新入部員ゲットだぜ!
麗ちゃんの勇敢かつ謙虚な説得が功を奏し、勇が新入部員の勧誘を手伝ってくれることになった。まだ勇は到着していない。
「留萌さん、ありがとう! おかげで新聞部は助かりそうだよ」
「ううん、力になれて良かった。それより、長万部くんに何かお礼しないとね」
ドクン!!
やべええええええ!! 麗ちゃん、何気に超ナチュラルな笑顔なんですけど!! 可愛過ぎる!! うおっ!! 心臓発作が…。ヤバイ。生きるんだ、生きるんだ俺ええええええ!!
「そうだな! こんど俺のおごりで何か食わせてやるわ。留萌さんも一緒に行く?」
さすがにそれは無茶か。男二人に女の子は麗ちゃんだけってのはな…。
「あ、うん、じゃあ、二人が良ければ、一緒に行こうかな?」
え?
「えええええええ!? まじで!? いいの!?」
これは夢ですかああああああ!? 麗ちゃんとお食事!? もちろん勇も一緒だけど、それでもE!!
「え!? あ、はい」
ひゃほーい! きたきたきたきたきたきたきたきたきたああああああ!! なんかよくわかんねぇけど勇サイコー!!
◇◇◇
電話を切ってから約20分、勇が来てくれた。さすが親友!
「わざわざ悪いなあ! 心の友よ!」
「全然悪いなんて思ってるように見えないが」
「まあまあ! お礼に何か奢るからさ!」
「ああ。家を買ってくれ。一軒だけでいい。で、俺は何をすればいいんだ?」
「まじで!? 一軒だけでいいのか!? って、残念ながら神たる俺でも今のところ家は無理だ。一軒だけでいいとか言って謙虚さを演出してるつもりだろうけど、流石に騙されないぜ。とりま、俺と一緒に一年生をスカウトしてもらおうと思ってんだけど、いきなりじゃ勝手がわからないだろうから、先ずは俺の手本を見ててくれ!」
俺はさっそく手本を見せるべく、近くを歩いているセミロングでツインテールの女の子に狙いを定め、声を掛けた。
「やあやあそこのお姉さん! 新聞部ですけど、ちょっといいですか?」
「はい? 私ですか? はっ!」
ロリータフェイスなのにEカップくらいありそうな彼女はこちらを見ると、まるで運命の人と出会ったかのように少し口を開き、目を丸くして顔がほんのり紅くなった。俺のイケメンぶりに驚いたのか? しかし残念ながら俺には麗ちゃんというエンジェルが居るんだよ。
「私、新聞部に入ります!」
「まじで!? まだ何もプロモーションしてないけど」
驚いた。まさか声をかけただけで入部希望してくれるとは! 俺は罪な男だぜ。
「んで、そっちのせんぱいの恋人になります!」
そっち? 彼女の視線の先は…。
「え? 俺?」
勇か! ちょっと残念な気持ちもあるがでかしたぞ!
「はい! 一目惚れです! 付き合ってください!」
「いや、ちょっと待って。色々ツッコミ所はあるけど、まず俺は帰宅部で、今は新聞部の勧誘を手伝ってるだけなんだ」
「じゃあ私も新聞部には入らないで、帰宅部に入ります!」
「おーとそれは困る! 新聞部が廃部になっちまうからな! こうなったら勇も新聞部に入部だ!」
「おいおいふざけんな。それはさすがに断る」
「新聞部、廃部の危機なんですか?」
彼女が俺に訊いてきた。
「そうなんだよ。最低でもあと一人、部員が必要なんだ」
「そうなんですかぁ。じゃあ、帰宅部のせんぱいと一緒に入部します!」
「勝手に話を進めるな初対面の一年生」
勇が淡々と言った。この二人、何気に意気投合しそうな気がするのは俺だけか? なんせ勇は人見知りだからな。なのにこの巨乳ロリータちゃん(仮)にはこんなに早く馴染み始めた。
「私、札幌に引っ越してきたばかりで誰も知ってる人がいないんです。だから部活に入って仲間つくって、せんぱいと付き合います!」
そうかぁ、麗ちゃんと同じ境遇なのか。麗ちゃんは旭川から引っ越してきたんだよな。新聞部は和気藹々としてて仲間をつくるには打ってつけだぜ?
「だってさ勇! 一人ぼっちのかわいい後輩を見捨てるのか? 俺はお前がそんなに冷たい奴とは思ってないんだけどな」
「待て待て。仲間ならクラスでもつくれるだろ。それに俺は付き合いを承諾していない」
往生際の悪い(?)勇をどうにか新聞部に入部させるべく、俺は利害関係が一致した巨乳ロリータちゃんとアイコンタクトを取った。奥義『カムイステークホルダー』の発動だ。
巨乳ロリータちゃんは意図を汲み取って頷き、勇を説得し始めた。
奥義『カムイステークホルダー』とは、自己にとってのステークホルダー、つまり利害関係者が存在して初めて発動できる連携タイプの奥義で、特に決まった動作はない。
今回、俺は勇を新聞部に入部させれば廃部は免れる。巨乳ロリータちゃんは勇と一緒に入部すればカップルになれる可能性が高くなる。ということで利害関係が一致したのだ。
是非いつか麗ちゃんとベッドの上で発動させたいものだ。
『麗ちゃん!』
『いや、恥ずかしい』
ってな! うほほほーいっ! 妄想するだけで興奮するぜ!
「せんぱいが新聞部に入らないと、お友達や他の部員の方々が路頭に迷うんですよ? 絆が薄れるかもですよ? 部員同士の恋が実らなくなるかもですよ?」
いいこと言った巨乳ロリータちゃん! 特に最後のは効果バツグンだ! まるで俺と新史さんの気持ちを読み取ったかのようだ!
「はぁ、わかったよ。入ればいいんだろ? 入れば。その代わり幽霊部員になるかもしんないぞ」
俺が麗ちゃんを好いているのを察してか、勇は渋々承諾してくれた。
「ありがとおおおおおお!! さすが勇!! 心の友よ!!」
俺は新学期一発目の雄叫びを上げながら、勇の両手を束ねて握り、上下にシェイクした。
「見知さん!! 新入部員二人ゲットだぜ!!」
「おお、男の子のほうは長万部くんだね」
「えっ、俺のこと知ってるんですか」
「ねっぷから話は聞いてるし、そちらの教室にお邪魔した時にねっぷと話していたのを見てるから、知っているよ。そちらの女の子は一年生だね?」
「はい! 不入斗水菜っていいます! 長万部せんぱいのお嫁さんになります!」
「ひゅーひゅー! 良かったな! 勇!」
「いい加減にしろ。俺は不入斗さんをまだ良く知らん」
「これから知ってください! 二人のフェイト・オブ・デスティニーが長万部せんぱいにも見えてきますよ~お」
頑張れ水菜ちゃん! ついでに来年のバレンタインには勇にチョコをやってくれ!
「二人とも、入部ありがとう! 歓迎するよ! 私は部長の知内見知。長万部くんはご存知の通り、この暑苦しい男は二年生の音威子府神威、通称『ねっぷ』」
「よろしくな!」
俺の挨拶に、勇はイヤな顔をした。
『無理矢理入部させて何がよろしくな! だよ。お前は嫌がる友達をリサイタルに招待するジャイアンか』
って感じの顔だ。
「こちらのキューティー&ビューティーは同じく二年生の留萌麗ちゃん。我が新聞部のアイドルだよ!」
そうさ! 麗ちゃんは新聞部のアイドル! 美人かつ保護欲を掻き立てる可愛さを兼ね備えてるぜ!
「あ、アイドル!? いや、それはともかく、よろしくお願いします」
「んで、あっちで女どもに囲まれてるキザな野郎も新聞部の仲間で、私と同じ三年生の木古内新史っていうんだ。一同よろしくね!」
新史さんは相変わらずモテモテだなぁ! あれじゃ身動き取れないじゃん! それだけに、見知さんに想いが伝わらないのは皮肉だよな。
「不入斗水菜です! みなさん、よろしくお願いします!」
「長万部勇です。よろしくお願いします…」
勇はさっきから入部したくないオーラ丸出しだな。なんか悪い事しちまったわ。マジでお礼を弾まなきゃな。
こうして新たに二人のメンバーを迎え入れた新聞部は、今年度も引き続き活動できる事になったとさ!
めでたしめでたし!
ご覧いただき誠にありがとうございます。
水菜みたいなタイプと勇みたいなタイプの組み合わせは久しぶりに書きました。上手く噛み合うことを願ってます。