表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さつこい! 神威編  作者: おじぃ
北海道での日常編
12/69

カムイネゴシエート

 部員数が四人しか居ない新聞部は、最低あと一人部員を確保しないと廃部になってしまう。廃部を阻止すべく、神威は放課後の校庭で行われている勧誘会で新入生たちを懸命に勧誘しているところだ。


「ねぇねぇお兄さんたち! 新聞部入らない? おやつ出るよ!」


「僕たち軽音部に入るって決めてますので…」


「そうか残念! またね! おーっとそこのお姉さん、新聞部の者なんですけど、ステキなファッションですね!」


「いや、制服だし」


「制服の着こなし方が良いんですよ! 例えばこのニーソ! うちの学校、ワケあってニーソ穿いてる女子が殆どいないんですよ! だからあなたはセンセーショナルなんです!


 僕たち、一年生のファッションとか、趣味とか動向を調査してましてね、ちょっと部室で取材したいな~なんて思ってるんですよ」


 部室で監禁して入部届にサインするまで帰さない作戦だ。


「いや、忙しいので、さようなら」


 くそっ、奥義『カムイネゴシエート』を以ってしても誰一人引っ掛からない! 中学の時以来の使用だから腕が鈍ったか? いや、そもそもナンパ用に編み出した奥義だから上手くいかないのも当然か?


 中学の時、俺はこの『カムイネゴシエート』を使って街行く綺麗なお姉さんたちを手当たり次第ナンパした。そしたら意外とあっさりキャッチできて、その人にラブホに連れてってもらったら股間に予想外のブツが搭載されていて、命からがら逃げ出したんだよな。


『ボク? おネエさんにだって入れるアナはあるのよ? ホラ!』


 ううう、思い出すだけで吐き気がするぜ…。


 あの時、スカートめくりとお尻にタッチが日課だった俺は、好きだった万希葉に嫌われて、潔く恋を諦めてナンパに走ったらああなったんだよな。罰当たりというヤツだろう。


 しかし困ったな。見知さんは麗ちゃんに抱き着いてて羨ましいし、新史さんは女子に囲まれて身動き取れなさそうだし羨ましいし。あの中に新聞部に入ってくれる子が居ればいいけど、多分それは期待できない。


 仕方ない。最終手段だ。俺はスマートフォンを取り出し、『帰宅部』の勇に電話をかけた。


「はいもしもし」


「おう、勇か。早速だけど、新聞部に入ってくれ!」


「やだ」


 そりゃそうだわな。


「じゃあ勧誘すんの手伝ってくれ! 礼は弾むから!」


「もう俺、(うち)なんだけど」


「そこをなんとか! このままだと部員数不足で廃部になっちゃうんだ!」


 勇と電話をしていると、な、なんと麗ちゃんが落ち着かない様子で俺を見ているじゃないか! まさかみんなの前で愛の告白か!?


「勇、ちょっと失礼。切るなよ」


「ああ」


 勇の返事を確認し、俺は親指で通話口を塞いだ。ひゃほーいっ! 告白かどうかはさておき、久しぶりに麗ちゃんと会話だぜ!


「どうした留萌さん?」


「あの、私も何か力になれること、ないかな?」


 うおおおおおお!! 麗ちゃん、俺が懸命に勧誘しているのを見て自分も力になりたいって思ってくれたのか!! 生きてて良かったぁ!! 好きな人が俺を見ててくれたあああ!! しかもジャストタイミングで仕事があるぞ!


「おう! じゃあ早速お仕事をお願いしようかな。この電話に『お願いします』的なことを言ってくれる?」


「え?」


 俺の意図が汲み取れずに困惑する麗ちゃん。可愛いなぁ。鼻の下伸びるぜ。


「まあまあ深く考えずに。言うだけでいいから。俺が懇切丁寧にお願いしてんのに、先方が承諾してくんないんだよ。そこで奥床しい女性の留萌さんからお願いしてくれると廃部を免れるかも」


 勇のヤツ、口では色々言っても本質的にはイイヤツだから、俺の頼みは断っても、引込思案な麗ちゃんが勇気を出してお願いしたら断れないだろう。


「あの…」


 麗ちゃんがか細い声で喋ると、勇が何か言っているのが聞こえる。きっと驚いて『どちらさま?』的な事を言っているのだろう。


「留萌です。お願いします!」


 よし! よく言った麗ちゃん!


「あ、いえ、そんな…」


 麗ちゃんは謙遜してるみたいだけど、勇と何を話してんだ? まさかあの野郎、口説いてんじゃねぇだろうな?


『留萌さんは綺麗だね。キラッ!』


『あ、いえ、そんな…』


 って考えると辻褄が合うよな。


「あ、ありがとう。また後で…?」


 なんだ!? 何があったんだ!?


「勇、なんて言ってた?」


 気が気じゃなくて思わず訊いてしまった。


「うんと、わかったって言ってたよ」


「わかった?」


「音威子府くんは、どんな用件で長万部くんに電話したの?」


「ああ、新入部員の勧誘を手伝ってほしいって」


 あ、そうだった。電話かけてから一分くらいしか経ってないのに用件なんかすっかり忘れてた。勇、オッケーしてくれたんだな。さすが親友!

 ご覧いただき誠にありがとうございます。


 新入部員勧誘のお話は一話完結にしようと思ったのですが、文字数の都合により複数話となりました。ご了承ください。


 予定は未定ですが、次回より女性新キャラクターが登場する予定です! 彼女が今後の展開に一役買う予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ