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獣人の国  作者: チャロ吉
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27 メグの魔法

 ライアは凄い大食漢だった。大きなパンの塊を、瞬く間に平らげてしまう。

 こんなに小さな身体の何処へ消えていくのか。まだ物足りなそうにしているので、従者のポーにもっと持ってきて貰った。大きな生ハムや木の実を平らげて、やっとお腹いっぱいになったようだ。

「おいらは眠くなった、寝る」

 そう言って、部屋の隅へ行ってコロンと寝てしまった。メグはそっと抱き上げて、ベッドに寝かせてやる。

「何だか少し大きくなっている」

 不思議な森の生きものをじっと観察していると、そこへレオンがやってきた。

「ほほう、これがそうか。確かにサラにそっくりだ。こんなに小さいとは」

「これから大きくなるのだそうです。これでも、さっきより少し大きくなっているんです。凄い量を食べたんですよ。この身体の何処に入ったのか、不思議で……」

「もしかしてメグ。この間から随分食欲があったのは、こいつに栄養を取られていたのではないか?」

「ッ!そうかも、今はお腹が空いていません」

「うーん、確かにやっかいな生きものだな。言葉が話せるというのは本当か?」

「ええ、随分流暢に喋れます。まるで人間と同じです」

「まあ、身体に影響が無くて何よりだ。だが、この生きものの力は、なんだろうな。メグ、分かったら教えて欲しい」

「はい。お父様、ライアはこの大陸と同じ年齢なんですって。一体どう言う生きものなのかしら」

「始めて見るからな、文献にも載っていなかった。だが、メグはこれで寂しくなくなったのでは無いか?」

「そうですね、何時でも一緒にいられるお友達が出来ました」

「そうか、良かったな」


 ライアは毎日六食は食べる。それも大量に。そのせいか、めきめき大きくなり一週間でメグと同じ身長に成長した。

「ライア、この洋服を着てみて。きっと似合うわ」

「こんなぴらぴらしたものは嫌だ。動きにくいぞ。男の服を寄越せ」

「ライアは女の子だものダメよ」

 いくら言っても聞かないので、仕方なくダルが昔着ていた服を母に頼んで、母の時空間収納から出して貰った。

「あら、よく似合うわ。取って置いておいて良かった」

 サラは、この分ではまだ大きくなりそうだと思い、自分が着ていた冒険者用の服やダルの服を収納からだし、メグの部屋に用意しておくことにした。

 周りには、森の卵だと知られている。獣人達の間にまたたくまに噂が広がったのだ。その為、街を二人で歩くと皆に声を掛けられる。

「精霊さま! これを食べてくだせぇ」

「これをドウゾ」

 と言う具合に大人気だ。薄紫の髪の毛は高貴な色なのだという。獣人にとって聖獣や精霊は、女神と同じくらい伝説になっているようだ。

 ライアは居心地悪そうにしているが。

 顔がサラに似ているため、この頃はサラまで神格化され始める始末だ。

 剣術の稽古も一緒にする。ライアは余り剣術は得意では無い。だからメグも気が楽だ。

「ライアが、得意なものは何?」

「食うことかな。後は魔法」

「え! 魔法が使えるの?」

「ああ、おいらの魔法は重力魔法だ。メグが戦う時は助けてやれるぞ」

「……戦うことは無いと思うけど」

「何故? 人間は獣を餌にしているんだろう。戦って倒さないと食えないぞ」

「他にも食べるものあるし、態々狩りに行かなくても、誰かが取ってきてくれるから良いの!」

「そうか?」

「魔法はどうやったら使えるようになるのかな……」

「メグの魔法は変わっているからな」

「ッ! 私の属性が分かるの?」

「ああ? 自分の事が分からないのか? やっぱり変わっているなメグは」

「私は? 何の属性? 教えて」

「属性というのは知らないが、メグのは他の奴を手助けすることが出来る魔法だ。ずっと昔、メグと同じ色の魔力の人間がいたんだ。そいつは何時も皆の後ろにいた」

「人の役に立つ魔法……何だか弱そうな魔法ね」


 レオンにメグはその事を話した。

「重力魔法? そういうのがあるのか。で、メグの属性は人を助けられるというのか」

「どうやれば良いか全く分からないの。教科書にも載っていない属性だもの」

「初めて聞くものばかりだものな。何処を調べても載っていない。ライアが言っていた昔の人間というのは、魔法が使える人間が居た時代のことだろうな。ここに残っている文献を探してみよう」

 だが、調べても見付からない。困ったレオンは

「サラ、君が見付けたという北の森の遺跡へ行ってみようと思う」

「書物はもう劣化していると思うのだけど」

「獣人王カブのことがある。彼が付けていた隷属の首輪は遺跡で見付かったと言っていた。多分、状態保存が掛かった宝物庫がある遺跡なのでは無いかと思う。期待できそうじゃ無いか? 行って見ようと思う」

「そんな時間レオンにある? 良いわ、私がもう一度行ってくる。気になっていたの。巫女の家もまだ見付かっていないし。今はライアがいるから、メグも寂しくないでしょう」


 以前のメンバーで、サラは北の森に転移した。今回はメグは連れてきていない。

「サラ様、ここから一日、南東へ行けば以前私が見付けた遺跡に着きマス」

「行きましょう」

ローナが見付けた遺跡は、やはりかなり劣化が進んでいた。殆どが森に飲み込まれ、高層建築だったはずの建物は崩れ落ちている。

遺跡の中を奥へ進む。魔獣が沢山いるが、倒すのが面倒だ。

 皆を結界で囲み奥へ奥へと進むと、大きな湖があった。湖の中には小島がある。

「魔の森の魔女の家と同じ環境だわ」

 遺跡は湖を囲むような形だった。巫女はここにいたのだ。サラは確信した。

 この古代都市は、巫女を中心に発展していたのかも知れない。

「サラ様、この湖から濃い魔力が感じらレマス」

 小島に渡るための橋は無く、船着き場だったと思われる建物が崩れて立っていた。

「貴方たちは、遺跡の探索でもして待っていて。もし書物が見付かったら、保管しておいてね」

 そう言ってサラは空歩で小島へ飛んでいく。転移でも行けそうだが、周りを見たかったのだ。

 魔の森の魔女の島より大きい。湖も倍以上ありそうだ。

この水は古代都市の水瓶だろう。巫女は、湖の魔力を薄めていたのでは無いだろうか?

 人には濃すぎる魔力は巫女にとってはごちそうだ。相互依存の関係だったのだのではないだろうか。

 

 サラが小島に行くのを見て、

「さあ、私は拠点を作りマス。騎士達は探索をしてきてくだサイ」

 従者のポーがテキパキとテントを設置し始めたのを見てローナ達も行動に移すことにした。

 ローナ達は二手に分かれて探索をして行った。

 殆どが壊れているため探索は直ぐに終わるはずだ。見るべき物が殆ど無い。まだ辛うじて立っている建物を調べれば良いだけだ。

「ミー、この階段上れそうだな」

「ローナは太っちょだからここで待ってイテ、私が行く」

「ッ! 太ってはいない! 筋肉だ、コレハ」

 身軽なのはミーなので、素直に待つことにした。ミーが途中で崩れた階段から落ちそうになって、一瞬ヒヤリとしたが、大丈夫そうだ。

 凄く高い棟だ。外側にグルリとらせん状に石の階段が付いていた。

 壁に所々ぽっかりと空いているのは窓か、入り口だろう。

 その一つへ、ミーが入って行った。暫くするとミーが慌てて走り出してきた。途中から飛び降りてこちらに向かってくる。

「ぼ、亡霊がいた!」

「何だと、それは私達には手に負えない。サラ様に報告だ」


 拠点へ帰ると皆が集まっていた。熊獣人のコムは、

「高い棟を見付けたんだが、私達では危険だから、探索できなかった。湖を囲むように四棟見付けた。」

 と言った。

「こっちにもあったぞ。だが亡霊がいた」

「サラ様が帰るまで待つしか無いな」


 サラは建物の土台だけ残った場所に佇んでいた。

「ここにも家があった筈。家ごと引っ越ししたのね。魔の森へ来たのはここの巫女だったのかしら」

「闇の収斂」

 魔道具が無くても小さな魔宝石なら自分で作れる。サラの掌には大きな魔宝石が一つ載っていた。

「ここも魔力が濃くなりすぎているのね。魔道具があったらもっと吸収してあげられたのに」

 湖の魔力をこのままにしておけば、そのうち折角出来だトレス獣人国の方まで森が侵食していくだろう。そうすれば、街の獣人達は元の森の生活に戻ってしまうのでは無いのか?

 ここに巫女のために家を建てることは出来るが、問題は魔道具だ。レオンに作れるかしら?」

 レオンも随分研究はしているが、未だにあの高度な魔道具は作れていないのだ。レオンが言うには魔法を増幅するものだそうだが、あれは、巫女の隠れた技術なのか、それとも人間の技術なのか。ここには魔法を使える人間はいなくなってしまったのだ。高度な知識も技術も散逸し、廃れてしまった。

 小さいと思っていた小島は歩いてみるとかなり大きかった。

 所々に建物の跡地がある。ここに村があったのだろう。巫女の世話係かも知れない。

「これ以上見ても実りが無いわね。レオンが探している書物は無いわ」

 サラは拠点へ転移した。


「サラ様、大変です。亡霊がいるのを見付けマシタ!」

「え、亡霊なんて珍しいわ。ダンジョンで見たけど、それ以上は見かけなかったもの。明日行って見ましょう」

 高い棟へ空歩で行き、亡霊がいたという場所に着いた。

 中は意外に綺麗だった。外は劣化が進んでいたのに不思議だった。

 十メートルくらいの円形の部屋だ。床には複雑な模様が描かれている。サラは部屋の中央にまで歩いて行き、

「亡霊さーん。出ておいで」

 サラの直ぐ側にモヤモヤとしたものが集まりだして形を取った。

【君は、異形では無いな。先ほどここに獣が来た。あれは何だ?】

 先ほどと言うには時間が経っているはずだが、亡霊にとって時間の感覚は曖昧なのだろう。

「あれはこの国の獣人です。貴方は? 幽霊さん」

【私は、この塔に住む魔導師だ。いや……だった。かつて、ここは魔導師の塔と呼ばれていたのだ】

「この街はかなり前に人が住まなくなっています。何が原因か知っている?」

【巫女が逃げていったのが直接の原因だが、巫女に魔力を吸われすぎた結果、地力が枯渇したのが誘因だ。それは、私たちのせいだ】

「ここに、貴方たちの素晴らしい知識が残されています?」

【……ある。この塔の最上階に。私はここに縛られていて行くことは適わなくなったが……まだ、行かないでくれ。久し振りに人と話せるんだ。君と、もう少し話をしていたいのだが……】

「良いけど、ここへもう一人連れてきても良いかしら。きっと私よりも話が弾むとおもうわ」

 レオンに来て貰うことにしたのだ。サラが聞いても分からない話だろうと考えて。

「レオン、魔導師がいた、こっちへ来て!」

 サラが、トカゲのゴーレムに話しかけると、レオンは嬉々としてやってきた。





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