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俺はレズになりたくなかった  作者: ぴーせる
オカ研部長との邂逅
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理解と把握と行動


「ええと……」


 自身の言葉を皮きりに、思考を開始する。


 目の前にいる超高身長女は、さも当然であるかのように自らをオカルト研究部の部長であると名乗った。


 しかし、俺の知る限り、今年度におけるオカルト研究部の部長は菅原たくやのはず。


 友人としてそのことは把握していたし、実際にたくやが部長として振る舞う姿も幾度か確認したのだ。間違いであるはずがない。


 つまりここが相違点であり、俺に違和感を覚えさせる矛盾点である。


 これは同時に存在し得ない事象――部長が二人。

 片方が副部長であるならまだしも、両方が部長を名乗るなんてありえない。


 それに、過去にたくやはこう言っていた。


『仕方ないから部長になった』


 それは、たくやと同学年以上の部員がいなかったから。


 そもそもたくやは、自ら部長をかって出るような積極的な性格ではない。

 ただでさえ守護霊のおばあちゃんがすねると自由な時間の保持に苦心しているたくやが、それを削ってまで部長業に勤しむ理由がないのだ。


 だから、運悪く唯一の最高学年になったたくやは渋々部長の役職を受け入れたに過ぎない。


 なのに……?


 ああ、混乱してきた……。


 両立し得ない事柄が同時に起きているということ。


 この眼前にそびえる超高身長女が嘘をついているのか。

 はたまた、たくやが嘘をついていたのか……。


(わかんねえ……)


 後頭部をがりがりとかく。

 長い髪が指にまとわりついて、なんだか不快だった。


(――長い髪?)


 背中まで長く伸びた髪は、俺があかりと入れ替わった印。


「あっ」


 俺はそこにヒントを得た。


 いや、ヒントはこの超高身長女が名乗った時にあったのだ。


 菅原たくやと菅原ゆたか。同じ姓を持つ両者で、注目すべきは名前の方。


 ローマ字表記で『Takuya』と『Yutaka』。

 構成要素は『T』、『K』、『Y』、『U』が一つずつに、『A』が二つある。


 あきらとあかりのそれに酷似しているその関係。

 つまり、たくやとゆたかは、パラレルワールドにおける同一人物――


「どうしたんだい?」


 遥か上から不思議そうな表情をしたゆたかがこちらを見下ろしてくる。


 その問いは、先ほどの俺の声に反応したものだろう。


 俺は首を目一杯反らし、ゆたかの顔を見上げた。


 たしかに、そう考えてみれば似ている点がないこともない。


 もちろん俺の知っているたくやはこんな超高身長ではなかったし男だったのだが、線が細く、やや骨ばった顔つきにどこか面影を感じる。

 たぶん髪の癖の付き方も、たくやと同じかもしれない。


 身長や性別、あと性格も違うように見えるのだが、俺とあかりの例もあるので、もしかすると、もしかするのかもしれない。


 となれば、


「いや、ごめん、気にしないで。それよりも、実はゆたかに相談があって来たんだ」

「おや、あかりから相談なんて珍しいね。なんだい?」


 先程までのやり取りがなかったかのように、ゆたかは気軽に応じてくれる。


 もし俺の想像通り、ゆたかがたくやと同位置にある人物なら、本人が持っている性質もさほど変わりないだろうと思う。


 だから俺はゆたかをたくやと同様に親しみを込めて呼び捨てにし、たくやで果たそうとしていた目的を達成しようとする。


 もちろん、それは現状の脱出。

 パラレルワールドから帰還し、元の世界に戻ること。


 だが、不安要素もある。


 たくやが持っているのは、自身の能力からわかるようにオカルト方面でも幽霊に関しての知識だ。

 対して、俺が求めているのはその外側にある知識の話。


 一応、たくやはオカルト研究部といういかにもな団体で部長という立場であり、長いこと部に在籍していた人間。

 全くの無知である俺よりは幾分もましであるに違いないが、それでも可能性は高くないかもしれない。


「あまり驚かないでくれると嬉しいんだけど……」


 前置きのあと、俺は話し始めた。


 俺の現状と、その予想を。


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