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獣人の国  作者: チャロ吉
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28 魔導師の亡霊 スラー

 この魔導師の亡霊は、スラーという名前だった。

 幼い頃からここで修行してやっと魔導師になって、ここで保存の魔法陣を守る仕事をしていたのだという。

「魔法陣? それはどういう物だ」

 スラーが足下を見る。それに釣られてレオンも見ると、部屋の中央床に大きな丸い絵が描かれているのが分かった。スラーはその中央に立っているのだ。

【魔法陣を知らないのか? 君は魔導師なのだろう。魔法陣が無ければ魔法は使えないはずだ】

「いや、私達は魔力器がありそれで魔法を使うのだ」

【それは、古い魔法のやり方では無かったかな……過去の魔法使いがそうだった。金が無い狩人達や、兵士は確かその方法を使っていたようだが。それでは一つしか魔法が使えない。威力も小さいだろう】

「そうか、スラーの時代はそう言う認識だったのか。私達は魔力器を成長させることが出来る。そうして威力が上がっていく。危険だが、確実な方法だ」

【そうなのか、随分違いがあるな。私達魔導師は、認められればここへ来ることが出来る。ここで学び、知識を詰め込んで魔法陣を作り上げ、それに哲学者の石を使って魔法を使うのだ。魔法陣と哲学者の石があれば、魔力がないものにも魔法が使える。哲学者の石とは、巫女が作る石だ。どんどん魔法陣が売れた。魔導師はこの国では強大な権力を手にしていたのだ。だが、そのせいで地力が枯渇して仕舞った。巫女のせいにされ魔女と蔑まれて、彼女達は迫害されて死んでいったのだ】

 魔法陣を使う魔法には、魔宝石が不可欠だという。魔法陣全盛の時代だ。あっという間に地力が枯渇したのだ。

「君はここの保存の魔法陣に捕らわれたのか」

【ああ、石がなくなり私も死んだのだが、何故かここにいることになった。もう疲れてしまった、消えて仕舞いたいのに……】

「君の魂で魔法陣が今も活性化しているのでは無いのか? 君はきっとこの仕事に心血を注いでいたのだろう。だから取り込まれているのでは……?」

 もう少し詳しい話を聞きたかったが、疲れた顔をして居るスラーが可哀想になった。

 レオンは特大の魔宝石を何個か取りだし、大きな魔法陣の中央まで行き、スラーの足下にコトンコトンと置いた。二つ置いただけなのに、魔法陣が輝き、魔力が十分行き渡ったのが感じられた。すると魔導師スラーは、その場からスーッと消えて仕舞った。

「ゆっくり疲れを癒やして、また生まれ変わば良いさ。スラー」

 残った魔宝石をしまい、サラが上っていった最上階を目指した。


「魔導師は?」

「消えた。魔宝石を、魔法陣に置いたら、くびきから解放されたようだ」

「そう、良かったわ。可哀想だったもの。ずっと独りぼっちで、話をしたがっていた。何か聞くことが出来た?」

「今までの予想通りの答えだった。只、魔法陣という新たな情報が得られたが、それ以上は辞めにした。彼は疲れて居るようだったから」

「……ねえ、ここの書籍総て持って行ってもいいわよね」

「このまま置いておいても、誰にも活用できないだろう。持っていこう」

 他にも魔導師の塔があったが崩壊が進んでいて、中の書籍は全部ダメになっているだろう。レオン達は遺跡を一時去ることにした。


 メグライアの属性は、光魔法に近いらしい。だが、光とはやはり違うようだ。書籍には支援魔法と載っていた。

「強化と弱体化?」

「強化は、力を増幅させて、弱体化は、力を奪うと言うのが基本らしい。それが出来れば、またその派生の魔法が使えるようになるそうだ」

「何だか、ゲームのバフとデバフみたいね」

 サラが、また訳の分からないことを言いだした。

「……そうか? ゲームがなんなのか分からないが、君の言い方の方が簡潔だな。バフとデバフか」

「お父様、では、私は魔法で誰かを支援するしか出来ないの?」

「そう言うことだろう。だが、メグ、君がパーティーにいれば、そのチームは力が強くなれるんだ。凄いことだぞ」

「そう……支援魔法が使えるように勉強します」

 メグにとっては不満だろう。自分自身の力では戦えない魔法なのだから。だが、極めていけば何か新しい力が見付かるはずだ。

「メグ、デバフが使えれば、弱体化した魔獣を自分で倒せるようになれるわ。それに自分にバフを掛ければ強くなれる。他人だけではないはずよ」

 サラから助言を得られてメグはやる気が出てきたようだ。

 メグには古代文字で書かれた書籍は難しいため、レオンが分かりやすく翻訳した本を作り、与えた。

「ライアの重力魔法も記載があった。だが、滅多にいない属性らしいから詳しくは載っていない。これからライアから聞いていくことになるな」

「他には? 私達の知らない属性はあった?」

「滅亡した種が使っていたと言う、木魔法が載っていた。木や草を扱う魔法らしい。人間にはその属性はいないと書いてあった」

「滅亡した種がいたのね。何処の世界でもあるのね」

「君の世界にも滅亡した種がいたのか?」

「ええ、沢山いた。今も絶滅しそうな種がいる。古代には恐竜がいたの。化石が残っていた。金竜よりも大きなものよ」

「君の世界にも竜がいたのか。もしかして古代には君の世界にも魔法があったのでは無いか?」

「そう言う伝説もある。錬金術からの派生が科学だったらしい」

「魔力が枯渇したのか? 君の世界は」

「それはよく分からないけど、資源は枯渇しかかって居るかもね」

「資源か……魔宝石の生成はバランスを考えてやらなければ、また同じ事の繰り返しになるな」

「そうね」


 それからレオンは書斎に籠もるようになった。

 レオンの代わりにサラが執務室で、皆の要望や細々したことをする。

「レオパルド王はデパーズ老とナニヲされているのデスか?」

「見付かった書籍を読んでいるようよ。そっとしておいてあげましょう。そろそろあなた方に仕事を分散しなければね。レオンにばかり頼っていられないわ」

「……はい」

 執務室には人間も獣人もいるが、今のところ任せられる人材は育っていない。

「ゴードンがいてくれたら私達にも時間が出来るのに。彼はいつまで竜火山に籠もっているのかしら」

 レオンとは偶にやりとりしているようだが、詳しい事は、サラには話してくれないのだ。

 サラは、もう一度遺跡へ行きたいと考えていた。ここにいる彼等に早く実務を覚えて貰いたい。

 この国は安定してきた。このまま伸びていくだろう。

「あの遺跡の場所を何とかしたい。小島にまず巫女の家を立てておけば良いかしら」

「建築家を派遣しまショウカ?」

「そうしてくれる? 資材は周りに沢山あるからそれを使えば良いわ」

 そう指示を出しているところへ、ダルタニアンがバタバタと乱入してきた。

「母上! パルが!」

「パルが、どうしたの?」

「ヤーガイへ帰るって言うんだ。何とか引き留めて」

「ダル、伯爵にはご家族がいるのよ。帰りたいのには訳があるの。帰してあげましょう」

「でも、僕の相棒がいなくなってしまう」

「自分勝手でしょう、ダル。他にもパーティーを組める相手がいるはずよ」

「パルが良い……パルと一緒にいたい」

 ――本当に困った子。まるでパルを親代わりに思っている。私達が忙しくて手が回らないのがいけないのだわ。

 サラは、パルから相談されていたのだ。家族を蔑ろにしている自分が許せなくなったと思い悩んでいたのだ。いっそのこと帰ったら、と言ってやったのだ。

 パルは沢山のダンジョン素材も手に入れた。それを土産に持っていけば喜ばれるだろう。今なら大手を振って家族に会えるはずだ。

「ダル、だったらメグとライアを鍛えてくれない? 私はこの通り忙しくて面倒を見られないのよ。貴方が頼りなの。どうかしら?」

「え、良いけど。メグかぁ。魔法使えるようになったのかな」

「ええ、とっても素晴らしい魔法よ。見て見れば分かるわ」

「……」

「パルはもうお孫さんに返してあげましょう」

「分かったよ……」


 パルメザール・ゴルドーが商船に乗ってヤーガイへ帰国したその次の日から、ダルは塞ぎ込んでいた。

 何となく馬が合うというのはあるものだ。例え年齢に隔たりがあってもダルにとっては親友なのだ。

 だが、パルには大事な家族がいるのだ、ともう一度思い直し何とか納得した。

「今まで世話になったな。君のお陰で魔法のレベルも上がった。孫に自慢できるよ。ダルも元気で頑張れよ」

 ――パルはそう言っていた。もう帰ってこないのか。

 ダルは、気持ちを切り替えて、今日からメグ達を鍛えることにした。

 ダルがメグの魔法を見るのは今日が初めてだ。何時もダンジョンアタックしていて、殆ど会っていなかったからだ。

「メグ、ライア。これから森へ行って魔法の練習を見てやる。付いてこい」

「なんかオマエ、偉そうな奴だな」

「ライア、そんなことを言うと教えてやらないぞ!」

「オマエに聞かなくても、魔法は得意だ。勝手に森へ一人で行け!」

「クソ、生意気な。メグ! こいつの口の利き方の教育をどうにかしろ!」

「ダル兄様、口の利き方はお互い様よ。ライアももう少し優しく言わなければダメよ」

 ライアはこの頃サラと同じくらい大きくなった。メグとは友達だが、端から見れば年上に見える。ライアによればもう成長は止ったと言うが、食事は相変わらず大量に取っている。

 ダルとも似たような身長なので、全く物怖じしないライアだ。只、ライアは何故かサラと、レオンにだけは頭が上がらないようだ。寧ろおびえて近づかないようにしている。

「ライア、そんなに自信があるなら、魔法で勝負だ。僕に勝ったらオマエがリーダーになっても良いぞ」

「リーダー? 何のリーダーだ」

「馬鹿だな。パーティーのリーダーに決まっているだろう」

「オマエとパーティーを組むといつ言った? おいらはメグと二人で組む。メグがリーダーだ。分かったか!」

「……く」

「ライア、お兄様の魔法を見て見たいと思わない? きっと新しい発見があるわ」

「そうか? じゃあ、我慢するか。オイ、ダル、仕方が無いから今だけ組んでやる。有り難く思え」

 ダルは怒りで顔が真っ赤になった。

――くそ! 母上に頼まれなければこんな奴の面倒なんか見ないのに。顔が母上そっくりなのもやりにくい。

 ギクシャクした雰囲気のまま、森の浅い場所に来た。

 ここの魔獣は弱いから、メグ達にも危険は及ばないだろうという配慮だ。だが、

「こんな処でなにをする? 何時もはメグとモット深い処までイッテイルゾ」

「つべこべ言っていないで魔法を使ってみろよ。今日はオマエ達の実力を見るだけだ」

「ソウカ、よく見ておけ!」

 ライアはそう言ってダルに魔法を掛けた。

 ダルは身体がみるみる重くなり動けなくなってしまった。

「ライア! 僕になにをした。魔法を解け」

 ライアが魔法を解くと前屈みのままダルは地面に倒れてしまった。身体を動かそうとしていたその反動のまま倒れたので凄いダメージを喰らってしまった。顔から倒れたので鼻を強か打ってしまったのだ。

「いってぇーー! 何をするんだ」

「は、は、は。間抜けな顔! 鼻血が出てる」

 メグはそれを見て慌てている。

「ダル兄様、大丈夫?」「たいしたことない……」

「ダル、よく見ておけ!」

 ライアはそう言って今度は凄い高さまで飛び上がる。ぴょんぴょんと縦横無尽に跳ね回り、そして近くの木に足蹴りを喰らわせると、太い木が根元から折れてしまった。

「……凄いな、これは魔法なのか?」

「ああ、重力を操る魔法だ。重くしたり軽くしたり出来る」

「確かに、大した物だ。で、メグの魔法は?」

「私のは支援魔法よ。お兄様の魔法の威力を上げることが出来る。後は魔獣の力を弱くすることも出来るの。だから私でも魔獣を倒せるようになったのよ」

「魔獣をどれだけ倒した?」

「沢山、でも魔力器が中々硬化しないの。デパーズ老は、魔力の変換が一つに特化してしまっていると言っていた。しかも、魔力を吸収しにくい特異体質なのではと。だから私は魔力は多いけど属性は増えないし、これ以上魔力器は成長しないみたい」

「いや、吸収しにくいだけで吸収はしているんだろう? 一杯魔獣を倒せば良いだけだ」

「下手に希望を持たせルナ。メグのは滅多に無い魔法だ。ソレダケあれば十分さ。他の魔法なんか必要無いんだ。今度はお前の魔法を見せてミロ!」

 ダルは一通りの魔法を放ってみせる。

「お前、中々やるな。だが、マダ威力が弱い、修行が足りないナ!」

「……そうか」

 この二人の面倒を見る必要は無いのでは、と考えるダルだった。






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