!」


「うるせぇ」

「うるさい」

「Be quiet!」 おおっ!! 麗ちゃんには怒られなかったあああ!!


 でもうるさいとか暑苦しいとか思われてたりして…。


 ◇◇◇


 放課後、明後日から中間試験のため部活は休み。麗ちゃんと一緒に旅行できる喜びと、中間試験の憂いで悶々としながら勇と一緒に大通公園のベンチで焼きトウキビにかぶりついていた。


 大通公園では春から秋にかけて『とうきびワゴン』と呼ばれる屋台が設置されていて、トウキビ、つまりトウモロコシの他に、じゃがバターや飲料なども販売している。


「ひゃほーいっ! 麗ちゃんと旅行だぜ! う~ららちゃんとりょこお、う~ららちゃんとりょこおっ♪」


「残念ながら俺と他二人も一緒だけどな」


「まあまあまあ! そこは二人きりの時間をつくってだな!」


 夜景を見たり、国内のアイスクリーム発祥地、横浜で一本のアイスクリームを二人でぺろぺろとか、勇に大いなる妄想を語ったのだった。いやマジで楽しみだな!


 今日は麗ちゃんも一緒に帰ろうと誘おうとしたのだが、万希葉と静香が旅行の前に親睦を深めたいとか言って(さら)っていった。


 麗ちゃんが二人にイジメられないかと一瞬心配したが、アイツらが俺意外の奴をイジメているのを見た事ないし、そんな悪い奴らではない。


「やあやあ君たち、美味しそうなの食べてるね!」


 俺たちの前に現れたのは、我らが新聞部の(おさ)、見知さん。


「ちわーす!」

「こんにちは~」


「新史さんは一緒じゃないんすか?」


 確か見知さんと新史さんは同じクラスだと聞いたが…。


「あぁ、あのチョコザイはクラスの女どもに勉強教えてとか言い寄られて、教室でニヤニヤしながら取り囲まれていたよ」


 おおっ、さすが新史さんと言いたいところだが、本命の貴女(あなた)にチョコザイとか言われて可哀相です…。


「それより君たち、試験勉強はしてるかい?」


「はい、俺はしてます」


「何!? 勇は勉強してんのか!?」


「ああ」


「ねっぷはしていないのかい?」


 見知さんが左の人差し指を下唇に当てながら座っている俺を見下ろした。


「勉強する意味がわからんとですよ。将来なんの役に立つとですか」


 なぜか九州訛りの神威。


「なるほどね~。でも勉強して知識を蓄えれば博学な麗姫との会話のネタが出来るよね~」


 脱力感のある見知さんの言葉に、俺の中枢がピンときた。


「おおっ! なるほど、勉強する理由ってそういう事だったのか! さすが見知さん!」


「いや~それほどでも~」


 ポリポリと頭を掻く見知さんは動物的にキュートだ。


「よっしゃ! 早速帰って勉強だ! 気合いだ! 勇気だ! べんっきょーだあああ!!」


 焼きトウキビで元気とブドウ糖をチャージした俺は帰宅して、気合いを入れて勉強に励むのだが…。

 ご覧いただき本当にありがとうございます。


 神威たちが東京に発つ日は金環日食です。


 数年後には札幌で見られるようなので、時間とお金があれば見に行きたいです。

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