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俺はレズになりたくなかった  作者: ぴーせる
俺、女になりました
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誕生日を待ちわびる


 九月十一日、水曜日。

 もう間もなく日付が変わるというころ。


 俺はベッドに腰掛けた姿勢で携帯電話のディスプレイを見つめている。


 アプリを起動していたり、写真を眺めているわけではない。

 ただ一心に変化を待ちわびているのは、そこに映る時間。


 まだかな、まだかな、と木曜日に変わる瞬間を待ち望んでいた。


 というのも、明日は俺の誕生日。

 彼女のゆうなはなかなかマメな性格で、誕生日になった瞬間、何かしらのお祝いをしてくれると俺は知っていた。


 ゆうなは隠し事をするのが苦手な子である。


 一昨日のデートのとき、これでもかとばかりにしつこく言っていた「誕生日になるまで起きててね」の言葉。

 これから考えるに、誕生日なった瞬間、何かしようという目論みがあるのだろう。


 まさか終電のなくなるこの時間に、彼女の家から数駅離れた俺の家に来るはずもないだから、おそらくお祝いメールか電話をくれるのだろうと思う。

 そう踏んで、俺はじっと携帯電話とにらめっこをしていた。


 今か今かと待ち望む気持ちを抑え、俺はじっと携帯電話のディスプレイを見つめる。我ながらそわそわしすぎている感じが否めないが、まあ可愛いゆうなのことを考えるとこれでも落ち着いている方だろう。


 電波と電池が十分であることを確かめ、メールの画面を開いた。

 その受信メールの中から、一番最後に届いたメールを見る。


『明日はあきらの誕生日だね!

 プレゼントは何がいい?

 なんでもあげちゃうよ!!』


 今日の夕方届いた、ゆうなからのメールだ。


 ゆうなは今時の女子には珍しく、絵文字や顔文字など、文章を装飾するものを使うのが苦手らしい。

 初めは文章のみのメールに物足りなさを覚えたが、今となっては慣れを通り越し、俺もゆうなと同様に絵文字や顔文字を使うことがなくなった。


 そんなゆうなのシンプルメールを見て、思わず表情をほころばせてしまう。


 なんと嬉しいメールであろうか。

 何よりも『あげちゃうよ!!』の『よ!!』が可愛らしい。ビックリマークが二つもついてる『よ!!』なんて、どれだけ気合いを入れてくれているんだろうか。


 ゆうな可愛いよ、ゆうな。


 その可愛らしいメールを読み直し終えたころ。

 俺の誕生日へのカウントダウンが、もう間もなくというところになっていた。


 ヤバい。めっちゃドキドキしてきた。


 祝ってくれるのは、いつもの愛らしいメールか。

 はたまた可愛い声の聞ける電話か。

 どちらにせよ、嬉しいことに違いはない。


 それに、明日の誕生日デートはどこに連れて行ってくれるのだろう。


『あきらの誕生日なんだから、デートプランは私に任せて!』


 と豪語していたゆうなの言葉を思い出し、期待に胸を膨らませる。


 ああ、こんなにも楽しみにしている誕生日なんて、何年振りのことだろう。

 いつもはさらりと流していた誕生日がこんなに幸せと思えるだなんて、ゆうなのおかげだ。


 明日のデートで、撫でられるのが好きなゆうなも嫌がるぐらいたくさん撫でてやろう。

 でへへ。ニヤニヤしてきた。


 そうこうしている間に、携帯電話のディスプレイに表示されている時計が日付変更のすぐ手前まで刻んでいる。


 五十、五十一、と進む秒数に、思わず固唾を飲む。


 残りの秒数が両手から片手に収まるまでになり、心拍数が上昇していく様が手に取るようにわかった。


 そして秒数表示が繰り上がり、すべての数字が零に並んだ瞬間――


 俺の髪の毛が、何かが爆発したかのようにぶわっと伸びた。


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