表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
醜い私にサヨウナラ〜捨てられ公主は深淵の谷で幸せになります〜  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第一章 私は醜い公主でした

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/27

012 御者(泰然視点)

 雪燕(シュウエン)は、町の人からひどい言われようだった。


 彼女はいいように使われたのだろう。

 病だと広め同情を買って、簡単に民から金を巻き上げる道具として。


 彼女の舞からは、民を想う祈りを感じた。身を削ってまで舞う彼女を見たら、皆も心を動かされるだろうに。


 しかし、雪燕(シュウエン)が生きていると明かせば、きっとこの町の人々は暴動を起こすだろう。生存していた事が広まらぬ様に、きっと雪燕(シュウエン)を……。


 良からぬことばかり考えていると、黒い外套を着た男性が目の前に立っていた。


「なぁ、お前。薬を調合できるんだろ。頼む。紫色の谷に入らないといけないんだ。毒を消す薬を作ってくれないかっ。頼む。お願いだっ」


 何やら様子がおかしいので、商人や街の女性は、俺に軽く会釈をすると場を離れていった。他の人も何事かと様子を窺っている。


「あの、落ち着いてください」

「落ち着いてられるかっ。こっちは家族の命がかかってるんだ。今度失敗したら……。頼む。少しの時間でもいいんだ。頼むっ」

「ここでは皆さんを驚かせてしまいますので、別の所で話を聞きます。私はゆっくり馬車で行きますので、後ろからついてきてくれますか?」

「そ、そんな事を言って置いていくのか!? 嫌だっ。俺も馬車に乗せてくれっ」

「ちょっ。困りますっ」


 男は錯乱状態のまま、力尽くで中に押し入り、荷馬車の奥で腰かけていた雪燕(シュウエン)と目が合い動きを止めた。

 雪燕(シュウエン)は咄嗟に顔を隠すようにリウリーを抱きしめた。

 男は彼女を見ると正気を取り戻し謝罪を述べた。


「す、すまない。驚かせてしまったようだ」

「親戚の子なんです。人見知りで……。馬車を降りてください。街外れで話を聞きましょう。きっと、力になれると思いますから」

「そ、そうか。良かった。俺にも同じ歳くらいの娘がいてな。怖がらせてすまなかった。馬車を追うから、先に行ってくれ」

「はい」


 男が申し訳なさそうに馬車を降り、俺は雪燕(シュウエン)のそばへ寄った。


「大丈夫か?」

「あの方は、私が乗っていた馬車の御者です。馬車が谷へ落ちる直前、山道で佇む彼と目が合ったので、間違いありません」

「山道で佇むか……。振り落とされたのか、自ら降りたのか、わからないのだな」

「はい」


 雪燕(シュウエン)は辛そうに首を縦に振り、うつむいたまま言葉を発した。


「御者は、自ら降りたのだと思います。私はとても迷惑な存在だったようなので。それは民だけではなくて、宮殿でも、そうだったのかもしれません」

「簡単に人を信じるな」


 ハッと顔を上げた雪燕(シュウエン)の瞳と目が合った。

 泣き腫らし、頬には涙の跡がある。


「えっ?」

「俺は自分で見たことしか信じない。人伝で聞いたことは、一つの情報として聞くだけだ。それを真に受けることはしない。だから……」 

「ありがとうございます。そうですね。誰かの言葉に一喜一憂せず、自分の目で見極めたいと思います」

「ああ、あの男の話を聞いてみる。君は休んでいろ」


 雪燕(シュウエン)は微笑み、リウリーを抱えて荷馬車の奥に腰を下ろした。

 俺は馬を走らせ、人気のない町の外れで御者の話を聞くことにした。


 御者は谷に入りたがっていた。

 雪燕(シュウエン)の生死を確認するためだろうか。

 それにしても、ひどく怯えた声だったことが気になった。

 確か、家族の命がどうこう言っていたようにも聞こえた。


 紫色の谷を見下ろせる丘の上で馬車を止め、人がいないことを確認してから、御者に尋ねた。


「話を聞こう。なぜ、あんな危険な谷へ行かねばならぬのだ? 俺は谷の近くに住んでいる。谷には詳しいから、できる限り力になる。話してくれないか?」

「谷の近くだと? それならば、馬車の事故を知っているか? その馬車には子供が乗っていたのだ。無事かどうか知りたいんだ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ