ちきんにきょうみねぇ
はい、意味不だけど。自己マンってことで
さっき、誰かから中傷された気がするんだが……気のせいか?
気のせいです。
そうなんですか?
そうです、気のせいです。
英語で言うと?
Wood Spirit。
なにそれ、知らないし。つか、なにその直訳。きもいし、意味わからん。死んだほうがいいよ?
……はい、すみませんですした、調子のりすぎました。ごめんなさい。
わかればよろしい。全然問題ない。
さぁ、本題に戻りましょう。戻りましょう。
OK。
***
ふぅ、ようやく撒いた、別に忘れてるわけじゃないんだよな実は。ただ、あいつに似てる気がしたから……いつもあぁ弄ってるんだやって。あいつを思い出せるから、昔の記憶が薄れないように。
俺は、ポータルの光に手をかざした。そうして、いつも通りに右手を後頭部に回して、
「じゃぁ、いってくるわぁ、ツナ」
「さっきも言ったよ。」
人差し指と中指ををピッと上に向けた。
ポータルの光が緋炉の体を包み、やがて緋炉の前身は光の中に消えていった。
ブゥン
***
『俺は悲しみの中に生きてるんだ、何もかも失って、スベテを壊されたんだ。未来も、今も、過去も…』
ふと、緋炉の脳内流れた一つの記憶、もう、誰が言った言葉か、誰に言った言葉忘れてしまった。まぁ、思い出す理由もないのだろうかもしれないのけども。
「えーと、どこだっけワールド4の病院か、てか、ポータルの転送なんだから、目の前のこれか。」
緋炉は一人虚しく自分自身と会話をしながら装備を確認し始めた。
「今回の、クエストの支給品は……ダラダラダ~(ドラムロールのつもり)」
目の前に現れたアタッシュケースに手を伸ばす。サイドにつけられた、ロックを外して、ガタン、大きな音ともに…
「ててててーん」
すっからかんだった。
「は?」
緋炉は隅々をくまなく目を配った。どこか隠しボタンでもないのかとアタッシュケースをたたきまくった。けれども、そんな努力もむなしく結局は何もなかった。
「…あんのくそアマ……なめてんのかよ!!」
せっかく人がいいこと思ってたのに!ふざけやがって!と、怒鳴り散らし、地団駄を踏みに踏みまくった後、アタッシュケースを病院の扉に向かってブン投げた。
ボガン!!!!!!!!
アタッシュケースは派手に爆発した、あの小さなアタッシュケースに何が入っていたんだろう。仮にもしもあれを所持したまま転んだらと思うと……緋炉は大げさにブルブルと震えた。
そう、大げさにだ。
ハンターたちが着ているこの黒いスーツは、味方からの攻撃を受け付けないようにできている。
素材は不明。どうやって作られたかはハンターたちは知らない。
これに感謝するようなそぶりをして緋炉は、病院の中に足を踏み入れ行った。
***
『ワールド4 廃病院 』
「なんだよ、そこらじゅう吹き飛んじまって、穴だれけじゃねぇか。かぁっ!ここで何やったんだよ?銃撃?爆撃?戦争でもやってたのか!?」
緋炉はいつものように、虚空へ怒鳴り散らす。まったく、子供のようだ。
ゲンガーの気配はいまだ感じない。
緋炉は徘徊という名の捜索を続ける。
目の前に広がるのは、穴だらけになった壁。銃弾、爆撃でもされたかのような跡がある。
足元のタイル張りの床は埃の海になっていた。そのために足音は響かない。
床を見つめていた緋炉だったが、天井を見上げて少しおかしなところがあるのに気付いた。
天井に、明かりは灯っていないのに、光がさしているように妙に中は明るいことに気付いたのだ。
「……。」
緋炉は耳を澄ましてみる。しかし、やはり床の埃のせいもあってか、まったく音をつかめない。
「…おいおい、これ結構―――」
ガン!!!
意の外側からの不意打ち。緋炉は何の行動にも移れず、何者かからの攻撃をストレートに受けてしまう。
「うがっ…」
辛うじて、受け身だけはとれた。
しかし、鈍い痛みが体中を駆け巡った。
「……くっ、効いたぜ!こいつわよぉ!!」
緋炉は怒鳴った。
体制を立て直し、あたりを見渡す。
「…!?」
何もいない。
きょろきょろ、あたりを見渡す。しかし、やはり何もいない。
「くそ、こんな奴初めてだ……。姿が見えない…背景系か?」
ガン!
再び緋炉の体に衝撃が走った。
勢いよく吹き飛び、壁に激突した。
緋炉は、よろけつつも、体制を立て直す。後頭部が濡れていた。どうやら、頭を切ったらしい、すでに、額は鮮血に染まっていた。
それを右手で拭うと、左腿のホルスターに手を伸ばした。
「……いい度胸だな。不意打ちばっかなのはチキンの証拠だけどな!!」
ホルスターから拳銃を抜いた。
緋炉のはなった怒声は、薄暗い病院内を掻ける。
「ギギ……ギギギ!」
突然、目の前にゲンガーが現れた。
こちらに飛び掛からんばかりの大勢だ。
兎のような顔、脚。けれども、大きさは人間のそれとなんら変わらない。
「やっと、出てきたな!こいつは不意打ち一発目の分だ!」
ジャキ!
緋炉は、化け物に照準をあわせる。
だが、それは、すー、と薄闇に溶けてしまった。
「とことんチキン…だな。ったく」
はぁ、とため息を吐くと、緋炉はその場に座り込んだ。
『ナンダァコイツ?ナメンテンノカァ?ギギ、ギギ』
『ギギ……ハハ、ヤッチャロヤッチャロ』
そして、大きく酸素を肺へ循環させ、ゆっくりと目をつむった。
ねみぃ