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獣人の国  作者: チャロ吉
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17 リックとバスのダンジョンアタック

 バスティアンは、毎日住民の治療していたが、どうしても治せない患者がいた。部位欠損患者だ。傷は治るが、部位欠損は修復出来ない。

「母や、ゴードン叔父さんはパーフェクトヒールが使えるから、治してしまえるんだが。私にはまだ無理だ」

 レベル上げは、魔法学校でもそれなりにしていたが、勉強との両立と、公爵としての公務や付き合いもあり中々時間が取れなかった。

 こちらの大陸へ来れば、ダンジョンがある。ダンジョンの魔物はかなり強力で、効率よくレベルが上げられると期待していたのだが、ここでも時間が足りないようだ。期待していたのに、がっかりして仕舞った。

「ダンジョン、行きたかったな……」

「え、直ぐ行けるよ。連れて行こうか?」

「無理だろう。船もないし、時間も無い」

「言っていなかったかな……僕、短距離なら転移が使える様になった。だから僕の行ったことがある階層へは直ぐに行ける。ささっと倒して帰って来れば良いんだ」

「……凄いなリック。じゃあ、頼めるか? 明日治療が終わったら行って見たい」

「おお! 任せて。ニルも行きたいだろう?」

「ああ、一度行って見たカッタ。足手纏いにナルかな?」

「大丈夫だ。ニルの場合、レベル上げはしないだろう。気配遮断で攪乱をして欲しいんだ」

「それナラ任せろ」

 次の日、ドロップアイテムは山分けという取り決めをして、ダンジョンへ転移した。

 「ここは蟹の部屋だ」リックがそう言いながら広い部屋へ入っていったが、今回は蟹では無かった。

「これはヤドカリか!」

随分大きなヤドカリだ。十メートルはある大きな堅い貝に、大きなハサミを持つエビのような見た目の魔物だ。

「これは剣が通るのか? 随分堅そうな貝殻だ」

「雷を持っている、バス?」

「ああ、だがレベルが上がっていないから、効かないかも知れない」

 仕方が無いから皆でちまちまヒットアンドウエイで攻撃していくことに決めた。

 ニルは気配遮断で、リックとバスは影渡りで、三時間かけてやっと倒す事が出来た。

 ドロップアイテムは、大きな貝殻。魔物が背負っていたものだ。

「これを如何しろと? 時空間収納に入るかぁっ!」

「一体誰がとどめを刺したんだ?」

「ゴメン、オレだと思う」

 ニルが恐る恐る手を上げた。みんなで、肩を落した。こんなに頑張って倒したのに、何も報酬が無いのと同じだった。

「いったん帰って攻略法を考えないとダメだな」

 バスがそう言ったので、今日は諦めて帰ることにした。

 名残惜しそうに大きな貝殻を見ていたニルが叫んだ。

「消えてイクゾ!」

 大きな貝殻は、床に吸い込まれてしまった。後には何も残っていない。

「もう一回だけ、試してみないか? バス」

「彼奴は何が弱点か分からない、ニル、何処を攻撃した?」

「目の間だったような気がスル」

「狭いな、そこを狙って集中的に攻撃するか、貝殻を壊して中の弱い場所を攻撃するか……」

「貝殻を壊すのは大変だ。大きな斧かハンマーが必要だ」

 やはり帰ろう。皆で王の棟へ転移した。


「ニルは力が有る。彼にハンマーか斧を持たせれば何とかなるかも知れない」

「そうだな、鍛冶屋へ行ってくる。バスは仕事があるんだ、僕が行くよ」

 バスは、雷も闇も中途半端にしかレベルが上がっていない。リックはここでかなり鍛えているようだ。何となく出遅れた感がある。ここに始めてきたときは、空属性も火も頑張って獲得しようとしていたのに。魔法大学校へ行って、初心は早々に忘れた。持っている属性ですらそれほどレベルは上がらなかった。確かに知識は増えたが、その知識を生かせていない。自分は中途半端な人間だと感じた。

 せめて知識を生かしたいが、ここの魔物は総て初見だった。本にも載っていないものは調べようが無かった。

「眉間か、弱点は……長い槍が必要だな」

 ヤドカリとはやっかいだ。危なくなると、堅い殻に閉じこもってしまう。動きは遅いが、誘い出そうとすると大きなハサミの付いた足で攻撃されてしまう。

 ――雷は、水分があると感電するんだったな。そうか! リックに水をヤドカリに掛けて貰えば、雷の効果が増すかも知れない。少しの間だけ痺れていてくれれば、何とかなるはずだ。

 バスは、武器庫へ行って、槍が無いか探し始めた。王の棟には武器庫があった。種類は少ないが、槍ならあるはずだ。

「今夜リベンジするぞ!」


「こんな立派な斧。これを本当に貰って良いノカ?」

「ああ、ニルには何も報酬が無いのは変だろう。この斧が報酬だ」

「アリガトウ、これで殻を壊せば良いんだな」

 バスの手持ちの金がパーになってしまうくらいの武器だった。だが、彼がいないと魔物を倒せないのだ。

 魔物が出る部屋の前に転移し、意気揚々と三人は入って行った。

 ヤドカリが湧き出てきた。昨日と同じだ。

「ニル、気配遮断でヤドカリの後ろを攻撃してくれ」

「ウッス!」

ヤドカリは、バスとリックに気を取られている。もこもこと太い足を伸ばして殻から出てきた。

 後ろでは、ガツンガツンと音がしている。ヤドカリは気にしていないようだ。目の前に居る獲物に集中している。

「穴が開いたぞ!」

 ニルがやってくれた。

「ニルはこっちへ来てくれ危険だから。リック水を開いた穴に流してくれ」

「ああ? 水なんかで良いのか? わかった」

 ニルと後退に後ろへ回って帰って来る。

「終わったぞ」

 ヤドカリの鈍い攻撃を躱しながら、交代してバスは後ろへ行き、開いた穴に向けて、雷の矢を打ち込んだ。ヤドカリの動きが止った。

 急いで前に回って、ヤドカリの眉間に長い槍を突き刺した。一瞬の後、ヤドカリが消え、魔力がバスに流れ込んできた。

――凄い量だ!あっという間に硬化した!

 バスは急いでパーフェクトヒールと叫んだ。だがそれでもまだ硬化している。雷の魔法を今度は打つ。何度も何度も。

「フーッ、やっと収まった。苦しかったーっ」

「やったな、バス!」

「ああ、ありがとう」

「周回しようぜ。まだ時間はタップリある。簡単だったしな。僕も闇のレベルを上げたい」

「悪いけどニル、付き合ってくれるか?」

「ああ、モチロンダ」

 だが、2回目以降は、雷のレベルが上がったお陰で、穴を開ける必要は無くなっていた。

 動かない敵を倒すのは簡単だった。直ぐにヤドカリは消えていく。すっかり作業と化していた。ニルは手持ち無沙汰で、自分が壊した殻の破片を調べたりしている。

「今日はこれくらいにしておこう。時空間収納も使える様になれたし。今度は次の部屋へ行って見たいな」

「そうか、明日だな、ニル帰るぞ……どうしたニル」

「うん、この殻、綺麗だなと思って。これでアクセサリーが作れソウダナ。妹に持っていこうかな」

「本当だ、凄く綺麗だ。もう一回倒して、持っていくか。斧で割れば、収納に入るし」

 結果、もう一度ヤドカリを倒す事になった。簡単に倒せるため面倒は無い。残った殻は、思いのほか脆く、直ぐに壊すことが出来た。

 殻は全部ニルにやることにした。ニルは凄く喜んだ。


 ニルは早速妹のところへ貝殻を持っていった。妹は凄く喜んで、

「お兄、ありがとう。これで何か作る。お店で売ろうカナ」

 そう言っていた。子どもが育って、自由な時間が出来たそうだ。手先が器用な妹は、中区へ行って、商売を始めたいと言った。

――妹が喜んでくれた!

 まだまだ大量に素材はあるが、商売をするとなればもっと必要になるかも知れない。ニルは、森へ行くよりもダンジョンへ行った方が短時間で稼げるのでは、と思うようになった。

 だが、一人では行くことが出来ないし、魔法が使えないニルには倒せないのだ。

「暫くリックと一緒に行かせて貰オウ」

 街に来たときは王の棟にやっかいになっている。ニルは自由に塔の中へ入っていくことが出来た。

「リック。今夜も行くカ?」

「ああ、多分行くよ。ニルにも手伝って貰うからな」

「モチロンダ。ところであの貝殻、もっと欲しい。妹が商売を始めるそうなんだ。ダカラ」

「分かっているって。僕も雷を手に入れようかなって思っているんだ。バスが仕事をしている間閑だし、行って見るか」

「バスが居なくても倒せるのか?」

「……まずは、雷を取る」

「どうやって?」

「初めの部屋から入って行くか。マーラがどうしているか、気になるし……」

 リック達は、ダンジョンのある洞窟の入り口に転移した。リックがここへ来るのは随分久し振りだ。マーラとはあれから会っていないし、ニルも会っていないと言う。

「マーラはいないみたいだな。出かけているようだ」

「魚人達もイナイ」

「まあ、いいさ。先へ進もう」

 覚悟を決めてマーラに会おうとしたが拍子抜けだった。

 初めの部屋へ入る。いつも通り海賊が出てきたが、今回は、他にもいた。

「魚人達だ! 何故ここに居る?」

 魚人達はマーラがいないせいなのか、攻撃してきた。ニルは難なく倒す事が出来た。リックも海賊をヒールで消した。

 倒された魚人達は消えて仕舞った。

「これは……魚人達もダンジョンの魔物になったと言うことなのか?」

 ドロップしたのは、魚人が持っていた銛と海賊からは金の腕輪だった。

「マーラはココに来て死んダ?」

「分からない。巫女に聞いて見るしかないか」

「ここに女神様がイラッシャルノカ!」

「内緒だぞ。本当は知られてはいけないことなんだ。だけど、巫女のところにマーラがいるかも知れない」

 巫女のところに来て、話を聞くと巫女は、

「マーラは北の島へ行きました。あそこを根城に変えたと言うことでしょう」

「……僕がマーラを傷つけたから?」

「違いますよ。ココよりも広くて安全な場所デス。そこで子どもを作ると言っていマシタ」

 リックはそれなら良かった。と考えたが、何となく気持ちが落ち着かない。

 マーラが他の男と、そう言うことをするのかと、おかしな嫉妬を覚えたからだ。今更考えても仕方が無いことだ。リックはマーラとその様な関係にはなりたくなかったのだから。

 横を見ると、ニルは跪いて手を合わせている。

――獣人達にとっては神様だものな。

「じゃぁ、また。僕はレベルを上げに行く。元気で巫女様」

「エエ、いってらっしゃい」

 巫女のところから通路へ出ると、魔魚が次々と湧いて、でてきた。闇のレベルは上がっている。もう一度闇の投網を試した。今回は消えずにしっかりと魔魚を捕獲できた。

 魔魚をどんどん倒し、百匹を過ぎた頃やっと硬化し始めた。

「雷撃!」

 雷を取得できた。これがあれば、ヤドカリを倒す事が出来る。

 ニルとリックは次の部屋へ向かった。

 ニルに、前回と同じように穴を開けてもらい、そこに水と雷を打ち込み、動かなくなったヤドカリの眉間を突き刺す。

バスのやり方をそっくり真似て簡単に倒す事が出来た。硬化してきたので、雷のレベルを一段上げることが出来た。

 まだ雷のレベルが足りないようだ。もう一度ヤドカリを倒し、やっと面倒な手順を踏まなくても、リック一人でヤドカリを倒せるようになれた。

 貝殻のドロップアイテムがかなり溜まった。

「ニル、これくらいあれば良いだろう。バスを迎えに行かないと、待ちくたびれているかも知れない」

 




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