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さつこい! 神威編  作者: おじぃ
北海道での日常編
11/69

新学期だあああ!!

 4月5日、今日から新学期。神威はやっと麗に会えると胸を躍らせながら登校した。春休みの中盤からは暴れる気力もなくなりノイローゼ状態だったが、昨晩あたりから気力が復活し、元気いっぱいだ。


 神威は登校すると早速、校舎の昇降口前に大きな掲示板を見付けた。


 こ、これは! クラス分け名簿じゃないか!


「しまったあああ!! クラス替えなんてのがあったんだあああ!!」


 新学期早々、周囲の冷たい視線が集まる。


「神威、今年もよろしくな」


「お、おぅ、勇じゃないか、よろしくな」


「どうした? 元気ないな。風邪引いてるのか?」


「いや、クラス替えがあるなんてすっかり忘れてて、エンジェルと別のクラスになってたらと思うと恐怖で、死刑宣告を受けるみたいで、掲示板を見れないんだ」


「そうか。でも安心しろ。そのエンジェルだって同じクラスだ」


「な、なにーっ!! マジで! デジマ!?」


「疑うなら掲示板見てみろ」


 言われて、神威はやや慎重に勇の指差す方を見た。


「ほ、ほんとだ…。よ、良かった…。良かったあああ!!」


 再び周囲の冷たい視線が集まると同時に、すぐ隣で雄叫びを挙げられた勇は、迷惑そうに両人差し指で耳を塞いだ。


 そんなこんながあって二人は2年1組の教室へ入った。


 うおっ! 十日ぶりのエンジェル! 眩しい! 眩し過ぎる! ああ、生きてて良かったぁ! 新学期も読書してる姿が知的で美人で可愛いぜ! 光が窓際席ってところが麗ちゃんの魅力を更に引き立てている! なんてエクセレントな光景だろう。


 神威は入室して真っ先に視界に飛び込んできた麗の姿に大興奮し、心臓を押さえながら、勇と指定された場所へ着席した。席は男女を列で分けた出席番号順で、勇が9番、神威は10番と前後に並び、神威は廊下側の最後列。ちなみに麗は最終の40番で、窓際の最後列。


「うわ、なんかイカ臭い。あぁ、ねっぷのせいだ」


「なんだと!? 新学期早々失礼だぞ!」


 左隣の上幌(かみほろ)万希葉(まきば)がなんとも失礼な事を言いやがった。この女、中学二年からずっと同じクラスなんだよな。一年の時は教壇前の席から俺の雄叫びに色々とケチをつけてきたコンビの片割れだ。


 軽音部でヴォーカルをやっている万希葉は、セミロングの髪とキリッとした顔立ちの美人で、男女問わず支持を得ている。俺は中学一年の頃から、実は万希葉のことが好きで、憧れていた。だから二年の時、同じクラスになった時は嬉しかったが、万希葉は暇さえあればスカートめくりをしている俺を避け、揚句の果てに嫌われてしまい、恋は叶わなかった。その教訓から、麗ちゃんを好きになってからはスカートめくりをやめたのだ。


 白、黒、紅、ピンク、水玉、しましま、クマさん…。万希葉は下着マニアなのか、パンティーのバリエーションは、俺がスカートめくりをしてきた数知れない女子の中で一番多い。


 もう一人、「F〇ck!」とか「I’ll kill you!」なんて言っていたのはギター担当で、岩見沢(いわみざわ)静香(しずか)。静香とは高校に入ってから知り合った。同じクラスだが、席は廊下側から二番目の最前列で少し離れている。まったく何が静香だ、ギタージャンジャン弾いてるくせに。


 そうそう、前にも少し説明したが、俺は福島での夏休み合宿で露天風呂を覗き、万希葉と静香のハダカを拝ませてもらった。万希葉はC、静香はAにも及ばないといったところだが、二人とも綺麗なカラダでした。あの時はありがとう。ま、覗きがバレてボコられたのはお約束だが。


「黙れシコリンピック金メダリスト」


「女子がそういう事を言ってはいけません」


 麗ちゃんに聞こえたら一生台なしになるじゃねぇか。


 シコリンピックとは、俺たちが中学三年生の春、京都への修学旅行中に旅館の一室に男子が集って行われた説明するのが社会的に困難な競技会だ。俺はやっぱり社会的に説明できないルールに則り、それに優勝したのだ。


 万希葉のヤツ、悔しいが十人くらい居た参加者の中に好きな男が居たらしく、そいつを呼び出して告白するために部屋の扉を開けたら、ちょうど競技が終了し、手がべっとりした下半身丸出しの俺たちに遭遇したのだ。それを見たら告白する気が失せたらしく、万希葉が誰を好きだったのかは謎のままだ。


 ◇◇◇


 この日のカリキュラムは担任の自己紹介と事務連絡のみで、すぐ部活の時間がやってきた。今年度の担任も昨年度と同じく、教師二年目の草食系かクリーミー系男子の大楽毛安夢(おたのしけやすむ)となった。


 ホームルームが終わると、麗はいつものように図書室へ本を借りに向かった。神威はそれに同行したい気持ちもあったが、麗がどんな本を読んでいるか他の人に知られたくないという事も有り()ると考えて遠慮した。神威からすれば、例え麗がBLや百合を読んでいようと構わないが、彼女のプライドを(おもんぱか)ったのだ。親しい、または親しくしたい人でも踏み込んではいけない部分がある。おバカな神威でもそこはしっかり押さえているのだ。


 麗が借りに行ったのはヒグマの生態図鑑。特に恥ずかしがるような本ではない。なぜそのような本を借りに行ったかは、『麗編』をご参照いただきたい。


 ◇◇◇


 神威が部室に入った時、新史と見知はクッキーをお供にアールグレイを嗜みながら談笑していた。


「こんちはー!」


「こんにちは」


 今年度も羨ましいくらい甘い笑顔の新史さん。


「やぁねっぷ! 紅茶飲むかい?」


 陽気で知的な見知さん。


「はい! いただきます!」


「おう! いま滝れるから待っておれ?」


 カラカラカラ。


「こんにちは」


 静かに扉が開いてお待ちかねのエンジェル登場!


「おっす留萌さん!」


「こんにちは留萌さん」


「やあ麗ちゃん! いま紅茶滝れるから暫し待っていておくれ」


 挨拶を交わし、留萌さんは一礼して見知さんの隣、俺の正面に着席。見知さんは食器棚からティーカップをもう一つ取り出して二人分のアールグレイを少しずつ交互に注いでゆく。見知さん、何気に紅茶やコーヒーを滝れるのが上手い。


 年度始めでさえ顔を出さない顧問のカップちゃんを除くみんなで美味しい紅茶とクッキーをいただいたところで、見知さんが口を開いた。


「あのさ、お約束なんだけど、部活って部員が五人以上居ないと廃部になっちゃうんだよね。うちの学校、同好会は認められてないし、三年生が引退した下半期はセーフだったんだけど、新年度になったから、新入部員が入らないと…」


「あっ」


「えっ?」


「ええええええ!?」


 新史さん、麗ちゃん、俺の順。


 そういえばそうだった! ヤバイじゃん、現状の四人じゃ廃部じゃん! これじゃ麗ちゃんとの距離も縮まらないどころか開きそうだし、新史さんや見知さんとも触れ合えなくなる! 俺としては新史&見知ペアを是が非でも誕生させたい!


「と、いうことで、入学式が終わったら我が新聞部も新入部員の勧誘を実施しまーす!」


 クラス替えの脅威が去ってまた一難!


 こうなったら全身全霊で新入部員獲得だあああ!!


 よっしゃ、久しぶりにあの奥義の復活だ!


 気合いだ! 勇気だ! こんっじょーだあああ!!

 ご覧いただき誠にありがとうございます。


 新学期突入で、物語は新たな一歩を踏み出しました。いよいよ恋愛モノっぽくなる予定です。

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