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獣人の国  作者: チャロ吉
32/37

31 ゴードンの息子

 サラは、巫女の屋敷で、闇の収斂をした。

 一ヶ月泊まり込んで、毎日、魔の霧、湖から湧き出る魔力を吸収した結果、大きな魔宝石が一万個以上出来上がった。

「如何かしら、湖の魔力はかなり薄くなったのではなくて?」

「水を飲んでみましたが、大丈夫でした。苦みがナクナリマシタ」

 護衛達が水を飲んで試したようだ。この島に住民を呼んで耕作地を開墾して貰うため下調べをして貰っている。

 魔道具に結界の魔法を掛けて、湖の周りには魔獣がいなくなってきた。

「この街は大きくはならないでしょう。島に出来る作物で十分ではないかしら」

「さあ、それはどうでショウ。近隣にあった獣人の集落から、移住してきてイマスが、ここの水が綺麗で、魔獣の危険も無いと知られれば、そのうちに人間の集落からも来そうです」

 セントラルベイのことはニーノの街でも知られている。人間と獣人が力を合わせて発展した街なのだ。農村に住む人間達にも噂が届いているようだった。

 獣人が奴隷としてではなく普通に人間と暮らしているという事に、違和感を持たなく成りつつあるようだ。

 人間の間に獣人が生れても、始末したり、奴隷に売ることがなくなってきたそうだ。良い方向へ進んでいる。

「湖の水が豊富だから、そうなっても大丈夫でしょう。自分達で開墾すれば良いだけだもの」

 ここはセントラルベイから離れて居るし、交通の便も悪い。ニーノの街に行くのも時間が掛かる。

 交流するには獣人達なら森を抜けていけるので、大丈夫だろうが、特産となる物が無い。この街に、これ以上の発展は見込めないだろう。

 以前ここには、魔導師達が住んでいた。彼等は巫女が作る魔宝石を使い魔道具の制作や、魔法陣を作って売っていたのだそうだ。湖から湧き出す魔力があるお陰で発展していた、魔導師のための町なのだ。

 修理が終わった魔導師の塔には、今竜人が住んでいる。塔は、神殿となったようだ。

 巫女の子どもが大きくなればここに住み着くようになる。それまではサラ達が面倒を見ようとレオンと話し合った。

「これ以上巫女の住まいは必要無い。巫女が増えすぎれば、また同じような事が起こりかねない」

「そうね、当分はこれでいいような気がする。ゴードンは今どうしているのかしら」

「子どもが大きくなってきたから鍛えるためにダンジョンへ来るそうだ。そのうちに会えるはずだ」

「男の子だけ?」

「ああ、女の子は巫女が沼地へ連れて行った。一緒にしておくと男の子をいじめて仕舞うそうだ。巫女の種属にとっては異質なんだろうな。僕の仮説は間違っていたのかも知れない」

「仮説?」

「巫女は本来、男の巫女もいたという仮説だ。だが、男の子は突然変異だったらしい。巫女に比べて魔力も少ないと言っていた。ゴードンは自分の子として育てていくと言っている」

「え? ゴードンの子なのでしょう?」

「色々事情がある……君が知るようなことではない」

「事情? まあ、良いわ。この間ルーナに会ってきたの。巫女も元気そうだった。ウエストベイも、それなりに順調だったわ」


 レオンの魔道具制作も終わり、雑務仕事を任せても大丈夫なくらい側近達が成長してきた。

 この国が出来て以来、レオンやサラにやっと自由な時間が取れるようになったのだ。

 今まで子ども達に手を掛けられなかったレオンだが、これからはゆっくり子ども達を見てやれる。

 まずは子ども達のレベル上げの介添えだ。リックには手伝ってやれたが、ダルは殆どパルメザール伯爵に世話になっていたし、メグには気がかりな問題がある。


「え? ダンジョンへ私を……」

 メグは、サラにダンジョンへ連れて行くと言われ戸惑っていた。メグはダンジョンへは行きたくなかった。話を聞いただけで怖くなってしまう。

「どうしたの? 行きたくないの、メグ」

「……怖くて、大きな魔物がいると聞いたし」

「メグ、おいらが付いているから大丈夫さ、行コウヨ。おいらは行きタイ!」

「メグ、貴方の魔力器は、ダンジョンの魔物を倒せば成長出来ると思う。頑張ってみない?」

「……分かった。でも、お母様も一緒なのよね」

「ええ、レオンも一緒よ。初めの階層と次の階層だけだから、危険は無いわ。結界もちゃんと張っておくから」

 ダンジョンへ行くその数日前、ゴードンが息子を連れて転移してきた。

「何だ、ダンジョンへ入るのか。だったら私達も行こう」

 何だか大所帯で、ダンジョンへ行くことになって仕舞った。

 ダルとリックは別行動だが、サラにレオン、メグとライアそしてゴードン親子と六人のパーティーになった。

 ゴードンの子どもは生れてまだ三年くらい? だがメグと同じくらいの背丈があった。額に鉢金を締めている。

 身体が年齢の割に大きいことを除けば普通の人間に見える。

「ぼ、僕の名は……テルセーロだ。テセロと呼ばれている」

「私はメグライア、この子はライアよ。宜しくテセロ!」

「お前、変わった形だな、人間……なのか?」

「……お前だってヘンテコだ。僕の事はほっとけ」

 そう言って、テセロは額を押さえてゴードンの後ろに隠れてしまった。

 あまり、人付き合いが良く無さそうな子どもだ。何時もゴードンの後ろにくっ付いて離れない。髪色は灰色だった。ボサボサの灰色髪に目は黒い。顔には表情が少なく何時も影に隠れようとしているようだ。


 ゴードンの息子をデパーズ老に鑑定を掛けて貰うと、

「おや? 小さな魔力器が三つある」

「そうか、やはりな。突然変異だというのは本当の事らしい。だが、鍛えれば面白くなりそうではないか。属性はどうなのだ?」

「属性は闇と、後は殆ど無色ですな。全属性の魔力器が二つに闇が一つと言うことでしょうな。只、とても小さい魔力器です」

「そうか、問題は無いな。これから鍛えていけば良い」

 ゴードンは凄く可愛がっている。初めての子どもなのだから当たり前だろうが、三人いる子のうち、どれが自分の子か分からないと言っている。巫女と番った騎士や船員、ゴードンの誰とも似ていない。少しは似るはずなのでは無いのだろうか? 子どもは三人とも巫女に似ているという。

 巫女の生態は謎だ。番う相手によって、排卵の個数が決まるという。だから、総てが一人の子と言うこともあり得るし、違うこともある。沼地の巫女は、四人と番ったが、四個生れるはずが二個だけ生れ、そのうち一つが双子として生れた。三人ともゴードンの子どもである可能性はあるが、そうでは無い可能性もあるのだ。

 ゴードンはそれでもテセロを、自分の後継者にすると決めたようだった。サラには巫女の生態は秘密にしている。何となく言い辛い事なのだ。


「ライア、は森の卵? 何だそれは。彼奴は、サラにそっくりではないか」

「ライアに聞いたんだが、本当はメグに似た形になる筈だったのだが、メグがサラに変身しようとしてああなってしまったらしい」

「メグはそれ以降、変身はしていない。出来ないというのだ」

「変身が出来ないのは、ライアのせいでは無いのか?」

 ゴードンは、サラに似たライアを不審な者のように考えているようだった。

「古代からこの地に住む精霊のような者らしい。地の中に住み、偶に地上に出てくるそうだ。何時もは魔獣や、動物の形を真似るそうだ」

「不思議な生きもの。まるで巫女のようだな」

「……そうか? それは考えたことが無かったが、そう言えば、巫女も初めは卵の形態だったと言っていたな。似た系統なのかも知れないな」

「どちらも強い魔力を欲しがるしな。大本は同じかも知れない」

「テセロは、魔力が薄い街にいても、苦しくないようだが」

「そうだ、殆ど人と変わらない。目が三つあると言うこと以外はな」

「まあ、王族の呪いよりも目立たない。額を隠して居れば問題は無いだろうが。ヤーガイへ連れて行くのか?」

「それは、まだ決めかねている。もう少し育ってから決めようと考えている。本人がどうしたいかによるな」

 テセロは、ヤーガイへ行っても、この国でも、浮いた存在では無いだろうか? この世の中に同じ存在がいないのだ。

 同族からも爪弾きにされるというのは、なんと悲しい生い立ちだろう。

 次の日から、六人でダンジョンアタックをした。

 初めの部屋は問題ない。海賊はサラが倒し、魚人はライアが倒した。

 通路では、レオンが雷撃で魔魚を痺れさせ、三人にそれぞれ宛がった。皆で、10匹程倒している間に、テセロが苦しみだした。魔力器が硬化し始めたのだ。

「光を使え、テセロ!」

「ヒール!」

「良かったな光が増えたぞテセロ」

「……ウン、父上、僕でも出来た。凄く嬉しい!」

 何時も姉妹達に邪険にされていたテセロは、人との関わりを恐れて、ゴードン以外には懐かない。だが、ここでは皆と親しくしていて、漸く心を開くようになった。余りにも人に懐かなかったテセロだったが、ここに来て変わったようだ。ゴードンは胸をなで下ろした。

「良いなぁテセロ、私にはヤッパリ無理なのかな」

「そんなことは無いわ、メグ。少しずつメグにも魔力が吸収している筈よ。次、頑張りましょう」

「そうだぞメグ、おいらなんかいくらやっても同じだ」

 何万年も変わらなかったライアだ。この先も成長はしないのだろう。

 魔魚を倒し終わり、二番目の部屋へ入っていく。

「ここの魔物はメグにやらせてあげて」

「うん、メグも頑張れ」

 テセロがそう言って、メグをはげましているのを見てゴードンは微笑む。

 蟹の魔物が出てきた。

「弱体化!」

 魔物に魔法を放った直後、メグが剣で蟹の足の付け根に切り込む。

「どうしたメグ、教えただろう。蟹の腹か、眉間を狙え、そこが弱点だ」

 レオンが叫ぶが、

「分かっているけど、お母様が、蟹を食べたいって言ったから……」

「え? サラ……」

「あら、だって美味しそうなんですもの。足を切り落として収納に治めてしまえば消えないのでしょう? ゴードン」

「……まあ、そうだが、サラだものな。良し! 皆で蟹の足を切り取ってしまおう」

 足は八本しかない、これは蟹ではなくザリガニの仲間か?

皆で足を取り除き、動けなくなった蟹に何度も剣を突き刺し、やっと止めを刺す事が出来たメグだった。

 メグの魔力器が硬化し、他の属性を試したがだめだった。

 ――やっぱりダメなのね。支援魔法しか私は使えない。

「魔力付与!」

 メグは今まで使えなかった、支援の付与魔法を獲得する事にした。

 その後も何度か、二つ目の部屋を廻ったがメグは硬化しない。

 テセロは、火の属性を増やしてその日は終わることにした。



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