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獣人の国  作者: チャロ吉
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25 獣人王の死

 リックから話を聞いたレオンは、自分を責めた。へたをすれば、愛する息子を失っていたかも知れなかったのだ。

 闇の属性は例え大魔法を放っても魔力効率が良いと思い、精神魔法を勧めたが、教えていなかったことに、今更ながら気が付いたのだ。

 リックはレベルが上がって何でも出来ていたため、もう総て教え込んだと思い込んでしまった。

 この「支配」は知っているものは、今はいないだろう。だが、似たような技能があったのだ。マーラや巫女が使う魅了は、支配にも通じる。隷属魔法の派生なのだ。

 技能とはやはり魔法と同じものでは無いだろうか。デパーズ老が予想したように、彼等には小さな魔力器が備わっているに違いない。だとすれば、この大陸に住む獣人達は総て魔力器を具えていると言うことになる。

 リックには魔女の家から持ってきた闇の属性の本を貸し与えた。指輪があるから、精神魔法には掛からないと安心してはいられない。対処法を知っておいて欲しい。


 ボナンは、獣人王と名乗る狼獣人カブの話をずっと聞いている。悲しい目をして。

「オレは、北の国の王族の持ち物だった。遺跡の宝物庫から見付かった宝だという首輪を嵌められて、抵抗できなくされた。あるとき仲の良い奴隷仲間を食い殺せと命令された。オレは抵抗できず彼女を侵し、食い殺した。心ではいくら抵抗しても頭が言うことを聞かない。王たちは食事をし、酒を飲み笑いながら歓談していた。オレは余興の一つにされてイタ……」

「その獣人は、貴方の恋人だったノカ?」

「……ああ、ソウダ」

「貴方は多くの人を殺した。ココの王は、罪人に選ばせている。極刑が良いか、それとも奴隷になるか」

「オレは極刑を望む」


 獣人のカブを、鑑定して貰ったレオンは、結果を聞いて驚いた。

「彼の喉には二㎝ほどのラッパのような光の突起が見える。首の後ろにも突起があり真っ直ぐ通っているように見える。彼が力を使うとき、後ろから魔力を吸い上げ力を前から放出している。魔力器とは少し違う。技能器とでも言おうか。魔力の通り道とでも言おうか……」

「獣人はみなそうなのか?」

「何とも言えません。彼は奇形か突然変異なのかも知れません。他の人間や獣人達の技能器……それは凄く小さな点のようなもので詳しく見ることは適いませんでした」

「この大陸特有の発展と言うことか。これほど魔力が濃いのだ。当たり前なのかも知れないな」

「私は、技能器は、魔力器の原型なのではと思っていたのですが、どうやら独自の進化なのかもしれませんな」

 常に濃い魔力に晒されている獣人は、吸い込んだ魔力を放出する力を獲得したのかも知れない。

 その後、カブは処刑された。自ら選んだ結果だった。

 レオンは、処刑の方が獣人にとっては、慈悲なのだと納得するようになった。


「ニーノの街は獣人の街になっていますが、治める者がおりません。どういたしましょう」

「カブの支配が無くなって、獣人達はどうしている?」

「普通に生活はしておりますが、纏まりが無く、常に問題が起きております」

「神官を派遣するか。ボナン、ニーノを治めてくれないか?」

「私はココにおるとキメテイマス。誰か他の竜人を送りましょう。王宮跡に神殿を作らせます」

 セントラルベイと似たような、女神を信仰させる方向に進めるのだろう。それで獣人達が落ち着くならそれで良い。

「レオン、北の森の探索をしましょう。きっと巫女の住まいが見付かるわ。そうすれば……その、信仰がもっと根付くのでは無いかしら」

「それは分かるが、北は魔力が比較的少ない場所だ。見付からないかも知れないぞ」

「そうかもしれないけど、この先巫女が増えたら、住まいが必要になるわ。もし無くても、良い場所を探してみせる。私に行かせて。お願い」


 捕らえられた獣人は彼等が乗ってきた船に乗せられニーノの街に送り返されたが、彼等を束ねる者がいない。竜人に押し付ける形になったが、彼等なら何とかしてくれるだろう。

 竜人の神官は北の国を「トレス獣人国」と名前を付け、港町ニーノはそのままニーノという名前に収まった。

 レオンはサラを連れて、ニーノの街に転移した。

 今回も獣人の護衛が付いている。何故かメグまで一緒だ。

「メグを連れてきて大丈夫なのか?」

「お父様、私、何でもお手伝いしますから、返さないで!」

「レオン、このところメグに寂しい思いをさせていたの。このまま連れて行かせて。ゆっくり森の中を探して廻るだけだから。安心して任せて」

「……そうか? 護衛は六人付けた。くれぐれも慎重にな」


「お母様、ありがとう。連れてきてくれて」

「二人きりなんて久し振りね。女同士、気楽に旅をしましょう。でも、剣術もするのよ、約束よ」

「はい、お母様となら頑張れます」

 護衛は、この度女性騎士と認められた、豹獣人のローナとミー、熊獣人のコム、ララ、ビガ、だ。

 そして唯一男性の山羊獣人ポー。従者のポーは食事の世話やその他の細々したことをしてくれる。執事のようなものだ。

 ニーナを出て南東に進む。魔力が濃い場所を探して歩くのだ。豹獣人二人と、ポーを残し、熊獣人達は先行して偵察して回り、戻ってきて報告する。

 熊獣人達の嗅覚は鋭い。彼女達に任せておけば大概危険を察知してくれる。

「南中央に濃い魔力の気配がアリマス」

「そう、明日からそちらを目指します」

 半日進み、野営の準備だ。急ぐ旅では無い。野営地に着けば、サラはメグの剣術の相手をし、勉強を見てやるのだ。

 メグにとっては素晴らしい一時だ。やっと母を独り占め出来る。

「お母様、私の属性が決まらないってどう言うことか分かりますか?」

「そうね、不思議だわね。デパースにも特定出来ないなんてね。ダンカン王の場合と似ているわ」

「私は全属性になるの?」

「そうとは言い切れないの。色は付いているそうよ。只どの属性にも当てはまらない色で、分からないんですって」

「ふーん、でも魔力はあるんだよね」

「そう、ダルと同じくらい大きいそうよ。良かったわね」

「……うん、本当に良かった。ダルったら、私が一番下手っぴになるって言ったんだもの!」

「あら、あながち間違いでも無いかもよ。このまま剣術が嫌ならね」

「お母様! 酷い。これから頑張るって言ったのに」

「ふふ、そうだったわね」

 サラは、デパーズの鑑定結果を聞き不思議に思ったのだ。

 ――ダルと同じくらいの魔力の大きさ? メグは良く硬化症にならなかったものだわ。本当に不思議。

 余りにも忙しく、レオンもサラも、メグの魔力鑑定をすることに頭が回らなかった。

 ダルの場合、硬化症になって、幼い内から鑑定を掛けたが、メグのことはすっかり忘れて居た。この度メグを連れてきたのはそう言う経緯もあったのだ。

 何ヶ月もまた留守にするとなれば、メグのことはほったらかしにしてしまう。いっそのこと連れて行こうと思い立ったのだ。

 何日か探し回り、屋敷跡のようなものが見付かった。

「ここは……巫女の屋敷跡かしら? 違うような気がする」

「ここから更に行けば、小さな遺跡跡がありマス。明日はそちらを見てみまセンカ?」

「若しかすると過去に消えて仕舞った国の町だった場所かしら」

 北の森には大きな国があったに違いない。魔力がそれほど濃くなかったのなら、人間が沢山いたはずだ。

「セントラルベイと同じ規模の街が見付かるかも知れない」

 サラは、古代都市が見付かったことに興奮した。

 獣人も森には住んでいる。偶に小さな集落に出会い、そこに泊まって、森の中に遺跡が無いか聞いて廻るのだ。

 そうやって一ヶ月ほど過ごしている。

 森には危険な魔獣が沢山いるが、そこそこ弱い魔獣もいる。そういうのを見繕って、メグに宛がう。メグは始め怖がってへっぴり腰になっていたが、そこら中にいる魔獣に慣れてきたようだ。

 この頃は自分から率先して魔獣に向かって行くようになった。勿論こっそり結界を張っておく。森の毒は危険だ。

 少しの傷でも、小さな身体には命取りになる。

 いくら魔法の治癒があると言っても万能では無いのだ。

 知らない植物や魔獣の毒があるかも知れない。

 サラの場合、これだけ魔獣を倒せば、硬化が始まったものだが、メグは硬化しない。どうしてなのだろう?

「どう? メグ。苦しくなったりしない?」

「え? 全然平気。どうして?」

「ううん、それなら良いの。さあ、またやるわよ!」

「はい!」


 周りが大人ばかりなので、メグは気楽だった。同年代の子どもがいないのは寂しい反面、気を張らなくて良いからだ。 友達を作らないといけないように感じる必要が無い。

 何故みんな友達がいないと可笑しいように言うのだろう。同年代の子どもは結構酷いことを平気で言う。それに何て答えたら良いか考えている内に、段々面倒になってくるのだ。

 その点小さな子はメグの言うことを聞くし、大人はこちらに気を遣ってくれて居心地が良い。

「私はきっと我が儘なんだ。同年齢の子といると疲れるし」

 この頃はそんな風に考えるようになったメグだった。

 何時ものように小さなウサギを剣でスパッと切り裂き、サッと避ける。魔獣の血は危険だとサラが言っているからだ。

 サッと避けた瞬間、穴の中に落ちてしまった。

「メグ! 大丈夫?」

「うん、平気!」

 母親の顔が、ずっと上の方に見える。随分深い穴に落ちたようだ。サラが、空歩で降りてきて、サラを抱き上げ穴を抜ける。

 メグの身体を隈なく調べ、何処にも怪我が無い事にホッとしている。結界が張ってあるのだ。心配のしすぎかも知れない。

「足下を確認しなければ、メグ」

「うん、確認したつもりだったんだけどな」

「あら、手に何かくっ付いて居る、何これ?」

 メグの手の甲に丸いゴム鞠のようなものが付いている。引き剥がそうとしても中々取れない。

 サラの目が険しくなった。

「何なのこれは!」

 騎士のローナが驚いて叫んだ。

「森の卵!」

「……何?」

「森の精が宿った卵で、聖獣が生れるという言い伝えです。見かけることはあっても、直ぐに消えていなくなってしまうのです!」

「そ、それは危険な物なの?」

「……そう、かも知れません。よく分かりません」

 サラは慌てた、このままメグを連れて歩くことは出来ない。一旦セントラルベイへ帰ってレオンに調べて貰わなければ。

「メグお父様のところへ帰りましょう。これは危険な物かも知れないから」

「……私、また独りぼっちになるの?」

「それは……じゃあ、毎日転移で帰るわ。それなら良いでしょう?」

「でも、お母様が大変だわ。私……我慢します」

「メグ……」

 だが、悠長なことはしていられない。サラは皆を連れて転移した。

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