97 暇を持て余した三毛猫の遊び ミケネコ視点
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ぼくの能力「精神感応」によって、子猫ちゃんの感情を爆発させたまでは良かったんだけど、事の顛末を知ってがっかりした。
「なんだ、結局あっさりと仲直りしちゃったのか。つまんない」
「未成年は選ばれない」という決まりがあったのに自分が受けた番いの託宣の相手がまだ未成年だったという真実で悩む忠犬くんは見ものだった。
日ごろ涼しい顔をしてるあのお兄さんが苦しむさまは面白かったのに。なにがあっても威風堂々としてるあの忠犬くんが1人の女に振り回されるってウケる。
三つ目の巫女が間違えた託宣を授けたのかと思ったら、よりにもよってあの子猫ちゃんの戸籍が偽物だったとはぼくも予想外だったけど。
まぁ、ぼく達ノラネコも他人の戸籍を乗っ取ることはよくやってるからね。それが金銭などの授受による合意だったり、もしくは意識を乗っ取ったりと色々。
特に縁者がさほど居ない人間は格好の獲物だ。
藤原忍とその娘みやびは戸籍上では他に親戚も居なかったから乗っ取りやすかったんだろう。
まだ子供の「みやびちゃん」が殺されたのはかわいそうだけど、これも運命ってやつだよね、しょうがないね、うん。聞くところによると、本物のみやびちゃんと今現在「藤原みやび」と名乗っている子猫ちゃんは偶然にも誕生日が同じだったらしい。
だから彼女の戸籍が狙われたのかな?
2人の歳は違ってたらしいけど。子猫ちゃんの本当の歳は18歳だっけ? 19歳だっけ? 忘れた。どうでもいいし。
子猫ちゃんはすでに成人してるらしいから、巫女の番いの託宣自体は間違いではなかったらしい。視る事が出来た巫女姫と彼女をサポートしてる神職・巫女たちの間で「藤原みやび」の詳細は情報がきちんと共有できていなかったらしい。
まぁ、巫女たちにとっては神おろしが出来るという「三つ目の巫女」の託宣は絶対だからね。
妄信って怖いね~。
ぼくが物思いにふけっていたら、不機嫌そうな声が聞こえた。
「お前がやったことは、忠犬の兄さんを警戒させたばかりかよりによって弐番の猟犬を焚きつけただけだったぞ。そのせいで身動きが取れん」と、傍らに立つベンガルがぼやく。
そうなんだ、猟犬の兄さんは怖いからね。
ここ最近特にぼくらの周りのノラネコメンバーである異能力者たちが捕縛されてるらしい。
戸籍を乗り換えてもあの猟犬に嗅ぎつけられてしまったらしい。どういう手段使ったんだよ、あの兄さんは。
警護隊の中でも一番好戦的というか、ぼくら異能力者を捕まえる事に人生かけてるようで非常に鬱陶しい。
なんでも「子供の頃、異能力者によって家族を殺され天涯孤独になった」とか? そしてその異能力者を追っているらしい。
その仇が見つかったのかは知らないけど、ついでのようにぼく達を捕まえるのやめて欲しいな。
捕獲、か。警護隊によって捕まったやつらがどうなったのかも知らないけどね。
異能力の剥奪(通称去勢)か、籠に入れられあいつら護国機関の手先に下るか、どっちにしてもロクなことはない。
ヒトより優れているぼくらが持つ異能力をただのヒトに使われるなんて嫌だよ。折角ぼくらが授かった「ギフト」なのに。その送り主が、神だか魔だか知らないけど。
ぼく達異能力者は元をただせば神だか魔だかを祖先に持っているらしい。護国機関の巫女姫も神の眷属たちの子孫だというし。
ぼく自身は祖先がなんだってどうでもいいけどね。
血を受け継ぐ者全員が異能力を持つわけでもないらしい。いわば、異能力を所持しているぼくたちは「選ばれた存在」なんだ。
「そんなこと言われてもなー。せっかく忠犬くんの弱みを握ったと思ったのに。番いって思ったよりも絆強いんだね。予想外だったよ」
もっとドロドロして欲しかったのになー、と3人掛けのソファでごろごろと転がりながらつぶやく。
「忠犬くんが護国機関に対して不信感を抱いてくれたらそこを突いて寝返らそうと思ったのに」
とはいってもただのヒトである忠犬くんを正式にぼくらの仲間に入れる事はボスは認めないだろうけど。
でもあの眉目秀麗な兄さんを使えば、他の異能力者のスカウトも簡単そう。
特に女性異能力者の勧誘とか、ぼくの能力で好意を増幅してやればちょろいだろうな。そう考えると欲しいな。もう少しちょっかいかけてみるか。
「さぁて、お次はどうしようかな」
もう子猫ちゃんをいじることは難しいだろう。
ぼくの精神感応はさほど有用な能力ではない。
せいぜい、集中力を必要とする護国機関の鳥たちの精神を乱し、異能を発揮できなくするくらいだ。
さらに相性もあるからすべての人間に効果があるわけでもない。子猫ちゃんは元々番いについて疑念を持っていたせいか、操作が容易かったけど。
それにしてもぼくの相方が「クロネコ」じゃなくてよかった。あの姐さんと一緒だと萎縮しちゃう。
かと言って「ハチワレ」はあいつはあいつで鬱陶しいし。能力は弱いし、いつもピーピー泣きわめく。
そう考えるとベンガルでよかったか。
つまんねー男だけど。
「じゃあ次は、子猫ちゃんのママにでも出てきてもらおうかな」
「おい、お前それは」
ぼくの言葉を聞いてベンガルは慌てる。
「いいでしょ? あの人怖いからね~~。ぼくが精神感応でこそこそと悪戯しなくてもきっと楽しいことになるよ。他人を殺してその戸籍を奪ってまで大事に育てた娘がワルイオトコに引っかかってると知ったら激高するよ」
ぼくは腹を抱えて笑った。想像するだけで楽しくなってきた。
「ね、ね。次回、御厨ナギは叱られるってどうかな?」
「お前本当に趣味悪いな」
ため息をつきながら、ベンガルは左手首に嵌めているレオパード模様のバングルを触る。
それ、癖か? 子供かよ。
でも子猫ちゃんのママに告げ口しに行くの怖いし面倒くさいなぁ。
あの人、基本的に引きこもりだし、こちらから直接出向くくらいしか接触手段ないもんな。
あんな辺鄙な所に暮らすだなんて、会いに行くこっちの苦労も考えて欲しいよ。電車とバスを利用しないといけないなんて面倒くさいことこの上ない。娘を軟禁する為だけとはいえよくやるよ。
それにしても、たった3年間だけ自由を与えたらその隙にオトコを作るだなんて、あの子猫ちゃんも中々やるなぁ。
恋愛禁止だとか、ママと色々と約束があったらしいのに破るだなんてホントにワルイコだ。
――もっともっと苦しめてやりたいなぁ。
それを考えると子猫ちゃんのママはきっと面白く立ち回ってくれるだろうな。
きっとぼくの想定以上の事が起きるだろうなあ。
「直接見られないのが残念だなぁ。きっと忠犬くんはこっぴどくしてやられるだろうに」
ぼくの呟きを聞いて、ベンガルは隠すこともなく顔をゆがめる。本当にこいつとは嗜好が合わない。
あ~あ、見たかったな。きっとめちゃくちゃ面白いだろうに。
愛する二人が引き裂かれるのを見るのって愉悦だよね。




