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90 宗像撃沈RTA,尚カテゴリーはAny% みやび視点

noteの方で、裏話、小ネタを掲載していってます

(TOPページ)

https://note.com/kirakiraspino


noteではこちらの前日譚「0話」も公開中

https://note.com/kirakiraspino/n/na36abbadd334

  今日は先日のテストの成績発表の日。

 廊下に張り出されたそれを見て安堵の息を吐く。

「お~、みやちん5位」

 張り出された成績順位の紙を見てかなっぺが大きく声を上げた。

「優待生外れなくて良かったね」

「今回ばかりは危ないかと思ってた」

 流石に色々ありすぎて正直無理かと思ってた。

 バイトで得た貯えがそれなりにあるので今回優待生の枠から外れたとしても、次のテストまでの学費は払えるといえば払えるんだけど、流石にキツイ。


「へー、藤原5位か。思ったより奮闘したな」

「調子悪そうだったのにな」

「正直、あれから巻き返すとは思わなかったわ」

 いつの間にかカナメたちが私の横に立ってる。

 テスト前の私の状態を知ってたから心配してくれてたのだろう。

 彼らにも申し訳ないことをした。

 そう思っていたらさりげなくイツキが私の肩を抱きよせて、かなっぺに睨まれてる。

 イツキは意に介していない様子だ。

 何に張り合ってるのか、かなっぺが私の左腕に絡みつく。

 なに、この状況。

 私を挟んで二人がにらみ合ってる。


 身動きが取れないので、仕方なく掲示板へと再び視線を送る。

 成績上位者は見知った名前が並んでる。

 やはり大きな変動はないみたい。

「イツキ3位か。凄いじゃない」

 とはいえ、キリヤたちは基本10位以内から落ちたことはない。

 私と違い優待制度は利用していないけど、彼らも好きな格好をしたいが為に周囲を黙らせるべく優秀な成績を収めているのだとか。

 この辺りは良くも悪くも進学校って感じなのかな。

「俺は4位か。イツキにはともかく、キリヤに負けたと思うと業腹だな」とカナメが悔しそうにつぶやく。

 そうだね、キリヤに負けるのが一番腹が立つ。

「はいはーい、今回俺2位、褒めて? 褒めて??」

 ジャンプして自己主張をしてる。

 子供か。

 それにしてもこの時期でみんなこの成績なら、菊花大の受験も余裕だろうなあ。

 かなっぺも奮闘してかなり上位に来ている。

 この分なら念願の、はるっちと一緒に進学も夢ではないだろう。

 その場に私が居ないのが寂しい。

 私は来春どうなっているのだろうか。


 私の思考を遮るように「俺、2位なんだけど、凄くない? ねぇすごくない?」と、めげずに尚もキリヤが飛び跳ねて主張してる。

 褒めると増長するから誰も賞賛の声をあげない。

 しかし、流石に鬱陶しくなってきたので適当にあしらおう。

「あ~ハイハイ、キリヤは凄いね。次は完膚なきまでにやってやるから」と親指を下に向ける。

 これくらい言ってもキリヤはへこたれないけど。

「藤原が塩対応でウケる」

「キリヤはこれくらいでいいんだよ」

 というかキリヤもわざとウザキャラ演じてるでしょ。

「それでも優しいくらいだろ。キリヤはもっと床ペロさせるくらいでいいんだよ」なんてイツキも言う。

 辛辣だなー。


「で、1位は……宗像か」

 あの日、ナギと一緒に途中まで登校してた時に偶然宗像と出会って精神的にショックを受けていたかと心配したけど、流石にテストではちゃんと集中できたようだ。

「あいつ人外だろ」

「結局1年の中間テスト以外ずっと1位か。藤原、もう一度本気出してあいつ殺ってこいよ」とイツキが不機嫌そうな声を出す。

 イツキと宗像はかなり相性が悪い。

 決定的な何かがあったわけじゃなさそうなんだけど。

 以前イツキに聞いたら「あいつ面白みがないからな」と吐き捨ててた。

 波長が合わないってあるからねえ。


「やだよ。10位以内に収まれれば私はそれでいいんだよ」

 実際、1年の中間テストの時には慣れない一人暮らしとバイトと猛勉強とでかなり疲弊した。

 あの時は、はるっちを馬鹿にした当時のクラスメイトを全員仕留めてやったから清々したんだけど。

 その後はやたらと大人しくなった、というかこちらを敬遠しだした。

 わかりやすい。

 確か、あいつらの中でが20位が最高順位だっけ?

 はるっちが「アタシもあいつらを抜いてやった」と喜んでいた。

 戦勝祝賀会と称して、かなっぺの家で肉パーティしたっけ。

 ……美味しかったなぁ、とろけるお肉。


「ふん。僕が1位だというのは当然だな。むしろ藤原が今回不甲斐なさすぎだ」

 出た。

 靴を鳴らし登場した宗像は、わざとらしく眼鏡を右手でくいっと上げてる。

「ご指摘の件については、真摯に受け止めております」

 相手にするのも面倒なので適当に嫌味を返す。

「政治家か! ……学生の本分である勉学の邪魔になる番いなんぞとは別れるべきじゃないのか」と鼻を鳴らす。

 こっぴどく振ったのにまだあきらめてなかったのか。

 それどころかテスト初日の日に、私とナギのキス未遂のシーンまで見ておいて。

 ある意味この精神力は見習いたい。

 態度が変わらないのはこちらとしてもある意味助かるけど。


 そんな私たちから若干離れた位置でこちらの様子を笑いながら見てるグループが居た。

「どうせ優待生から外れても愛しのエリート番い様が学費全額支払ってくれるでしょう?」

「気楽でいいわね、こっちは受験勉強必死なのに」

「進学も就職もしないのなら、とっとと学校辞めて結婚でも何でもすりゃいいのに」

 だからどうしてみんな私の生活の全てはナギが面倒見るって決めつけるんだ。

 正直、腹が立つ。

 私はお母さんから逃れるために、自立したいから今の生活を選んだんだよ。


「は? あんたら何言ってんのさ」

「みやちんはそんな子じゃないよ」

 私の苛立ちを察したのか、かなっぺとはるっちが声をあげる。

「やっだー聞こえちゃったー?」

「茶髪のお友達もこっわ~い」

 尚もこちらを挑発するようにクスクスと笑う。

 私だけならともかく、かなっぺとはるっちにまで喧嘩吹っ掛けてくるのか。

 許せないな。


 無言でそいつらに近づき、壁際に立っていた名前も覚えてない同級生Aの体スレスレの壁にわざと大きな音をたて片足を壁にたたきつける。

 壁ドンの変化形、足ドンというやつだ。

 正式名称知らないけど。

「悔しいのならテストの順位で私を抜かしてみなさいよ。あんたたちそもそも何位?」

 というか名前すら知らないけど。

 クラスメイトかも覚えてない。

 ここに居るという事は同学年みたいだけど。


「20位にも入ってないんじゃないのか?」

「受験がどうのこうのいうのならもっと頑張りなよ。だっさ」

「ざぁこ、ざぁこ」

「かなっぺにも負けてんじゃん」

「なんで引き合いに出されてんの? アタシ夏休みめちゃくちゃ真面目に塾通いしたよ、頑張ったよ」

 私だけならともかく、イツキ達にまで煽られてやんの。

 そしてキリヤの挑発はまんま子供だな。

 あいつに今回成績で負けたかと思うと微妙な気分だ。


「ちょ、ちょっと足で壁ドンなんてあなた品が無いわよ」

「へー、陰でこそこそと悪口いう人らに品性問われるとは思わなかった」

 相手を小馬鹿にするように、大げさに顎をしゃくる。

「な、なによ! あなた大体番いが居るのに宗像君と仲がいいなんてズルいのよ!」

 同級生Aがなんか頓珍漢なことを言い出した。

「……ん? んん? そっちへの嫉妬?」

 番いが居る私が気に入らないんじゃなく、宗像に関しての嫉妬?

 この間、宗像が私に告白したという話が学校に広まっていると言ってたっけ。

 それがこの子たちの耳にも入ったのか。


「案外宗像モテるからねー」

 かなっぺが同調する。

「そうなの?」

 そんなそぶり一切なかった気がするけど。

 というか学校へは勉強しに来てるだけなのでクラスメイトの事情とか一切興味がない。

 昼休みもクラスから離れた場所で食べてるから他の生徒たちの噂話とか聞いたことない。

 たまに〇組の誰それと×組の誰それが付き合っただとか、クラスメイトが後輩に告白されただとかちらほらとかなっぺ情報を聞くことはあるけど、流し聞きだったし。

「そらそうよ。見た目も悪くないし、成績優秀で菊花大への進学間違いなしと言われてるくらいの優良株だもん」

「へー」

 ここは進学校だからかやっぱり成績優秀者はモテるのだろうか。

 とはいえキリヤたち成績上位群には恋人が居ないけど。

 見た目で言うと、カナメたちも悪くないのに。

 まぁキリヤは子供じみてるし、カナメはインダストリアルピアスが独特すぎだし、イツキは私以上に人を拒絶する雰囲気が出てるけど。


「モテて良かったじゃん、宗像。ひゅーひゅー」

 馬鹿にしてるのか、心から祝福してるのかわからない口調でキリヤがはやし立てる。

「ひゅーひゅー言うな。努力してるやつに陰口叩くような女は僕は嫌いだ」

 宗像は右手の中指で眼鏡のズレをくいっと直し、冷淡な口調で同級生Aにとどめを刺す。

 それにしてもよくズレる眼鏡だなぁ、サイズ合ってないんじゃないの?

 言われた女子生徒は「うわああああんんんん」と大声をあげながら廊下を走り去っていった。

「無様で笑えるわ」とイツキが高笑いしてる。

 鬼か、イツキは。

「なーかした、なーかした。むーなかたーがなーかした」とキリヤは囃し立ててる。

 こっちはこっちで子供か。


「ってかうちの学年って成績が貼られるたびに毎回誰かが泣き叫んで去っていかない? どういう学校なの、ここは」

 大体が宗像が何事か叫んで去っていくから、同級生Aは初めてのパターンだけど。

「元凶が何言ってんだ」と、カナメが肘で私をつつく。

「え? 今回は私のせいじゃないよね? 宗像は毎回泣かせてるけど」

「な、泣いてないからな。僕は一度たりとも泣いたことはない男だ!」

「うん? この間の朝にばったり会った時だって泣きながら去っていったよね?」

 言って気づいた。

 この間、つまりテスト初日の朝。

「あ……あの時の事か」

 宗像も思い出したらしい。

 ナギとキス未遂を目撃された日の事だ。

「お、お前あの後……した、のか」

 その事を思い出して思わず紅潮する。

 私の様子を見て「あの後、改めてキスをした」と気づかれたようだ。

「ふ、ふしだらだぞ!! 破廉恥だ!!! 淫らだ!!! えっちだろうがあああああ」と、前回と全く同じ叫び声をあげながら宗像は走り去った。


「何の話?」

「……さぁ? 思い当たらないけど?」と私はしれっと嘘をついた。

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