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獣人の国  作者: チャロ吉
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34 新しい階層

  レオンが、簡単に出来上がってしまった魔剣をメグとテルセーロに渡していた。

「これを使って魔物を倒してみたくは無いか?」

「見た目よりも重いけど。今までの剣より少しだけ大きいか?」

 テルセーロは出来上がった剣を振り回している。

「お父様、これで魔物が倒せますか? 直ぐに折れてしまいそうです」

「その素材は、極めて丈夫だメグ。アダマンタイトだぞ」

 メグが持っている剣は細長い。細くて堅い。レイピアに似ている形状だが、それにしてしては短く小さい割りに重い。

「こんなに短いと、魔物の急所には届かないのでは?」

「これに魔力を通せば伸びるんだ。鋭いから魔物に刺さりやすい。魔物は表面が堅いだけで中は意外に柔なんだ。メグの力でも平気だぞ」

 テルセーロはレオンの話を聞き、

「僕の剣も伸びるんですか?」

「いや、君のは魔力器が成長して行くにつれて大きくなっていく。暫くは買い換えの必要は無くなるな。二人の剣の芯にオリハルコンが入っている。どうだ?」

「オリハルコンって! 凄いです。ありがとうございます!」

「サラ達は何処に行った? 折角魔剣を使って見せてやろうと思ったのに」

 レオンは自分用に作ったミスリルの魔剣を腰に差していた。火魔法を施した魔剣だった。

「リック達にも作ってやろうとしたのに、本人がいなければ、希望が聞けないじゃないか」

 剣を作る魔法陣は優れものだった。魔法陣の一部を書き換え、希望の形状を書き込む。素材を魔法陣に置き、魔宝石を加えれば出来上がってしまうと言う凄い魔法陣だ。

 ただ、魔宝石を十個も消費する魔法陣だ。考えられないくらい贅沢な剣だ。祭事に使っていたのもうなずける。

 余りにも高価になって仕舞う為、買える人は殆どいないだろう。だが、これは売り物にはしない。数本作るだけだ。自分達だけの物なら問題は無いだろう。

「お母様はリックお兄様のところです。ダンジョンアタックをすると言っていました」

「ゴードンもか?」

「はい。父様も、新しい階層を見に」


 一日経っても彼等はダンジョンから帰ってこなかった。

「全く! サラめ! 羽を伸ばしすぎだ」

「父上、僕をダンジョンへ連れて行ってください」

「ああ良いぞ。メグ達も一緒に行くか?」

 だが、メグはまだ行きたくないという。テルセーロも、

「剣に慣れてからにします。少し重くなったので、使い熟すまでは無理です」

 レオンは、休養が終わったダルと二人でダンジョンへ行くことにした。

「リックは、僕には休めって言って、自分だけ狡いよ」

「まあそうだな」

 ――リックは、またダンジョンに捕らわれてしまったのだろうか? サラ達が付いているから、それは無いと思いたい。新しい階層へ行けるのはリックだけだ。一体どうすれば良い? いくら何でも遅すぎだ。不測の自体があったのかも知れない。

 レオンは暗い予想に気持ちがざわめき始めた。

 第三の部屋の前に転移しようとしたが何故か出来ない。仕方なく洞窟の入り口に転移した。入り口からは続続と獣人の冒険者達が出てくる。

「どうした?」

「ダンジョンの様子が変なんデス、レオパルド王」

「大きな地鳴りがしたんでサア、オッカナクなって出てきました」

 そう口々に言って獣人達は小舟に乗って洞窟から出ていった。

――地鳴りがした? サラ達が何かしたのか?

 レオンは、周りの雰囲気に違和感を覚えた。

「父上、何だか魔力が薄くなっていませんか?」

 ダルに言われてやっと気がついた。確かに以前来た時と違い魔力が薄くなっている。

「兎に角、先に進もう。サラ達は中にいるはずだ」

「はい!」

「ダル、お前にこの剣をやる。私が雷撃を撃ったらこれで倒せ」

「これはっ! ミスリルの剣ですね」

「ああ、火魔法を付与している。魔力を少し流せば火槍が飛び出す。多く流せば豪炎になるはずだ」

「……凄い」

 ダルはワクワクしながら第一の部屋に入っていったが、いつまで経っても魔物は現れなかった。

「どうなっている?」

「母上達が何かしたのでしょうか?」

「サラが言っていたが、ダンジョンコアを壊せば、ダンジョンが消えると言うことだ。サラが付いていてその様なことはしないだろうが」

「ダンジョンが消えればどうなるのですか?」

「文字通り消えて仕舞うという。ここは魔物がいなくなっているだけだ。大丈夫だろう」

 第二へ通じる通路にも部屋にも魔物は居ない。長時間、只管階層を抜け、漸く第五の部屋の入り口に辿り着いた。

「入るぞ、ダル」「はい……」


 そこは、砂浜だった。遠くまで見渡せる大海原。島影は無い。

 寄せては返す波が、ザザーッザザーッっと空しく音を立てているだけだった。

「ここはダンジョンの中ですか? 普通の海辺に見えます」

「ここにも魔物がいない。サラ達は何処へ……海を渡った?」

「まさか、そんなこと出来ないよ船なんかないもの」

「船があったのかも知れない。船に乗っていったのか? だが何故帰ってこないのだ? リックが一度試したように、転移で戻ることが出来なかったのか?」

「父上、リック兄や母上に何かあったのでしょうか?」

「……」

 レオンもダンジョンへ転移出来なかったのだ。若しかすると、ダンジョンが変わったせいで転移出来なかったのだろうか。

 その理論が正しいなら、今なら転移で帰れるはずだが、万が一また転移出来なかったら、更に時間が掛かってしまう。暫くここで様子を見た方が良い。

「歩いて帰ることは出来そうだ。階層の出口は開いているんだ。暫くここで様子を見よう」

 せめて魔物でも居れば、倒して先に進めるかも知れないのに。

 レオン達は何も無い砂浜に留まり、様子を見るしかなかった。

 砂を掘ってみたり、海の中に入ってみたりもしたが、生物の痕跡すらも無かった。

 幸い収納には少し食料が入っていた。これが無ければどうしようも無かっただろう。

 朝目覚めると、空気が変わっている。魔力が濃くなっているのだ。

「ダル! 起きろ、魔物がいるかも知れない」

「……え?」

 寝床にしていた木陰から飛び起きたレオン達が見た物は、海賊船? 幽霊船? ボロボロの一本マストのスループ船だった。

 海賊船は真っ直ぐこちらに向かっている。無風の海上を滑るように向かってくる。帆は破れていて風も無いのに船は問題なく海を走っているのは、やはり魔物か!

「何が出てくるかも分からない。ダル、気を引き締めろ!」

「はい!」

 ダルは昨日父から受取った剣に手を添え、仁王立ちで船を睨み付けている。

 レオンは、雷撃を何時でも打てるように準備していた。

  船から一体飛び上がって、こちらに向かってくる。雷撃を放とうとした瞬間、

「レオーーーン!」

「ッサラ!」

 サラが岸に着くとレオンは、厳しく問い詰めた。

「一体何をのんきにしているんだ! 皆心配しているんだぞ」

「ああ、ごめんなさい、でも、急いでいるの、兎に角、船に一緒に来て頂戴!」

 幽霊船に乗船しすると、そこにゴードンとリックがいた。

「レオン、私が悪いのだ」

 リックは何故か人魚の姿になって、サラの闇の投網に絡め取られている。

「リック、大丈夫か?」

「……」

「ああ、それはリックでは無い。サラが言うには、元はダンジョンコアだそうだ」

「……! リックはどうした」

「船室にいる」

 船長室と思われる汚い部屋に入ると、丸い光に包まれたリックがいた。

「どうなっているんだ。リック!」

 リックは眠って居るように見えた。然も今にも消えそうなくらい薄く、はかなげに見える。

「で? これはどう言うことだゴードン」


 ゴードン達は新しい階層に入って、魔物を倒しまくったそうだ。通路には魚人が溢れて、埒があかない。影渡りで通路を抜け、やっと、第四層に辿り着いたと言うことだった。

 第四層は海辺だ。そこには海竜がいたそうだ。

 海竜を難なく倒し、海に浮かんでいた幽霊船に入ると、そこにダンジョンコアを見付けた。

「リックが突然引き寄せられるように近づいて、コアに手を付けた途端、コアがリックになって、リックがコアに閉じ込められてしまったのだ」

「で、何故コアは人魚の姿なんだ?」

「それはよく分からん。コアが海に逃げだそうとしたのでサラが捕まえたところだったんだ。転移でリックを連れて行こうにも、ここから出してリックに影響があるかも知れない」

「私が一人で転移して、レオンにこの事を知らせようとしていた矢先、コアが逃げだそうとしたのよ。甲板で貴方がここにいるのに気が付いた。で、今があると言う訳よ」

 長い話が終わり、レオンは

「リックの形を真似たと言うことか? コアは森の卵?」

「ッ! そうかもしれないな。だが、こいつに何を聞いても答えないんだ」

 ゴードンはそう言いながら、リックに似た人魚を足で小突いた。

「ッ! ギュウーーー!」

「お、声は出せるじゃ無いかこいつ。何とか言え!」

「くっそーっ! 儂は、海の卵だ。海の精霊様だぞ! 足で小突くとは、けしからん」

「「「!!!」」」

「精霊だって? 海の卵とはどう言うことだ。何故ダンジョンの中にいる?」

「ダンジョン? ここは儂の家だ。魔力を集め、ここに閉じ込めて陸の魔力を持つ生きものを呼び寄せて、魔力を食う。それが儂の楽しみだ。貴様らは儂のおやつだぞ。食い物のくせに生意気だ! イッ痛!」

 海の卵はまたゴードンに小突かれて、苦しげに呻いた。


 レオンは王の棟へ転移した。

「良かった。転移は出来る」

 レイアを呼び出し、森の卵の生態を聞き出そうとした。

――森と海では違うかも知れないが、兎に角聞いて見よう。

「海の卵? そんなのもいたノカ。おいらには分からないな」

「君ら卵は、人間の魔力を食うのか?」

「……偶にはあるかもな。ダケドおいらはソンナことはしないぞ……本当だぞ」

「そうか、するのか」

「……」

「メグの魔力は食べていないというのか?」

「初めだけ、チョットだけ……だ」

「まあ、今はしていないと言うことだな。海の卵は、リックを光の中に閉じ込めた。お前はそんなことは出来ないと言うことか?」

「光の球……それは入れ替わりだな。そいつは力が有る古代からの卵だろう。昔はおいらも出来たが、今は出来なくなった」

「なぜ?」

「おいらを追い出そうとした化け物がこの地へ来て、戦いがあった。魔力を大量に喰らうおいらとそいつらは、場所取りで争うはめになった。その戦いに、おいらは負けて、分裂したんだ。小さくなって八個に別れてしまった」

「一体誰と戦ったんだ? そんな危険な生きものがまだこの地にいるというのか?」

「一つ目の化け物だ」






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