始まり
俺はいつの間にか気を失っていたようだ。起きるとそこには、アノ化け物は居ない。
いつもの教室…いや、まだおかしかった。頭上の時計を見上げると、教室に入った時から一ミリたりとも長い針は進んでいなかった。…どーゆーこーとー?夢?ナイナイ。心配だったから一様耳を引っ張ってみた。……うん、当たり前に痛い、つか強く引っ張り過ぎた。
「おい、」
何処からともなく声がまた聞こえた、しかしそれは先ほどの怪物の声のものではなかった。ちゃんと人間のそれだった。その声は耳のすぐ横で聞こえた。
「なぁ、おいってばいつまでアホ面書いてんだテメェ、いい加減見あきたよ。さっきの変なのもういないからサッサと起きろよ。うぜぇ…」
第一声がこれ。(↑)俺の第一印象がこれ。(↓)
(……何でキレてんのこの人、俺なんかしてる?つか、アホ面って何だよ……。至って真面目だよ、状況についていけちゃって冷静な顔してる奴の方がおかしいよ…つかあんなもんみて驚かないって何なんだよ……。なんなんだよ。)←脳内愚痴り。あ、因みにおれ愚痴り症あります。
「…へ?」
1テンポと言わず、2~4テンポ位経ってからやっと返した言葉がこれだよ。(↑)
「……。」
無言、しばし無言。て言うか無音。
静まり返った教室に(元から)止まった時計、耳元の声。先ほどのバケモノ。かみ合わない話しと急展開ならぬ超展開。ついていけません。助けてください英語で言うとへるぷみー。
「おまえの記憶を消す。だからこっち向け」
こっちってどっちよ…明らかに耳元から声してんだけど。ねぇ近いってば、ねぇってば!いきなり記憶消すとかってさぁ…メイエン○ラックじゃあるまいしさ。
と、刹那(なんかとりあえず入れておくとカッコよく見える、聞こえる単語。意味はセツナだよ。)俺の目に手が覆いかぶさった。皮のグローブでも嵌めているのだろうか、しっとりとした感触が顔面を包んだ。
「良いからこっちに向け!」
首を無理やりに動かされ、当然痛がる俺。しかしその痛みも軽く吹っ飛ぶくらいに俺は仰天した。
俺の目の前に、俺が居た。うんそれは鏡に合わせたような俺だった、髪型を除いて。
「ん?なんだテメェ俺の顔になんかくついってか?まじまじみてんじゃねぇよ、とっちまうぞごらぁ!?あぁあん!?」
…済みません(←意味も無く謝る)
呆然、唖然、どちらにもあてはなるような現状の俺。(要するについていけてない。
なんで怒ってるか、理由を一行でいいから言ってほしい。
「あの、済みませんが今の状況を説明していただけませんか?………さっき変なバケモノが居て…」
「それは後回しだ、先ずはお前の記憶を…あ、それじゃだめじゃん。二度手間じゃん。なんで記憶消したのに話すんだよ(笑)」
急に笑い始めてもこっちは受け答えに困るっす。つか、マジ似てる。俺と。何双子?……俺兄弟居ないわw(妹は居る。
「………」
返す言葉を見つけられなかったので無言。てか、返しても怒鳴られそうな気がした。
「…………」
お前も、無言かよ。
「え、と、だな。さっきのバケモノは見なかったことにしろ。OK?」
いや、知りたいからきいたんだけど…。
怒鳴られそうな予感が消えないが、言われてばかりじゃ男がすたるので俺は反論(?)することを決意。現在の日本男児諸君。草食、草食、って逃げてばかりじゃいけませんよ。(関係ない。)
「あの、良いから説明してください。後々記憶消すんだったら今言ったって何も変わらないでしょう?ほら早く言っちゃってください。」
若干引け腰。敬語と言うか丁寧語。実はこれでも番格張ってるんです。(勘違いで。
「ん?あぁ…へぇ。」
うっぜー!?なんだコイツ?折角人が考えたのに…上の空かよ。
と、心の中で井戸に叫びつつ
「上の空ですか?」
つい、口が滑ってあら、本音が転がった。良いもん、たまに無謀なくらいが男だもん。
「……ふぅ。いいだろう。話してやる。その代わりお前はブレイカーズになってもらう。」
…もう、驚くことを止めました。(これが人生での一番のミステイク)
「ブレイカーズってなんだ?バンドか?」
「……ブレイカーズ。それはさっきの化け物どものの退治屋だ。いわば…退治屋だ!」
ひねれなかったんか!考えろよ!頑張れよ!できるよ!やれよ!
「はぁ…」
「因みにここはもう終わった場所だ。もうここはワールドに存在していない。」
「はぁ…?」
「つまりはだ。ここ。この場所は無くなってしまった。この世界から、存在が、記憶が無くなってしまっている。さっきのバケモノはドッペルゲンガーと呼ばれている。記憶を消すということは、ここの場所を今知ってしまっている矛盾から取り外すため、世界に害を及ぼさないために。」
「はぁ…やっぱついていけないよ。急過ぎるよドッペルゲンガーって言うのがさっきのバケモノってことは解った。…それで?ここの場所が無くなっているってどういうことなんだよ?存在してないってどういうことなんだよ!?」
ついていけなくなった、突き放された。先ほどのことまでは良いとしよう。
意味が解らない。この場所は無くなった?(二回目、大事なんで)はぁ?
「ここは勝手ながら戦場になったんだ。俺らだって好きでここを消失した訳じゃない。…あぁ説明メンドクサイ。こういうのが居るから嫌なんだよな…」
俺は考えるのを止めた。身投げした瞬間ってこうなるのかな。
「お前はもう、元の世界にはいない。その世界が無いからな。ドッペルゲンガーはバケモノじゃない。もう一つの世界に存在しているソイツ自身だ。そして空間そのものももう一つある。世界の浸食。」
「……」
「理解できてないのは解ってる。…時計が止まってるのが解るだろ?この場所の崩壊を意味している。ここはもう戦場だ。よかったな、幸いにもそれが及んでるのはこの校舎内だけだ。」
話している間に気づかなかったが、ソイツは俺の目の前に居なかった。何故気づけなかったは解らない。もう嫌だ。
ついさっきまで、俺は学生だった。
「うそだぁ…」
「残念、事実ですー。良いか?まださっきの奴は生きてる。この校舎に居る教員は捕食されている可能性がある。お前は気づかれないような場所で―――」
言い終わる前に廊下側の方から爆音が鳴り響いた。壁が重力を無視して浮いている。
そいつが現れた。
「ミエ…ミ……ミエル?」
アイツが叫んだ。爆音とほぼ同時に俺はよくそれを聞き取れなかった。けれども本能と似たようなものに支配されて、俺は全速力で駆けていく。……バケモノの身体が紅くなっていることは見えなかったことにした。
俺は走り続けた。