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獣人の国  作者: チャロ吉
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6 セントラルベイの発展

 セントラルベイは、賑わってきた。レオンがここへ来て十ヶ月になる。

 獣人達が、集落を街の外縁に造り、壊れかけた建物を土台だけ残して壊している。この土台に堅牢な家を作る予定なのだという。

 木材はふんだんにある。石造りだった元の建物は木造建てにするようだ。取り払われた石材は積み上げられて、街の中心街の建物の補修に使うそうだ。

「よく考えられているな。彼等は建築の知識もあるのか?」

「どうも、その様ですな。何処から得た知識なのか……」

「多分、竜人からの教えだろう。竜人は彼等に知識を与え、見守る役目だと言っていた」

 デパーズ老と騎士、レオンが高台に立って獣人達の作業を感心しながら見つめている。

 レオン達は獣人達に足りない物資があると言われれば、それを与える役目だ。定期的に来てくれるゴードンに持ってきて貰う。お金の代わりに魔宝石を使う。現金はここでは意味が無いのだ。

 中央には商店街のような物まで出来ていたが、基本は物々交換なので、お互いの持っている物の価値を言い合い、効率が悪そうだった。

 問題が起きればいつもレオンが呼ばれ、その対処にレオンだけでなく冒険者や兵士、鑑定士のデパーズ老まで駆り出され、目が回るような忙しさだ。

 街には魔獣は入ってこられないため工事は順調に進んでいるようだ。農作物や海産物も獣人達の頑張りで沢山採れて、住民の食べ物に困ることはない。

 足りなければ、彼等は森へ入っていけば良いだけだが、美味しい食物に彼等は慣れてしまったようだった。

 偶に獣人達が肉を食いたいと思えば、森へ行って狩ってきたり、森の獣人から買ってきたりしているようだ。勿論金のやりとりはなく、物々交換をしている。

「これからは、ここで通貨を使うようにした方が物流が速やかに流れるな。金や、銀、銅が必要になりそうだ。如何すればいいか……」

 鉄や銅はルーベンス領から仕入れることが出来る。レオンの領地の主要な鉱物資源だ。

 ――火山へ行って調べてみる必要があるな。ついでに魔獣を狩ってレベルを上げよう。

 竜神がいる中央の神殿(元の王宮)へ来て、竜神達に聞いて見ることにした。

「金、ですか。火山から流れる川がアリマス。河原に砂金があったのを見たことがアリマス。私達には必要がナイモノですが。銀はこの街の近くで採れるハズデス」

 火山の近くに住む竜人達に砂金を採ってきて貰えばいいかも知れない。

 レオンは通過をヤーガイの物にすれば簡単だと考え、金や銀をヤーガイへ持っていき、お金と交換して貰うことにした。

 場所を知っているという熊の獣人の案内で、一日半掛けて銀が採れるという岩場へきた。確かに昔は採掘した後がある。露天掘りだ。これなら直ぐにでも採掘できそうだ。

「どうでしょう。デパース老、含有量など分かりますか?」

「そうですな、確かに銀が含まれております。もう少し深い場所にもっと含有量が多い鉱石がありそうですな」

 ――こんな時、土属性持ちが居れば助かったのに……以前ここは土属性の魔法使いが掘っていたのではないだろうか? ゴードンは土属性が有るが、レオンは持っていない。ここでは魔法が使えるのはレオンだけなのだ。

「光の属性も必要だ。これからは魔獣を積極的に倒してレベルを上げ、属性を増やすか」

「レオン様、ヤーガイから魔法を使える領民を連れてきませんか? レオン様が一人で何もかもやるのは無理があります」

 だが、レオンは領民を危険に晒すようなことは出来ないと渋い顔をして居ると、話を聞いていた獣人が、

「おら達に掘らせテクレ。おら達は力が有る部族だ。今までは石材を運んでバカリだったが、これからは採掘をしても良いぞ」

 レオンは熊の部族にお願いすることにした。レオンが作った魔法鞄を与え、これに入れれば採掘や運搬が楽になるというと、喜んでいた。


 定期的にここへ来ているゴードンが、

「通貨を鋳造した方がいいのでは無いか? これからここを獣人の国としていくつもりならその方がいいと思うが。ヤーガイの造幣局から技術者を連れて来るか」

 レオンはゴードンに言われてハッとした。獣人の国だって?

「何を驚いている? レオンはそのつもりでいたのではないのか。これほど獣人達に慕われて、レオンが国王になるつもりではないのか?」

「僕はそんなことは考えていない。ただ、獣人達が住み易い環境を作っただけだ。通貨があれば流通が楽になると考えて……」

 そうだ、通貨は国にとって一番大事な物だ。これを作るとなれは、周りの国との交流まで考えねばならなくなる。

 そうなれば国としての体裁が必要となるのだった。

 通貨の価値は国の価値で決まる。国がしっかりしていれば国民の暮らしも楽になる。総てに繋がってくる話なのだ。

「レオン、今更魔力の汚染などと考えていては先へ進めなくなるぞ。どうせ数百年経たなければ結果が出ない物なのだろう? サラにも会ってやれ。このままにしておけないだろう?」

 そうなのだ。サラと話し合わねばならない。だが、まだ呪いの問題が片付いていないのだ。忙しさに紛れて、肝心要が手つかずになってしまった。

「ゴードンに以前、魔女をソッとしておけと言われたけど、呪いの問題は魔女に直接聞かなければ解らないんだ。どうか魔女と話をさせてくれ。頼む」

「……火山の魔女にか?」

「火山へは一度行ってみたんだが、金竜も魔女にも会えなかった。どこに居るのかさえ皆目見当が付かないんだ。ダンジョンにいる魔女でも良いが、僕は光魔法が使えない。ゴードンがいればダンジョンへいける」

「魔宝石を持っていってもか? 何かあったのだろうか。分った、直ぐに転移して一緒に火山へ行って見よう」

 ――何故かゴードンが火山へ行こうとしている。広い火山を探すよりダンジョンの方が確実だと思うのだが。

「待って、火山へ行くなら一応竜人達に許可を取らなければ」

 竜人にとって魔女や金竜は神のような存在だ。彼等には言って置いた方がいいだろう。

 獣人達と交流するようになって、レオンはその様な配慮をするようになっていた。

 金竜に会いに行く事を告げると、竜人が、

「長老に話しタホウが良い。金竜のことは長老がシッテイルハズダ」

 レオン達は案内人の後を付いていきながら、初めて行く竜人達の部落へ向かった。

 途中何度も魔獣に出くわし、その度に竜人は簡単に蹴散らしていく。レオン達も剣や魔法で倒したが、殆どは竜人が倒してしまった。

「凄いな、素手で遣っ付けるとは。恐れ入った」

 ゴードンもレオンも竜人の戦闘力に目を見張ることになった。

「野営は、魔の力があるとラクデス。スゴイです」

 レオンやゴードンの闇の結界は確かに野営にはとても役にたった。そして竜人は、レオン達が獣人と同じく毒や怪我にも耐性があることを訝しんだ。

「僕達はある意味君達と同じなんだ。女神の恩恵がある……と言うことかな」

「っ! そうでしたか。普通のニンゲントハ違うと言うことでスネ!」

 竜人の部落へは七日掛けて漸く着いた。本当に広い森だ。ここから火山まではまた何日もかかる、レオン達にとっては遠回りの道だ。街からならもう少し早く着くし、転移なら一瞬だ。一度来て仕舞えば、後は楽になる。


 竜人の部落には、立派な石造りの神殿があった。

神殿を中心に、木造の大きな家が取り囲む造だ。全部で三十戸の大きな屋敷に五百人くらいが住んでいるようだ。

「我々は獣人の中では少人数だ。ダガ、寿命が長い。部族の顔ぶれは滅多にカワラナイ」

 今一番個体数が多いのは狼獣人や鳥の獣人だそうだ。次に多いのは山羊や牛の獣人。その他は似たような物らしい。

「ウサギやネズミ獣人が減っていたのに、セントラルベイではフエテイルソウダ。不思議なことだ」

「多分毒が少ない食物を食べているせいではないかと思います」

「ソウカモ知れぬ。彼等は弱い獣人達ダカラ」

 長老ボナンはそう言うが、人間よりも余程強いのだ、彼等は。

 ボナンに金竜のことを聞いてみると、彼は

「金竜は寿命が尽きかけている。火山の火口付近からじっと動かなくなった。金竜の子がここから居なくなって暫く経つし、モウスグここには金竜が居なくナルだろう」

「金竜なら、ヤーガイに二頭居ます。多分ここからヤーガイへ行ったのは、金竜の子でしょう」

「ッ! なんと、そうであったか。ではいずれカエッテキテクレルダロウカ」

 それは無理だと思う。飛べない金竜は海を渡れないだろう。だが、どうやって金竜は北の大陸へ行った?

「金竜はどうやって海を渡れたのでしょう? 泳ぎが得意とかですか?」

「女神様は、一瞬で居場所を変える事が出来たそうだ。その力ではないだろうか?」

「転移が使えたと言うことですか! 闇だけではなかったのか。魔女が使えたのは」

「昔の女神様は偉大な力が有ったソウダ。後世になるほど力が弱まっていったと聞いた。番う相手に力がなければ、女神の力も衰えていくと言うコトダッタ」

 何故かゴードンは一点を見つめ、じっと聞くだけで、何も言わない。

 レオンは、気にせずには居られない。何時もと違うゴードンに戸惑いを隠せなかった。

「では、火山にいる魔女・・・・女神は如何しているか分かりますか?」

「火山に? 女神様は死に絶えたと金竜は言っていた。君達は勘違いをシテイナイダロウカ」

 突然ゴードンが立ち上がって、

「レオン! もう良い。火山へ行くぞ」

 そう言いだした。レオンは驚く。身体を小刻みに震わせ、顔を紅潮させたゴードン。こんなゴードンは見たことがなかった。

「……では長老、僕達は火山へ行って金竜の様子を見てきますが宜しいでしょうか?」

「ああ、私も一緒に行こう。金竜と話が出来るのは今のところ私だけだ」


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