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さつこい! 神威編  作者: おじぃ
北海道での日常編
1/69

ケダモノボーイとミステリアスガール

「うほーい! うほほほーい!」


 ひらり!


 奥義『カムイの風!』発動!


「キャー!」


 純白!


「サイテー!」


 ローズピンク!


「キモーい!」


 漆黒!


「やぁやぁ皆さんご機嫌よう! 今日も俺のために色とりどりのパンティーをありがとう!」


「消えろー!」


「失せろー!」


竿(さお)ぶった切るぞー!」


 名も知らぬツンデレ少女たちよ、今日も照れ隠しの怒号をありがとう!


 昼休み、購買部から教室にダッシュで戻る俺は、そのついでに美少女たちのスカートをめくっていた。休み時間のスカートめくりは中学二年生の頃から日課になっている。


 ◇◇◇


 来週はバレンタインデー。それは、製菓会社の販売戦略。でも俺はそんな戦略には引っ掛かんないぜ!! ひーっひっひっ!! どうだ参ったかざまぁみろ!!


 音威子府神威(おといねっぷかむい)、北海道、札幌(さっぽろ)に住む高校一年生、16歳。彼女いない歴イコール年齢。童貞。ぶっちゃけモテない。チョコ貰えない。販売戦略云々以前の問題。今年もチョコなど貰えそうにない。


 苗字と名前の区別がつかない? 音威子府(おといねっぷ)までが苗字、神威(かむい)が名前だ。


 ◇◇◇


「かのじょほしーーーー!!」


 昼休み、ワイワイガヤガヤしていた教室が、俺が叫んだ途端に静まり返った。


 窓際の隅、外は雪。校庭は銀世界。ただいま俺と同じくモテない親友とお食事タイム。今日は焼きそばパンとコロッケパン、飲み物は『い・ろ・は・す ハスカップ』だ。ちなみに北海道限定品。


「ねっぷマジキモいんですけど」


「女なら誰でもいいのかな」


 あちこちで女子が好き放題言ってくれている。俺、注目されてる。悪い意味で。ちなみに『ねっぷ』とは俺のあだ名。


「今は待て、耐えるんだ」


「だって、雪まつり、彼女と一緒に行きたいじゃん! バレンタイン、チョコ貰いたいじゃん!」


 俺たちの地元、札幌(さっぽろ)で毎年2月に催される全国的にも有名な祭典、『さっぽろ雪まつり』は、今年で63回目を迎える。大小様々な雪像を展示したり、その他、スキージャンプ大会や、出店(でみせ)では地元北海道や、他の地方、世界のグルメを味わえる。今年の来場者は200万人を超える見通しだ。


「そういやねっぷはどんな()がタイプなんだ?」


「そりゃ、スポーツやってて、爽やかで元気な娘だな。健康って感じがする」


 女なら誰でもいいって訳じゃないのさ。


「じゃあなんで新聞部なんかやってんだよ」


 そう、俺は新聞部員。学校行事や色んな部活の大会、地元での出来事などを取材して、毎週水曜日に新聞を発行する。


「なんでって、ラクだから。夏は冷房が効いてるし、冬は暖房効いてるし。新聞はデジカメで適当な写真撮って、記事は一面しかないから見出しをドーン! とでっかく書いて、細かい文字は数行。それに、運動部が大会に出るときは、こっそり可愛い女の子の写真をパシャリ!」


「なるほどね。ま、俺は帰宅部だから、そんなささやかな楽しみすらないけど」


 でも新聞部、正直しんどい。なんというか、暗い。部員は数名しか居ないし、タメ(同学年)は同じクラスの地味な女子が一人だけ。黒髪ロングの美人なんだけどね、何を考えてんのかわかんない。ほら、今日も俺の横直線上、一番後ろの真ん中の席で早々に昼食を済ませてどんな内容かわかんないハードカバーの本を読んでる。性格でいえば、大人しくて口数少なく、故に謎だらけ。俺の好みとは程遠く、部室ではいつも気まずくてしょうがない。


 ◇◇◇


 放課後、気まずくてしょうがない部活タイム。今日の出席者は俺と(くだん)の女子、留萌麗(るもいうらら)だけ。


「第63回さっぽろ雪まつりが絶賛開催中!! ということで、一年生のお二人さん、土日に取材をお願いしま~す」


 三十歳、彼氏募集中の顧問が言った。一年生のお二人さんとは、つまり俺と留萌さんの事ですね。


 マジかよ!! 気まずいよ!! 一日どう過ごせっていうのさ!! でも用事ないし、留萌さん一人に押し付けらんないから断れねぇよ!!


「わかりました」


 いつもの事務的な口調で顧問の頼みを(うけたまわ)る留萌さん。


「ありがとう。じゃあよろしくね~」


 ひらひらと手を振って顧問は部室を去った。


 あ~、面倒くせ。二人きりで取材ってのは初めてだからなぁ。今までは先輩たちも同行してたから二人きりはなかったが、皆さん、今週末は用事がある。具体的には雪まつりデート。なので、余った俺たちが取材するしかないという事らしい。


「じゃあ、明日はよろしくな、留萌さん」


「こちらこそ、よろしく」


 そう言う留萌さんの口調は、やっぱり事務的で淡々としていている。


 ……。


 俺と留萌さん、縦長で狭い部室に二人きり。部室に合わせて3メートルくらいのコーティングされた茶色い木の机が三つ並んでいる。その真ん中で対面して座っている二人は、何もせず、ただじっとしている。


 ……。


 会話がない。いつもながら、気まずい。やる事もない。


「帰ろうか?」


「そうね」


 学校を出て駅へ向かい歩き出した二人は、やっぱり会話がない。雪が降り、気まずさも相俟って身体も心も芯まで冷えそう。気を紛らすために当たり障りない話でもするか。


「留萌さんって、どこに住んでるの?」


 四月からずっと一緒なのにそんな事も知らなかったな。


手稲区(ていねく)


 手稲区は札幌駅から電車で北西へ20分くらいの所。札幌市内の区の一つ。


「そうか、俺はこの近くなんだ。だから通学はラクだし、朝はいつもギリギリまで起きられないんだ」


 ちなみに俺は手稲区とは反対、札幌駅から少し南東の苗穂(なえぼ)方面へ徒歩5分くらいの所にあるマンションに住んでいる。


「そうなんだ」


 あぁ!! 反応薄い!! 別にウケる話した訳じゃないけど!! マジで明日ヤバイんじゃねぇの!? これじゃ一日持たないよ!!



 ということで始まりました、「さっぽろ恋ものがたり」改め「さつこい!」。これは2月の雪まつりを見に北海道へ旅行したのをきっかけに生まれた物語です。実は札幌を出てから函館で思いついた話ですが…。今回、「さっぽろ恋ものがたり」のアクセス数が存外に多く、連載用として再編集いたしました。更新ペースは不定期であまり早くありませんが、神威、麗の恋の行方を見守っていただければ幸いです。

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