プロローグ
目の前に広がる光景。
そこには見たことのない異形な怪物(?)どもが蠢いていた。
非日常な光景。
目を塞ぎたくなるような惨劇。
飛び散る、鮮血。臓器。
それを際立たせる悲鳴。――断末魔。
ここは何処だ。理解できない。
今のこの現状はなんだ。理解できない。
パニック
パニック
ガタガタ震える足、手、肩。眼球。そして、心臓
(落ち着け……落ち着くんだ。これは夢だ。これは夢なんだ。)
必死に自分を保とうとした。
しかし、その願いは虚しく、落ち着くどころかさらに心拍数は上昇していく。
バックン、バックン………
今俺は、走っている。必死に走っている。聞こえてくる悲鳴。それから逃げるように走った。
視界が映しているのは、異形な怪物。
灰色の空。大地。海。
色の褪せた世界。
ここは「内なる世界」と呼ばれる場所。
異形なる怪物たちが住む世界。
俺の名前は神薙 緋炉ひょんなことからインサイドに飛ばされた。今から前日談(?)を話すから。
―――インサイドに飛ばされる2日前。
俺はK高校に通う、至ってフツーの高校生だった。いつも通りの時間に起床して、いつも通り登校して、いつも通りな、アイツ(お友達)らと戯れて、いつも通りの授業受けていた。(いつも通りじゃ何も勉強でけへんよ?w)そんな日常。
ありきたりな会話。止むことを知らない周囲の喧騒。飽き飽きとした平凡。―――現実的な日常。
俺はその日の朝もいつも通りの時間、7時に起床した。(アラームとか無しだぜ?凄いだろ?)いつも通りキッチンに足を運んで、父さんと母さんに「おはよう」っていった。
なんか、細かく言ってるけど…今はひどく懐かしいんだ。
そのあとはいつも通りのやつらと学校に登校した。ガヤガヤと他愛もない会話、朝だって言うのに。迷惑なこった。
会話の内容は、先日にやっていたアイドルの特集。生憎だがな俺は、アイドルとか興味なかったんだ。大人数でいるのが嫌いだし。しかもそれがワッサワッサ動いてるなんて……想像しただけでへどが出そうだ。
「なぁ…悪いんだけど俺アイドル嫌いじゃん?」
はい、考えようと思ったけど、こういうのって空気をぶち壊すのが一番じゃん?みんなわるいけど壊すね♪
「ワッサワッサ動いて気持ち悪いし、別にみんなかわいくないじゃん。」
本音ってさ吐いたら吐いた分だけすっきりするよね?(笑)ハイ一同黙れぇ。
「「………」」
黙らすことを成功した俺は、一つの提案を出す。
「つーことで、今から学校までダッシュ!びりは今日のお昼おごりな!!!」
と、叫んで、俺は一目散に猛ダッシュ!
「「っちょ!ヒイロずるいぞ!?」」
みんなが遅れてから走り始める(みんなって言っても、俺を含め三人だけどな)
「びりはおっごり~♪」
ちなみに俺の、脚力はクラスで一番だ。
「ヒイロに追いつくとか…無理だろ……!!?」
一同(二人ここ、大事。)
「「ヒイロ、まてぇええええ!!!!!」」
馬鹿どもが俺を追いかけている(二人ね。)
すこし息を切らしながら校舎に飛び込んだ。8時。まだ日直の先生たちも外に出ていない。俺はこの時間が好きなんだ。大きく息を吸って、酸素共を吸入する。スーッと鼻の奥が冷たくなる感覚。肺が満たされていく。酸素の吸いこみすぎで頭が少しくらっとした。アイツラはまだ来ない。
俺はだんだんジンジンしてきた足をさすりながら上履きに履き替えた。
階段を駆け上がると……誰もいなかった。そのまま俺は教室へ直行した。
誰もいない、教室。
俺はいつも通り教卓に突っ伏した。
ガコン。
今思えば、いつも通りの生活をしていたことを後悔した。まぁ、進行進行。
「…………ん?アイツラもう来たのか?今日は早いな。」
しかし、周りを見渡してもそこには何者の姿もなかった。
「……てか、教室に入った時の音がガコンてw」
深くは考えないで、目を閉じようとした。
―――ミエル?ミエル?――――ミエル?――――
明らかに声がした。みえるって。声がした。
そういえば、つい最近話題になっていた。【SEE】(見る)という化け物が居るとか居ないとか。
そういえば夏場だっていうのにひんやりしてたなこの学校。教室。廊下。階段。
ミエル?ミエル?ミエル?
………何この超展開。ついていけません。
俺は閉じようとしていた目を無理やりにかっ開いた、というか、そうせざるを得なかった。本能的にってやつ?…いや本能だったら逃げただろうに…。
「ミ…ミエ…ミエル?…ミエルッ!?」
俺の眼前40センチほど前に(PCから目を離す距離)口が裂けたように笑った怪物が居た。
俺は、体を動かせようとした。けれども体中の筋肉が引き攣ったように動かなかった。
眼前の化け物は依然として「ミエル?ミエル?」と聞いている。噂では…確か返答してはいけない。はず。「返答しなければ大丈夫…返答しなければOKOK。」心で念じ続けた。
化け物は、目なのか何なのかわからないものをこちらに向けていた。多分眼孔だ。眼孔の中にうっすらと青い光が見える。その青い光に俺の姿が映し出されていた。まるで人の眼球のようだ。それに俺は見とれてつい声を漏らしてまう。
「……あ、」
とっさに口をふさいだが遅い。手遅れだった。
「ミエタ!!」
そいつは口をかっ開いて高らかにそう、叫んだ。
その音は、俺の現実の終わりを意味していた。