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俺はレズになりたくなかった  作者: ぴーせる
オカ研顧問の“再登場”
38/116

求めるものに、募る不安


     *


「なるほどねえ……」


 ひとしきりの説明を終え、最初に口を開いたのは菊地原先生だった。


 俺とゆたかは横並びに座り、その正面――ゆたかの指示の下、部屋のできる限り離れたところに運ばれた椅子に座っているのが菊地原先生。


 今回説明したのは、ゆたかに話したことに加えて、ゆたか向けに、菊地原先生と会った電車内のことについてだ。


 さすがにゆうなに襲われた細かな内容までは話せないが、念のために事に及んだ事実までは話してある。


 つまり、今俺がすべきことは終わり。

 後は菊地原先生の意見を待つべきだと、固唾を飲んで様子を見ることにした。


「ううむ……」


 やはり考えることが多いのだろうか。

 たるんだあごに手をやり、顔をしかめてうなる菊地原先生。


 ――もし、解決法がないと言われたら。


 不意によぎる不安。


 これだけ一緒に考えてくれたゆたかが、渋々ながら頼んだ先生だ。

 この人に対する不安はないが、それでも脳裏こべりつく、


『わからない』


 ゆたかが前に発した言葉。


 あれは俺の覚悟を試すためだったが……。


 ゆっくりとした動作であごを指先でなでている菊地原先生を見、気持ちが急く。


 できることなら早く結論付けてもらいたい。


 ――いや、早く解決法を教えてもらいたい。


 こうして待っている間。

 期待を裏切られる不安に、押しつぶされそうだったから。


(……頼む……お願いだから……)


 緩やかに流れる時間。


 執拗に思える静けさの中、鼓膜を刺激するのは菊地原先生の唸る声と、風の音。


 時計が秒を刻む音すらないこの部屋で、その静寂さは耳に痛かった。


「あの」

「先生、どうですか?」


 俺が口を開くが早いか、食うように発言したのはゆたか。


 相変わらず鼻をつまんだままの体勢だが、それに似合わず表情は真面目。

 俺の意思と同様、結果を急くものだと伺い知れた。


 だから、ゆたかと共に菊地原先生を見る。

 その顔は、どこか穏やかに見えた。


「現状で結論を出すのは早計とは思うが」


 そう前置きし、


「少なからずヒントを見つけたよ」


 琴線を弾かれたようだった。


 その発言が耳に届くや否や、無意識に前のめりになり、


「ほ、本当ですかっ!」

「ああ。可能性としてだがね」


 頷きを見れば、心が踊るようだった。


 ――ヒントを見つけた。


 それは俺が待ち望んだもの。


 まだ内容を聞いてすらいないというのに、俺はその事実だけで体内から活気が湧き出るような感覚に包まれた。


(元の世界に戻る方法が――)


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