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俺はレズになりたくなかった  作者: ぴーせる
オカ研部長との邂逅
30/116

傾向と対策はしっかりと


 超高身長女の可愛らしさの是非は置いておいて。


 ゆたかが始めに可能性を否定するように言ったのは、単に俺の覚悟を試すためだろう。


 先に言った通り、パラレルワールドの世界を移動するということは「無理」なことなのだ。

 無理でなければ、どこの誰でも世界間を行き来しているはずが、現状はそうではない。

 人々は己の選択した世界で、何の疑問もなく生きているのだ。

 むしろ、その存在さえ知らない、認めない人もいるかもしれない。


 つまり俺に起きた現象は、それだけ現実離れしたこと、ということ。

 その現実離れを、自ら引き起こそうというのだ。


 だから、ゆたかは覚悟を求めたのだろう。


 そんなありえないことに挑むのだから、最低限の覚悟がなければならない。

 そして、それを持ってようやくスタートラインに立つことができる。


 要は試したのだ。

 俺のそれが、口だけの否定で折れるような弱い意思だったのかどうかを。


 まあ試したことに対して思うことはあれど、逆に仕方ないとも思う。


 そこにこだわるよりは、話を先に進めた方がよっぽど有意義なことだ。


 ……とは言え、ちょっとムカつく。


 はあ、とゆたかに見てわかるようにため息をつく。


 腕を組み、不機嫌になりましたよ~という露骨なアピールをするも、ゆたかはそれを可愛らしいものを見るような目つきで小さく笑い、話を切り出してきた。


「さて、ぷりぷりしている可愛いあきらには、もっと聞かなくちゃいけないことがあるんだ」

「聞かなくちゃいけないこと?」


 繰り返した言葉に、ゆたかは仰々しく頷く。


「君の世界について聞いておきたい。空は青いかどうかなどの簡単なことから、日本という国の位置づけ、あと世界の常識など、あらゆることを聞きたいんだ。軽く聞いた限りではこちらとそれほど違いがあるとは思えないけど、あくまで想像。それだけだと判断しかねるからね」


 視線を合わせるためか、隣の席に腰を下ろすゆたか。


「理由は知識の補完。それを知ったところで原因究明に直接繋がるとは限らないし、まったく同じで徒労に終わるかもしれない」


 でも、と続ける。


「知らないに越したことはない、と私は思うんだ。無知によるトラブルはあれど、逆はそうない。前者が不可抗力なのに対し、後者は事前に防げるものばかりだからね」


 耳にかかる細く黒々とした髪の毛を、自身の指でかきあげる。


「だから教えてほしいんだ。わかってくれたかい?」

「あ、ああ」


 納得して頷くも、思うことが一つある。


 なんでゆたかは、妙に芝居がかった風にしゃべるのだろう?


 別に気に障るとかいうわけではないが、なんというか。

 あのたくやと同位置付けにある人物と認識しているためか、どうも違和感が……。


 癖、なのかな?


「それで、一つ確認しておきたいことがあるんだ」


 とん、とゆたかが左肘を机の上に置く。


 その表情は神妙。


 空気が変わった気がして、俺も改めて向き直った。


 座ってもなお高い位置にある薄い唇が、ゆっくりと開く。


「あきらは、彼女と喧嘩してるんだったね?」

「……うん、そうだ」


 それは、できれば思い出したくないこと。

 先ほどゆたかに話したそれを言われ、なんとも言えない焦燥が胸に湧く。


 なんで今、そのことを?


「先に言った君の聞きたいことの内に、君の人間関係についても含まれている。世界に限らず、君についても把握したいからね。そして、もちろんその中には君の彼女も含まれている」


 つまり、ゆうなも含まれている、と。


「嫌だったら構わない。私には無理強いする権利も必要もないからね」


 一息空け、


「でも、できることならなるだけ詳しく教えてほしい。事情が把握しきれない以上、何があるかわからない。だから、無理のない範囲で話してほしいんだ」


 ……なるほど。


 原因の糸口すら見当たらない現状。

 探るなら、もはや暗中模索。

 そんな状況なら、知れるものをすべて知っておきたいのは当然の考えだ。


 むしろ、友人ではあるものの、他人の俺に対してここまで真面目に考えてくれることがありがたい。


「話してくれるかい?」

「ああ、わかったよ」


 労を費やしてくれる友人に、最大限の協力を。


 それが、俺には必要なんだ。


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