表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
醜い私にサヨウナラ〜捨てられ公主は深淵の谷で幸せになります〜  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第二章 優しすぎる薬師様に恩返ししたいと思います

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/29

013 リウリーの大好きな人

 夜はリウリーと一緒に寝台に横になった。


「ねぇ、また一緒に鞠をしましょうね」

『そうね。翡雲(フェイユン)様も帰られたし、いいわよ』

翡雲(フェイユン)様が来てから、リウリーが元気なくて、私はそれが心配だわ」


 そう尋ねると、リウリーはフゴっと鼻を鳴らして言葉に息詰まった。


『うーん、あのさ。雪燕(シュウエン)って、翡雲(フェイユン)様の許嫁なの?』

「えっと、許嫁だった。が正しいわ。過去の話よ。私はもう公主には戻らないから」

『でも、翡雲(フェイユン)様なら雪燕(シュウエン)を幸せにしてくれると思う。雪燕(シュウエン)のこと守ってくれるのではないかしら。二人はお似合いだと思う』

「どうして、そんな事を言うの?」

『だって、翡雲(フェイユン)様が可哀想だから。許嫁が亡くなって、自分を責めていたから』


 確かに、私の死をとても悲しんでくれていたと思う。でも、それは翡雲(フェイユン)様のせいではないし、本当のことを言って、彼に守ってもらうことを、私は望んでいない。


「リウリーは、翡雲(フェイユン)のことが大切なんだね。でも、ごめんなさい。私に彼を幸せにすることはできない」

『公主じゃないから? そんなこと、翡雲(フェイユン)様は気にしないと思う』

「彼はもう、私の死を受け入れて前へ進うとしているわ。それでいいの」

『よくないっ。全然よくないわ。あんな辛そうな姿、今まで見たことないのよ。私じゃ、何もできないから……』


 苦しそうに涙を流すリウリーを、私はギュッと抱きしめた。何もできないは同じだって思ったから。


「私にも、何もできない。私、湿疹がただれて痛くて痛くて、とても辛い時に、翡雲(フェイユン)様に言われたの。これ以上近づかないでくれって。あんなに醜かったんだもの。仕方ない……仕方ないよね?」


 頭では分かっている。それが当たり前の反応で、普通のことで、仕方のないことだということが。

 でもあの瞬間、私の中にあった彼への信頼も想いも、全て壊れてしまったのだと思う。


雪燕(シュウエン)……ごめんなさい』


 リウリーは、鼻で私の頬に伝う涙を掬いながら謝ってくれた。


翡雲(フェイユン)のお母様も疫病で苦しんだから、思い出してしまったそうなの。でも、あの時の彼の瞳は、私を拒絶してて、私を見る周りの人々の、あの軽蔑した瞳と……一緒に見えたの」

『思い出させてごめん。私、自分のことしか考えてなかった』

「……ううん、私だってそう。自分勝手な理由で、翡雲(フェイユン)様から逃げている」


 このままずっと気付かれないでいてくれたら、いや、いっそ私のことなんて思い出さないでいてくれたらいいのにと、身勝手なことばかり思ってしまう。


『心が壊れてしまうより、逃げたほうがいいわ……。私、翡雲(フェイユン)様が大好きなのよ。実は、私を森で拾ってくれたのは翡雲(フェイユン)様なの。泰然(タイラン)は、怪我を治してくれた。でも、元気になったら、私をすぐ追い出したわ。その度に、翡雲(フェイユン)様がまた、私を屋敷に入れてくれたの。いつの間にか、泰然(タイラン)はもう私を追い出すことをしなくなったけど』


 やっぱり、リウリーは翡雲(フェイユン)様が大好きなんだ。リウリーみたいな子が、翡雲(フェイユン)様の側にいてくれたら、きっとすぐに翡雲(フェイユン)様も元気になれるだろうに。


「詮索しないで、って言われたけど……泰然(タイラン)様が言っていたの。リウリーも私と同じように呪われているんじゃないかって、秘薬でもとに戻れるんじゃないかって、当たっている?」

『さぁ? 言えないかな』


 言えないということは、当たっているということだろうか。


泰然(タイラン)様のお祖父様は、夜も外に出られたんですって、だから、夜に採取した茸で、秘薬を作ったかもしれない。今度はそれを試そうとしているの」

『ふーん。夜に外に出られるなんて……。だから泰然(タイラン)のお祖父様は……』

「えっ?」

『ううん、それより、泰然(タイラン)は許さないでしょ? 雪燕(シュウエン)を一人で外に出すなんて』

「そうなのよね」

『だったら、私がついて行ってあげる』

「え? リウリーが?」


 戦力的にはどうだろう。しかし、私の心なんてお見通しといった様子で、リウリーはフゴッと鼻を鳴らした。


『もちろん、私だけじゃ泰然(タイラン)は許可してくれないだろうから、でっかい友達も誘ってみるわ。明日紹介してあげる』

「うん、ありがとう」



****


 泰然(タイラン)様は腕を組み、納得のいかない様子で私に尋ねた。


雪蘭(シュウラン)、本気か?」

「はい。リウリーのお友達です」


 昼食の後、リウリーと一緒に屋敷を訪ねてくれたのは、私の腰くらいの大きさのイノシシだった。

 大きな牙が印象的な、強面のイノシシ。


「狼も殺れるのか?」

『フゴゴー!(もちろんよー!)』

「ブンブン!」


 やっぱり、声が聞こえるのはリウリーだけで、ブンブンと鼻を鳴らすイノシシの言葉は、私には分からなかった。


「しかし、心配だ。やはり俺も夜の探索についていく。祖父は谷の毒で死にかけたと聞いた。だから」

『夜の毒は人の命を蝕むわ。絶対にやめたほうがいい。泰然(タイラン)のお祖父様だって、毒に耐え切れたといっても、何度も毒に侵され耐性を得た過程で、大部分の命を削られたのだと思うわ。きっと毒に侵されなければ今も生きていたのではないかしら』

「リウリーも危険だって言っています。お祖父様も、毒のせいで寿命を縮められたのではないかって。だから駄目ですよ。毒で死にかけるなんて、絶対に駄目ですからね!」

「……しかし、それ以外に方法はない。何度か死にかけるくらいのことをしなければ、いくら、予防的に解毒薬をたくさん飲んでも、夜の毒には耐えきれない」


 真面目な顔で、泰然(タイラン)様は、なんと危険なことを言っているのだろう。

 どうにかして、違う方向へと話を進めなくては。


「その……解毒薬ってどうやって作るのですか?」

「この辺りの動物は毒に耐性がある。その動物の血から作っている」


 耐性がある動物の血から。それだったら……。


「なるほど……では、私の血から解毒薬を作れませんか? すみません。また的外れなことを言いましたよね」

「いや、試してみる価値はある。それなりの量が必要だ。少しずつ採血してもよいか?」

「はい!」

 








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ