10 始まりの幸福
夕食後、レオンさんとトーニオさんは2階のサロンで何事かを話し合っているようでした。
男同士の話があるんだろうなあと思い、僕は参加しなかったけれど、しばらくして行ってみると二人は部屋に戻ってしまっていたんです。
話は短時間で終わってしまったようで、少しがっかりしたけれど全然話さないよりはずっと良くて、僕は満ち足りた気分でベッドに入りました。
僕のママが出て行ってしまった日のことを、誰かに話したのは初めてです。
誰かに話せるとは思っていなくて、きっと一生誰にも話せないままだろうと思っていたのに。
話し始めるとすらすら言葉が出て、本当は僕は誰かに話したかったんだなあと、自分のことなのに今更気づくなんて不思議です。
翌日、レオンさんとトーニオさんは顔中を赤や紫や黒の痣だらけにして、それでも楽しそうに笑いながら掃除にとり組み、僕の勉強を見てくれました。
二人の様子にほっと胸を撫で下ろし、嬉しかったけれど、僕自身は元気を失いつつあったんです。
ロザヴェイン姫とレオンさんの結婚について、誰も口にしません。
やっぱり幸福な結婚ではないんです。
凄く気になるけれど、僕から尋ねるのも変だし……。僕が立ち聞きしたことを告白することにもなるし……。
そのうえ明日になれば、パパとディリアさんが帰って来ます。
どんな様子で帰って来るんでしょうか。仲良く帰って来てほしいと願いながら、不安でたまりません。
もしも、もしも喧嘩なんかしていたら――――もしもパパの浮気の虫が騒いでディリアさんと仲違いしていたら――――お屋敷を追い出されるパパに、僕はついて行こうと思いました。
パパを一人には出来ないもの。僕にとって、パパは大切な人なんです。
ママと同じぐらいに――――。僕は、ママに会いに行った時のことを思い出しました。
ジュリエッタさんが家を出て行ってしまった後、パパは他の女の人のところに行ってしまっていたし、僕は寂しくて一人が怖くて不安で、実の母に会いに行ったんです。
ママはベネルチアの西にあるミラネアの富裕な商人と再婚したと聞いていたので、男の子の格好をして長い髪を帽子の中にたくし込み、乗り合い馬車で出かけたんです。
丸一日かかってやっとたどり着き、ママが住んでいるはずの豪華な屋敷をぐるりと回って、勇気を出して呼び鈴を押しました。
扉が開き、ママが立っていたんです。別れてから4年も経っていたけれど、ママを見誤るわけがありません。
「ママ……」
僕は呼びかけたけれど、ママの顔は青ざめていました。
後ろを振り返り、前を用心深く確かめ、僕の顔をじっと見て小声で尋ねるんです。
「ダニエルはどうしたの――死んだの?」
「いいえ! パパは女の人の所に行ってしまって、一人ぼっちが怖くて、ママに会いに来たの」
「ダニエルらしいわね。……家に帰って大人しく待ってなさい。パパはきっと帰ってくるから。ここに来られると困るのよ。今の夫に前の結婚のことは話したけど、子供がいることは言ってないんだから。もう少ししたら何とかなるかもしれないけど、今は駄目なの。いい? すぐに帰って、二度と来ては駄目。わかった?」
そう言って――――出かける直前だったらしく――――手にした豪華なバッグの中から財布を取り出し、
「さあ、これを持って行って。人に見られないうちに早く帰りなさい」
と、ぴしゃりと扉を閉めてしまったんです。
僕はもう一度呼び鈴を押そうとして、中から声が聞こえることに気づきました。
「誰だったんだい?」
「知らない子供よ。家を間違ったみたい」
そんな会話を耳にして、呼び鈴に置いた手がだらりと下がってしまいました。
翌日あきらめきれずに再びママの家を訪れて、塀のひび割れから中をのぞくと、庭にいるママが見えました。
そばで小さなよちよち歩きの男の子が遊んでいて、ママは笑顔で男の子の手を取り、歩く手助けをしていたんです。
もう僕のママじゃないんだ――――そう思いました。
僕はぽろぽろ泣きながら、乗り合い馬車に乗って家に帰りました。
馬車の待合室から重い足取りで家の近くまで来ると、家の周りをおろおろ歩き回っているパパが見えたんです。
「パパ!」
僕は走りました。
「エメル!」
パパは僕に駆け寄り、僕を力一杯抱き締めてくれました。
「心配したぞ。お前に何かあったんじゃないかと、気が気じゃなかったぞ。一人にして、すまなかった。ジュリエッタが家を出たと聞いて、お前が心配で急いで戻ったんだが――本当にすまなかった。もう一人にしないからな。許してくれ」
パパの腕の中が暖かくて、パパの言葉が嬉しくて、僕は涙が枯れ果てるまで泣きじゃくりました。
やっぱり僕は、パパが好きです。でもできることなら、ママが欲しい――――。
ディリアさんが好きだからママになって欲しいけれど、大人の都合は僕の願いと相容れないことが多くて、もしも僕の願いがかなわなかったら……。パパと僕は、このお屋敷から出て行くことになります。
もしもそうなったら……。僕の思いは悪い方にばかり向き、口数も少なくなってしまったんです。
鬱々として眠れない夜を過ごし、とうとう訪れた運命の日。
夏の太陽が傾き夕風が木々を揺らす頃、パパとディリアさんの乗った馬車が到着しました。
僕とレオンさんとトーニオさんは2階のサロンで待っていて、僕は外が賑やかになり僕の心臓が騒がしくなるのを聞いていました。
トーニオさんが窓のそばに立ち、外を眺めています。
さらさらの金髪に陽が当たり、白いシャツと淡い色のズボンとクラバット姿で、白金色の麗しい芸術品のようです。
僕の前にはレオンさんが黒いスーツを着て、黒い美獣が一休みしているような風情で座っています。
僕はこの光景を目に焼き付けておこうと思いました。
パパが部屋に入って来るなり、「荷物をまとめろ、エメル」と言うかもしれないんですから。
「心配するな」
レオンさんが僕の気持ちを察したように、優しく言いました。
「二人は、きっとうまくいってる」
レオンさんの温かい視線が泣きたいくらいに嬉しくて、僕はうなずきました。
「ここから見る限り、仲良さそうだよ」
とトーニオさん。
「本当ですか」
ほっと胸を撫で下ろしていると、足音がしてサロンの扉が開き、パパとディリアさんが入って来たんです。
「やあ、子供たち。ただいま」
美男のパパはディリアさんと手をつなぎ上機嫌で、まずはディリアさんをソファに座らせました。
「みんな、いい子にしてた?」
ディリアさんは満面の笑みで幸せそうで、僕の顔が思わずほころびます。
「はい。別荘はいかがでした?」
「それはもう……ねえ?」
ディリアさんがうっとりとパパを見上げ、
「うーん。別荘なんて、目に入らなかったなあ」
パパはディリアさんの隣に座り、指と指をからめたまま、ディリアさんの青い瞳に見入っていました。
「君しか見ていなかったよ、ハニー」
「ハ、ハニー……?」
トーニオさんの呟きが聞こえます。
「私だって――あなたしか目に入らなかったわ、ダーリン」
花のような笑顔のディリアさんを見つめながら、パパはからめた指を口もとにもって行き、愛しそうにキスをするんです。
レオンさんが酢を飲んだような顔つきで目をそらし、聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で「ダーリンだって?」と言い、
「ちょっと、トイレへ」
と立ち上がりました。
「あ、俺も」
トーニオさんが後に続き、
「早く戻ってらっしゃい。話したいことが、沢山あるんだから」
というディリアさんの声を聞き流して、二人は小走りで部屋を出て行きました。
二人が戻って来るはずはなく、そのことに気づいた時にはすでに手遅れで、逃げ遅れた僕はパパとディリアさんののろけ話を辟易するまで聞かされるはめになりました。
僕がお嫁入り前の娘だということもすっかり忘れられたようで、別荘のベッドは狭かっただの、二人で入れる大型のバスタブを特注しようだのと聞かされ、挙句に実は部屋から一歩も出なかったのだと聞かされて、僕は自分でもわかるくらい真っ赤になり、どうにも居心地が悪くなって立ち上がりました。
「あ、あの……レオンさんとトーニオさんを探して来ます」
「そうだわ。あの二人、何してるのかしら。随分長いトイレじゃない?」
「悪いものでも食べたんじゃないか?」
「とにかく、探して来ます。すぐに戻りますから」
そういい残してサロンを出たけれど、もちろん戻る気はさらさらなく――だってパパとディリアさん、僕がいることすら忘れてるみたいだから。
自分の部屋に戻り、胸を押さえほっと息をつきました。
何とも言えない歓喜がこみ上げてきます。
よかった――――本当によかった。二人が仲良さそうで、幸せそうで。パパとディリアさんの幸せが、僕の幸せにつながるんです。
ソファに座って喜びを噛みしめようとしたけれど、ふと思いました。
レオンさんとトーニオさんを探すと言っておきながら、自室にいたら変です。
カムタンに好物の林檎をあげて幸せのお裾分けをしようと思いつき、キッチンに入ると、コックのハンスさんとアンナさんが話している最中でした。
「納屋がいいですよ」
アンナさんが僕を見て、笑いながらウィンクしました。レオンさんやトーニオさんから、パパとディリアさんの様子を聞いたんでしょうか。
「以前ディリア奥様が納屋に入った時、蛇が出ましてね。以来奥様は、納屋には近づかなくなったんですよ」
「そうなんですか」
いいことを聞きました。
勝手口から外に出ると涼風が西陽を払い、さわさわと葉ずれの音が心地よく聞こえます。
厩舎に入り林檎をカムタンに食べさせた後、納屋に向かったんです。
ゲイルお爺さんが修理した扉を開けると中は薄暗く、壁際に人影が見えます。
「レオンさん! 何してるんですか?」
「お前と同じだよ。避難してるんだ」
レオンさんは笑いながら、膝の上にすり鉢を乗せて何かをすっています。
「それは?」
レオンさんの前に腰をおろし、すり鉢の中をのぞくと、薬草の香りがしました。
「馬の傷薬だ。昔、父から作り方を教わってね」
レオンさんは手馴れた手つきで、薬草をすり潰しています。
「レオンさんのお父様、お医者様でしたね。フィアの卒業試験に合格したら、レオンさんは医科大学に進まれるんですか?」
「どうするかな。まだ決めてないんだ。リーデンベルク家の次男は軍人になることになっているが、母上は好きな道に進んでいいと言ってくれるしね。……お前は将来、どうするんだ?」
「高等学校を卒業して、就職するつもりだったんですけど。ディリ……いえ、お母様と相談しないと……」
お母様――――。その言葉の響きは穏やかで優しく、僕の胸に沁み渡っていきます。
「良かったな。ほっとしただろ」
気づかないうちににんまりしていたらしい僕の顔を見て、レオンさんが言いました。
「はい」
僕は晴々とした気分で笑いました。レオンさんの綺麗な顔に浮かんだ、澄んだ青空のような微笑。僕を包み込むような黒く甘い瞳。
レオンさんを独占できる女性がいると思うと、羨ましくなります。
「どうした? まだ気になることがあるのか?」
突然暗くなったらしい僕の顔に気づいたように、レオンさんの低い声が降ってきました。
僕は勇気を振り絞り、お祝いを言おうと思ったんです。泣いてしまうかもしれないけれど、泣いたらレオンさんの幸せに水を差すことになると自分を戒めて。
「ごめんなさい、レオンさんとトーニオさんが話しているのを聞いてしまったんです。レオンさんがロザヴェイン姫と婚約するって……。すみませんでした。立ち聞きするつもりはなかったんですけど……」
僕は、まず謝りました。
「それから、おめでとうございます。その話が全然出ないから秘密結婚かなって思ったんですけど、そうなんですか? 僕に出来ることがあれば、何でも言ってください。僕、レオンさんの味方ですよ。ディリアお母様が反対なさってるんですか? 僕からも説得してみましょうか? もしもお相手の家族が反対してるなら、僕に出来ることはありませんか?」
真剣な気持ちで話す僕をじっと見ながら、レオンさんの表情が何とも言えないものに変わっていきます。
うなだれて長い睫毛を伏せ、ゆっくり視線を上げて、僕を見つめました。
「少々、傷ついたよ。俺が他の女性と婚約すると聞いても、お前は何とも思わないんだな。それどころか祝ってくれるのか……」
レオンさんのがっかりしたような声色に、僕はわけが分からなくなりました。
「でも、レオンさん。婚約するということは、そのお相手のロザヴェイン姫を愛してるっていうことでしょう? 僕が何かを思う余地なんか、ないような……」
「ロザヴェインは、クラレストから馬車で三日ほど走った所にあるリーデンベルク家の地所だ。『姫君の地所』とも呼ばれていて、もともとディリア母上の母上が嫁入りした際の持参金だったんだ。祖母からディリア母上に贈られ、今回お前に贈られた。それほど広くはないが、美しいところだよ」
「僕に贈られた……?」
レオンさんは、苦笑しました。
「パパから何も聞いてないんだな。結婚の際、ダニエル卿には称号が、お前には持参金となる領地が贈られた。ロザヴェインは、お前の持参金だ。ロザヴェインを所有する女の子だから、お前は『ロザヴェイン姫』なんだよ」
「と言うことは……レオンさんの婚約相手は……」
「お前がこの屋敷に残れる方法を考えると約束しただろ? パパがこの家を出ることになったらお前と相談して、場合によっては無理やりにでも、俺たちの結婚申請書を王立裁判所に提出するつもりだった。結婚予定日を四年後ぐらいにしておけば、お前は俺の婚約者としてこの屋敷に住むことが出来る。母上が反対するようなら、全力で説得するつもりだった。……そんな事をする必要はなくなってしまったけどね、少し残念だけど」
僕はしばらくの間、言葉が出ませんでした。レオンさんが僕と結婚するつもりだった……。そこまでしてくれるつもりだった……。
「レオンさん。そこまで考えてくださって……ありがとうございます」
でもそのせいでレオンさんの人生が不幸なものになってしまったら、どうすればいいんでしょうか。僕のせいでレオンさんが不幸になったら……。
「どういたしまして。……喜んでしたことなんだが」
レオンさんは優しい表情で、僕を見つめています。
僕の頭の中は霞がかかったようにぼんやりとして、ただレオンさんの言葉が目まぐるしく繰り返されていました。
婚約――――喜んでしたこと。喜んで――婚約。
「レオンさん……」
言いかけた時、納屋の扉が大きな音を立てて開き、トーニオさんが飛び込んで来て、ばたんと扉を閉めたんです。
「何やってるんだ?」
トーニオさんの質問に、レオンさんは小さく悪態をつきました。
「トーニオ。お前こそ何しに来たんだ」
「ひどい言い方だな。せっかく母上がこっちに向かってるって、知らせに来てやったのに」
トーニオさんはやや息を切らせ、僕とレオンさんの前に立っています。
「裸足でか?」
レオンさんは、トーニオさんの足に目をやりました。
「母上が俺の部屋をノックしたから、窓から逃げたんだ」
「つまり、母上をここに誘導して来たというわけか」
トーニオさんは、にやりとしました。
「そういう見方もできるな」
「ふざけるなよ」
「ふざけてるのは、そっちだろう。俺の彼女になれなれしくするなよ」
トーニオさんはそう言って僕の隣に座り、蕩けるような目で僕を見つめるんです。
「彼女?!」
いつ僕がトーニオさんの彼女になったんでしょうか。
『メイドくん』から『俺の彼女』に変わったみたいだけど、喜ぶべきなのか怖れおののくべきなのか、僕には判断できません。
トーニオさんはにっこり微笑んで、僕の耳を引っ張りました。
「耳の次は、どこにしよう。指を一本一本っていうのは、どう? それともいきなり、行っちゃう?」
行くって、どこへ? ……や、やっぱり、怖れおののいた方がいいような。
「エメルは妹だと、話し合って決めただろう」
レオンさんは嘆息まじりに言い、鋭い横目をトーニオさんに走らせています。
「ああ、そうだった。決めたんだったね。そうそう。でもねえ、レオンちゃん。ルールっていうのは、その時々で改正されるからね」
「改悪だろう……」とレオンさんが呟き、レオンさんの声に重なるように微かに女性の声が聞こえました。
風に乗って歌うような声で、僕たちの名を呼んでいます。
レオンさんは慌ててすり鉢を横に置き、壁際まで下がりました。僕も急いでレオンさんの隣で小さくなり、トーニオさんが僕の隣に飛び込みます。
「トーニオー、レオーン、エメルちゃーん」
ディリアさんの声が、屋敷の勝手口の方から聞こえて来ます。
「この年になって、かくれんぼをするとは思わなかったな」
とトーニオさん。
「ダーリンとハニーは勘弁してほしいよ」
レオンさんの呟きにトーニオさんが吹き出し、僕は両手で口を押さえてくすくす笑いました。
「本当だよねえ。大体さ、母親のノロケ話を息子が喜んで聞くと思ってるのかなあ」
レオンさんとトーニオさんは声を出さずにおなかを抱え、目を見合わせて笑っています。
二人に挟まれて、僕は幸せな気分でした。
遠い昔、庭に隠れた僕をパパとママが探しに来た時のことを思い出しました。
あの時はくすくす笑って、ママに見つかってしまったけれど。
昔のことを思い出しても、少しも悲しい気持ちになりませんでした。
今が幸せだから――――。大好きなトーニオさんと、大切なレオンさんがそばにいるから――――。
「トーニオー、レオーン、エメルちゃーん、美味しいお菓子があるのよ。一緒に食べましょう」
「子供じゃあるまいし」
トーニオさんが言い、レオンさんが吹き出しました。
「お菓子より、エメルのアップルケーキの方がいいな」
「賛成、賛成。あれは最高だった。また食べたいよー」
「近いうちに作ります。心をこめて」
僕は、うきうきしながら答えたんです。美味しいと言ってもらえたら、毎日でも作ろうという気になります。
僕のくすくす笑いはいよいよ止まらなくなり、ディリアさんの足音が納屋の前で止まってもくすくす笑いっぱなしで、笑いはレオンさんとトーニオさんにも伝染したようで、二人は肩を震わせ、堪えきれずに堰を切ったように笑い転げました。
「もう駄目だ」
「あきらめよう。見つかってしまってるよ」
トーニオさんが笑いながら立ち上がって納屋の扉を開け、僕たちは外に出ました。
ディリアさんが笑顔で立っていて、向こうからパパが歩み寄って来て、僕の両側にはレオンさんとトーニオさんがいます。
僕は、新しい家族を見上げました。
幸福感で一杯になって涙ぐみそうになったけれど、泣き虫と弱虫は卒業するんだって決めたから、ぐっと我慢しました。
夕暮れに近づきながら夏の空は抜けるように青く、果てしない高みまでつづいているかのようでした。
これからはきっといい事がある。きっといい事が続く。心の底からそう思えました。
僕の心は夢見る思いと憧憬に彩られ、豊かな未来へと飛んで行くのでした。
完
お楽しみ頂けましたでしょうか。
家族ができたエメル。この後、王立ギムナジウムに入学し友人と出会い、少しずつ恋をはぐくみながら事件に巻き込まれます。
引き続き、「アップルケーキに愛をこめて2 ~ギムナジウム入学篇~」を楽しんで頂けましたら嬉しいです。 (作者)