あきらの反省会
「ゆたか君、あきら君の前から退きたまえ。これでは話もままならないだろう」
「ですが、先生……」
言いよどむゆたかは首を後ろに、俺へと向けてくる。
そこに見える瞳には、俺を心配する色があった。
「ゆたか君はあきら君に改善してほしいとは思わないのかね? 君も被害を受けたのだろう」
「被害……?」
疑問の声をあげたのは俺。
俺がゆたかに何かしたのか……?
それに応えたのは誰の言葉でもなく、ゆたかの表情。
菊地原先生に言い当てられたように目を見開いたゆたかは、僅かに唇を噛み締める。
さらに俺から視線をそらしたのだから、答えは明白だった。
「……いいよ、ゆたか。俺をかばってくれなくて」
「あ、あきら……?」
腰掛けていたベッドから立ち上がる。
戸惑ったようなゆたかに、俺は首を横に振った。
「ちゃんと聞きたい。もしゆたかに何かしたなら、俺はゆたかにかばってもらえないからね」
ゆたかは体ごと俺に向けてくる。
眉尻の下げられた顔は、怒られた子犬を彷彿とさせた。
「べ、別にあきらは何もしていないさ。私は被害を受けたつもりはないよ」
「いいから」
「あきら……」
ゆたかの左へ動けば、正面には腕組みをして立っている菊地原先生の姿。
憮然としているのは、きっとそれが菊地原先生の心情なのだろう。
閉じられていた口が開く。
「聞く気があるということは、自らに反省点があることを認めるのかね?」
……嫌な言い方だ。
「認めなくちゃ、俺は話を聞いちゃいけないんですか」
「私は質問の是非を聞いたのだが、まあいいだろう。ゆたか君は座っているといい、少し話が長くなりそうだ」
俺の部屋で勝手に勧めるのは癪だが、間違ってはいない。
俺からもベッドに座るように促し、ゆたかが申しわけなさそうに腰を下ろしたのを見届ける。
それから再び、俺は菊地原先生と向き合った。
菊地原先生が腕組みを解き、話は始まった。
俺はそれを、体の前で腕を下ろして組みながら聞く。
「まず確認したい。君は、自分は精一杯やったと思っているのかね?」
何をやったか、なんてのは愚問だろう。
「やりましたよ。菊地原先生からするとどうかはわかりませんけど、俺なりに頑張ったつもりです」
ほう、と軽い相づち。
「なら君は大学で私と別れてから今まで、一体何を成し遂げたのかね?」
「それは……」
ない、なんて言いたくなかった。
けれども言葉は詰まり、継ぐのは菊地原先生。
「私は結果論で語ろうと言うわけではない。経過の段階で何かしらの進展があったなら、例え今は後退していようとも評価に値すると考える。経験の有無の差は重要だからね」
だが、
「君は今まで何ができた? ゆうな君と再び会えたのは君からではない。新たな仮説が生まれたのも君からではない。こうして私を含めた四人が集ったのだって、君からは何もしていないではないか」
「俺から……」
「そう、君から起こした行動があまりに少なすぎる。私からの提案に乗っていた以上、制限はあるだろうが、それはあくまである程度なのだよ。聞く限り、君はいつも受け身だ。人からの提案を受けて聞くだけ。それが絶対にいけないということはないが、あまりに度が過ぎてはいないかね?」
受け身ばっかりって、そんな……。
反論しようとした気持ちは喉の奥で固まる。
伏し目がちに言葉を詰まらせたのが、何よりの返答になる。
「君から動いた例は、君とゆたか君がセックスする場をここに変えたくらいか。さて君はそのときに、ゆたか君が考えた危惧をしなかったのかね?」
「……っ」
していない。
そのときは、ただそうするのが良さそうに思えただけで。
そこで思考をやめてしまっていた、というのが的確な表現だと思う。
目を閉じて気付いたのは下唇の痛みで、そこで噛みしめていた事実を認識した。
「あきら君、君は自身がどうしたいのか考えたほうがいい」
目を開けるも、正面を見られる自信がなくてうつむく。
見えるのは菊地原先生の足、スーツから覗く両足の靴下。
「君は自分の意見を固めるべきだ。最初は私やゆたか君の仮説を信じていたかと思うと、ゆうな君の仮説を聞くなりゆたか君を疑い始める。すると今ではどっちつかずの曖昧さ。これに誉められることなどあるまい」
「そ、そんなこと……」
「君が否定したいのはゆたか君を疑った、というところかね? これを正確な表現にこだわる必要はないだろう。現に君は形だけでもゆたか君を疑い、ゆたか君を呼び戻したんだ。間違っていないだろう?」
言い当てられ、押し黙る以外の反応ができるものか。
俺の意見、少なくともはたから見れば菊地原先生の言うようにころころ変わっている。
ゆたか寄りだったのがゆうな寄りへ。
今ではどっちが正しいのか判断できず、ふわふわと微妙な立ち位置だ。
そうするしかなかった、仕方なかったという思考は、口に出すのがはばかられるくらい言いわけがましく思えてならない。
「ゆたか君はこれに傷ついたのだよ。君に自覚はないだろうがね」
「え……?」
顔を上げて見た菊地原先生の顔は、さっきより怖く感じた。
目つきは鋭くなり、それに強く俺を責める色。
喉奥を詰まらせる溜飲が作られる。
視界端からゆたかが口を挟むが、
「せ、先生――」
「君から疑われている事実を知ったとき、ゆたか君は思っただろうね。どうして私を疑うんだ、どうして私を信じてくれないんだ」
「先生!」
今度こそ菊地原先生の言葉は切られた。
だが代わりに視線がゆたかに向き、口調は柔らかいものへ。
「ゆたか君には恨み言を言う権利がある。事情があったとはいえ、避けきれないことでもなかった。なら傷ついた君の気持ちくらい伝えてやるべきではないのかね?」
「そう、か……」
「あきら……?」
ゆたかの声が胸に痛い。
立ち上がり、俺の顔をのぞき込んでくる視線。
俺の、あかりの小さな体を通してズキ、と痛む。
……そうか、俺はゆたかを傷つけていたんだ。
それはゆたかの怒りに表れていた。
俺とゆうながゆたかを呼び戻したとき、うちに来たゆたかは怒っていた。
初め、どうして怒っているのかわからなかった。
聞いて、ゆたかはそのおじいちゃんから俺たちの話を間接的に聞いていたことを知った。
それでもゆたかは、最終的に矛先をゆうなに向けただけ。
ゆたかを疑う仮説を立てたのがゆうなだからって、責めたのはゆうなだけだった。
――俺が賛同したから悪いのに。
「あきら、違うんだ」
ゆたかの声が鼓膜を揺らす。
それは小さなもの。
「私は、そうじゃない。何と言えばいいのかわからないけど……そうじゃない、あきらは私を傷つけてやしない」
ゆたかの両手が俺の両肩に触れる。
大きな手に包まれる感覚。
「たしかに「どうして」とは思った。おじいちゃんから話を聞かされて、信じられなかった」
その指先が、俺を離さないようにぎゅうと締まる。
「でもそれだけなんだよ、あきら。私が君たちの呼び出しに応えたのは、真実を確かめたかったから。いつも私に教えてくれるおじいちゃんを疑いたくなるくらい、信じたくなかった」
ゆたかの顔が俺の目の前に。
悲しそうに下がった眉が、根に詰められる。
「ここに来る間に苛立ったのも確かだ。裏切られたような気持ちになったとも言った。でも……」
「正直に言ったらどうかね、ゆたか君」
ゆたかを隔てて聞こえてきた菊地原先生の声。
それにゆたかは、びくりと目を開く反応をする。
菊地原先生のいる後ろには向かず、堪えるように奥歯を噛みしめるのが見えた。
「……先生は、何を言いたいんですか?」
「素直になれと言いたいのだよ、ゆたか君」
顔を合わせず会話をする二人に険の色が強い。
「あきら君は鈍感なようでね、そうして言葉を濁すだけで真意を汲み取れなくなる。だから伝えたいことがあるなら、直接言葉にしなくては誤解されてしまうよ」
「誤解なんてありませんから」
ただゆたかは優しげに、俺を安心させるような笑みを向けてくる。
「大丈夫だよ、あきら。私は正直だ。先生の言うことなんてありはしない。だから……」
俺の肩を掴むゆたかの手に力が込められる。
一瞬、引き寄せられるような力を感じて抱き締められるかと思うも、俺たちの距離に変動はない。
少し無理をするように、ゆたかの肩肘に力が入っているように見えた。
「だから、先生の言葉に耳を貸すのは止めてくれ」
「同感するわ、その意見」
そのときだった。
ゆたかに続いた声の主をたどれば、そこにはベッドから立ち上がったゆうなの姿。
凛々しく佇む視線の先は、俺からは見えないが、おそらく菊地原先生へ。
鋭く尖って、きついものを向けている。
「菅原さんに同調するのは癪だけど、たしかに思うわ。“今の先生”に、人に話を聞かせられる力はない」
「ほう。ゆうな君、君はいきなりおかしなことを言い出すね」
返す菊地原先生の声音は驚くほど低い。
それだけ癇に障ったということか。
「おかしなのは先生ですよ」
だが、ゆうなは怯まない。
怯むどころか、その声には今までにないほどの冷静さが表れている。
いや、冷淡さと言うべきか。
「個人的感情に呑まれるのは勝手ですが、それであたるのは筋が違いませんか? それも説教のように用いるなんて、度が過ぎてます」
「……私が感情に流されていると、ゆうな君はそう言いたいのかね?」
「そう言ったつもりだったんですが、他のように聞こえましたか?」
それからゆうなは菊地原先生の返答を待つことはない。
踵を返して、ゆうなは体ごと俺に向ける。
向けるどころか、俺の方まで歩んできた。
俺の肩を掴むゆたかの手を外し、俺の右腕を掴む。
「行きましょう、あきら」
そう言って引き上げ、俺は易々と立ち上がらされた。
「ちょ、ちょっと待ってよ、ゆうな」
声を掛けた俺に目を向けるゆうな。
「どうしていきなり……」
「もう聞く価値ないじゃない、こんな話。反省会は閉会したのよ」
無表情に結ばれたゆうなの表情は冷たい。
けどふわりとした栗色の髪の毛のせいか、ゆうな独特の柔らかさは感じられた。
「ゆうな君、君は勝手だ。実に勝手だよ」
立ち上がった俺は、今度こそ菊地原先生の姿を目にする。
それは驚くほど不機嫌そうな顔つきだった。
思うとおりにいかない苛立ちをぶつけるように、菊地原先生は口にする。
「反省会は始まったばかり、それこそゆたか君の順番が終わったばかりではないか。それを参加してもいない君が閉会の宣言をするなど、いささか勝手が過ぎるのではないかね?」
「そうですね、私は勝手です」
開き直ったような発言に、ぎょっとしてゆうなの顔を見上げる。
途端、掴まれていた右腕が引っ張られ、ゆうなに寄り添うように引きつけられた。
軽く肩をゆうなの腕にぶつける。
そのまま左肩に腕を回され、ゆうなに抱きしめられる形に。
「私は勝手なので、この場からあきらを連れて行きます。勝手だから、先生に止められても一切聞きませんから」
ゆうなの鎖骨が目の前にあり、言葉は肌を通して痺れるように伝わってくる。
そうされて、ゆうなに逆らえない気分になっていくのがわかった。
「待ちたまえよ、ゆうな君。あきら君を連れ出されたのでは話の続きどころか、本当に反省会ができなくなってしまうではないか」
「だから閉会したんですよ、それは」
抱きしめられた俺の視界はゆうなでいっぱいで、他に何も見えない。
「菅原さん」
でもゆうなが呼びかけて、気配からゆたかがゆうなに向いたのがわかる。
「これをあなたに渡しておくことにするわ。あげるんじゃなくて、貸すだけだからね」
俺の左肩に感覚が失せる。
離れたゆうなの右手がどこかを探り、恐らくゆたかに向けられて伸ばされた。
「これは……」
「あかりの部屋の合い鍵。私はあきらを連れて出て行くから、その後に部屋を出るならそれを使って」
「……わかった。必ず返すよ」
「当たり前じゃない。本当はあなたなんかに合い鍵を渡したくないんだからね」
言うも、ゆうなの言葉尻に棘は小さい。
証拠に、ゆたかは小さく苦笑していた。
それから俺はゆうなの抱擁から放され、ゆうなに言われてクローゼットから羽織れる上着を持ってくる。
外に出ると寒いだろうから、風邪を引かないように、と言われた。
その際、黙って仏頂面をしていた菊地原先生の刺さるような視線を背中に感じたが、何か言える状態でもなかった。
準備を終えて、先行するゆうなに続いて玄関へ。
共に靴を履いて部屋を振り返れば、黙々と機嫌悪そうな菊地原先生が部屋の中央に立っている。
ゆたかは俺たちの見送りに、玄関の近くまで来てくれた。
玄関と部屋の床の高低差もあるだろうが、やはりゆたかの背は著しく高い。
俺からするとゆうなも高いのに、ゆたかはそれよりも圧倒的に高くて、顔を見上げると首が痛くなった。
でもそれ以上に物悲しげなゆたかの顔を見ていると痛くなって、
「じゃあ」
それだけ言って手を振り、俺はゆうなに連れられるまま部屋を出た。
*
部屋を出て扉を閉め、外に出て数歩。背後から鍵の閉まる音がした。
久々のように感じる外気は肌寒くて、ゆうなの言うように上着を持ってきてよかった。
さすがにワンピース一枚だと風邪を引きそうなくらいの涼しさ。
上着を羽織って腕をさすると、横のゆうなが小さく笑った。
「さあ、行きましょうか」
「えっと……どこに?」
「ホテルよ」
俺がゆうなの顔を見上げると、ゆうなは方角的に駅の方を向く。
「私たちがよく使ってたホテルに行きましょう。私の部屋でもいいけど、それじゃあ少し遠いもの」
私たち、と言うと、ゆうなとあかりのことだろうか。
聞いて確認すると、ゆうなは首肯する。
「あきらは知らないだろうけど、駅前に女同士でも入れるところがあるの。歩いて十分くらいかな。それくらいなら、寒くても歩けるでしょう?」
「それは大丈夫だけど――」
ちょっと待った。
今、ゆうなは何と言った?
――あきらは知らないだろうけど。
そう、俺を認めるように言わなかったか?
「ゆ、ゆうな……」
「詳しい話はそこでする。だから今は待って」
ぴしゃりと断ち切られる。
それには有無を言わせぬ迫力があった。
「……うん」
渋々だが頷くと、また小さく笑ったゆうなが俺の頭をぽんと軽く撫でてくる。
気恥ずかしくなって顔をうつむけるけど、不思議と悪い気はしない。
それからゆうなは「行きましょう」と言って、先導するように歩き出した。
俺はそれに黙ってついて行くしかない。
今さらかもしれないけど、あかりの体で動くのは何だか変な感じがする。
視線が低いのは視覚に違和感をもたらせて、歩幅が狭いのは歩く速度に違いを作る。
気にしてみると歩き方までいつもと違うような気がして、スニーカーなのに歩きにくさを覚えた。
それでも前を歩くゆうなとの距離が離れなかったのは、彼女がこの速度に慣れているのか、俺に合わせてくれているのか。
ゆうなの背中は、俺の記憶よりずっと大きく見えた。
*
しばらく歩いて着いたホテルは、俺も知っているホテルだった。
駅前にあるこのホテルは、派手な外観とビルの高さからなかなか目立つもの。
けど、俺が知っているのはその外装だけ。
ただ駅から見たことあるなと思うだけで、俺のいた元の世界で使ったことのないホテルだった。
ロビーに入り、ゆうなが受付に行って手続きを済ませてくれる。
戻ってきたゆうなが部屋の鍵をどこか冗談めかしながら「じゃーん」と見せてきて、ちょっと吹き出した。
同時に体がほぐれて、今まで無意識に緊張していたらしいことを知る。
それからエレベーターを介して、ゆうなが取ってくれた部屋へ。
ゆうなが先に入って、俺も続く。
部屋の中は広く、当たり前だろうけど整頓されていて綺麗な印象を受けた。
ゆうなが部屋の明かりをつけると、間接照明がほの明るく照らす。
仕切りがスモークのガラスになっている浴室が見えて、それらしさにちょっとおかしくなった。
「あきら、こっちおいで」
ゆうなは部屋の中央にある大きなベッドに腰掛け、その横をぽんぽんと叩く。
促されるままそこに座り、靴を脱いでいるゆうなにならう。
横を見上げると、微笑みに満たないながらも柔らかい表情を浮かべたゆうなと目が合った。
そのゆうなが少し意地悪そうな目をする。
「あ、また緊張してるでしょ。お腹くすぐってあげようか?」
「や、それはいいよ……」
避けるように腰を浮かせて距離を取ると、「冗談だって」と笑うゆうながまた詰めてくる。
……何だか、すごく懐かしい気分。
わざとゆうなが明るく振る舞ってくれているのかもしれないけど、それでも嬉しい。
いや、だから、か。
思い立って浮かせた右手はゆうなの頭へ。
すんなりと受け入れられて、栗色の柔らかい髪を梳くように撫でた。
高い位置にある頭を撫でるのは、前にも思ったけどやっぱりやりづらい。
肩を上げる姿勢も不自然だし、今までの癖からも逸脱している。
けれども指に絡む髪の毛の感触、指通りの良さはちっとも変わらない。
あかりの小さな手でも、このときばかりは男に戻れたような錯覚に陥る。
陥ると言っても、それは心地良いことだった。
不意に、頭を撫でる俺の手にゆうなの手が重ねられる。
それは大きくて、俺の手を丸ごと包むよう。
ゆうなの目は細く、何か思うような表情。
「やっぱり、撫でるの慣れてるのね」
それに含まれていたのはどんな意味か。
理解する前に頭を撫でていた手を取られ、ゆうなの膝の上に運ばれる。
そこでゆうなの両手に包まれる。
温かく、柔らかい。
「ホテルに来て話をするだけなんて、ちょっと贅沢ね。清掃員の人は楽できるだろうけど」
それはゆうなが話し出すきっかけの言葉。
冗談を交えた言い方から雰囲気は程良い軽さを損なわない。
「――私、あきらはあきらだと思ってる。あかりとは別人で、ごっこ遊びでもないし、二重人格でも何でもないって」
だから突拍子もなくて、驚いた。
聞き返す余裕もない。
「でも、そのオカルトを信じてるわけじゃないの。むしろ信じてるのは二重人格説の方。……って、ややこしいか。ごめんなさい、私の中でもうまくまとまらないことだから」
そこで口を閉じたゆうなは、視線を俺から外して正面へ。
何を見るでもなく、ぼうとした様子。
「……私、きっとおかしなことを話す。それで、きっとあきらは私をおかしく思う」
ゆうなの両手が握る俺の手。
そこに力が込められる。
「でも聞いてほしい。私を理解してとは言わないから、聞くだけ聞いて。――これは、あきらにだから話せることだから」