87 冷凍パスタとだし巻き卵と男の純情 ナギ視点
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22時を若干過ぎた頃だが、メイドカフェ「tranquillité(トランキリテ)」は賑わっていた。
夜の営業にはアルコールも提供されるらしく、昼間とは違う客層で人気らしい。
店はまだ営業しているのに何故いつも22時までのバイトなのかと思ったが、彼女が未成年だったからなのか。
学生だからと軽く考えていたが、俺は彼女の事を何も知らなかったのだなと自嘲する。
tranquillité(トランキリテ)からは、やや離れた路地でみやびを待つ。
ちらほらと彼女のバイト仲間も店の裏側、従業員通用口から出てきた。
そして、少し遅れてみやびも。
久しぶりに彼女の姿を生で見られた。
どくんと胸が高鳴る。
「みやび」
彼女ではない偽の名前を呼ぶ。
もう少し経ってから声をかけようと思ったが、つい口に出た。
「――ナギ!」
振り返り、俺を見て驚く彼女の顔。
それを見て心が痛む。
もう彼女の生活に俺は予期しない存在になりつつあったのかと。
しかし、走って逃げられなかっただけで十分だ。
対話してくれる気があるのだろうか。
「会いたかった」
本心から、声が出た。
ずっと会いたかった。
声を聴きたかった。
俺の言葉を聞きたくなかったのか、すぐに背を向けて早足で去ろうとする。
今はまだ通行人がちらほら見られるからもう少し人通りの少ない路地で話し合いたいと思いしばらく黙って彼女の後を追う。
住宅地から離れ、電灯の数も少なくなる路地で我慢できずに彼女の左手を掴んでいた。
「……離してよ」
その言葉にはあの時の勢いも敵意もない。
感情をかみ殺すような震えた声。
「嫌だ」
もう二度と離したくない。
「防犯ブザー鳴らすよ?」
「俺が迷惑だっていうのなら、もう顔も見たくないほど嫌いだっていうのなら鳴らしてくれて構わない」
辛いが、もし本当に彼女が俺を拒絶するというのなら受け入れるしかない。
これ以上みやびを傷つけたくない。
「っ……」
俺に対する好意と葛藤しているのかびくりと体が震えた。
「それほど嫌われているのならこの手を振りほどいてくれ。そうしたら、もう俺は君を忘れる。二度と会いに来ないし、連絡も取らないと誓う」
忘れられるものか。
短いけれど2人で過ごしたあの夏を。
初めて他人を「愛おしい」と思った。
俺に対してのみ向けられる笑顔を嬉しく思い、時折すごく鈍感な所がありそれに振り回され一喜一憂させられた。
生まれて初めて見た女性の裸身に昂り、添い寝ではその柔らかい体を押し付けられ、甘い吐息を感じたこともあった。
そして、お互いの気持ちを確かめ合った後にした稚拙な口づけ。
何もかも忘れられるわけがない。
「……嫌いな、わけ……」
駄目だ、我慢できない。
彼女の手を離し、いつもしていたように背後からそっと抱きしめる。
ふわりと漂う髪の香り。
もっと感じていたくて右肩に顎を乗せる。
抱きしめやすい体だ。
「寂しかった」
つい口に出してしまった。
あれから数日しか経ってないのに、ずっとずっと長い間のように感じた。
「――例え」
彼女が藤原みやびではないとは知られてはいけない
「君が俺の番いじゃないとしても」
そんな残酷な真実でこれ以上傷つけたくない
「好きだよ。愛してる」
本心を伝える。
「巫女は今多忙で面会が不可能で番いの真実は確かめられないが、もうそんなことはどうでもいいと思ってる」
右手で彼女の頬を撫でる。
今すぐに振り向かせてその唇を奪いたい。
以前よくそうしていたように。
「でも私は」みやびの絞り出すような声が路地に響く。
「私は怖いよ。ナギの前に本物の番いが現れたら、あなたがその人を好きになりそうで」
「もし他の女が番いだと改めて託宣を受けても、その女には会わないと誓う。絶対に」
「ナギの知ってる人だったら?その人が番いだって知ったら途端に見る目が変わるかもしれない」
「俺が一目見て惹かれたのは君だけだ」
そして抱きたいと思ったのも。
キスする距離まで顔を彼女の頬に近づける。
一瞬硬直されたものの拒絶はないとみて、頬に軽く口づける。
「ナギ……」
2度、3度、同じようにそっとキスをする。
「こっちを向いて。唇にキスしたい。前のように」
「ん」
抱擁を緩めると、みやびが向きを変え、俺と対面する。
涙をこらえてたのか、瞳が潤んでる。
「すまない、俺のせいで悲しませて」
すぐにその柔らかい唇をふさぎ、鳥のついばみみたいな軽いキスを繰り返す。
みやびの腕が伸び、俺の首の後ろを固定し彼女の方から唇を寄せてきた。
お互いをむさぼるようなキスから始まり、いったん唇を離し、下唇を食むキス。
さらにもう一度深く舌を絡ませる。
「ん……」
名残惜しさを残しながら唇を離す。
「私もナギが好きだよ。だから悲しかった。私が未成年だと知ってからのナギの態度が」
「……すまない」
君の気持ちを無視して強引に体を奪おうとする欲望と戦っていたなんて言えない。
自分の中の醜い欲望は知られたくない。
「1人で食べたケーキは美味しくなかった」
結局俺はほとんど手を付けなかったからな。
幾ら動揺したとしても酷い仕打ちをしてしまった。
「だから――来年の私の誕生日は一緒にケーキ、食べて?もう1人にしないで」
そう言いながらみやびは胸に顔をうずめてきた。
「約束する」
そう言い、みやびの顔をあげさせ互いの額をこつんと合わせる。
「もう泣かさない」
「ホントだよ。一生分泣いたよ、このやろー」
軽く胸を叩かれる。
体的には全然痛くはないが、彼女を傷つけていたせいで心が痛い。
彼女の味わった痛みに比べたらなんてことはないが。
「猛省してる」
「ん」
ふわりとみやびの唇が俺のそれに触れ、すぐに離れた。
しばらくの間抱き合っていたが、彼女が口を開いた。
「……じゃあ、帰ろっか……」
「そうだな」
久しぶりに歩くこの道。
互いの指を絡ませながら、帰路につく。
やはり俺の隣にはみやびに居てもらいたい。
もう二度とこの手を離したくない。
家にたどり着いてみやびに食事をとらせたのはいいが、今から駅に引き返しても終電に間に合うかどうかの時間だった。
明日は公休とはいえ今回は流石にタクシーを捕まえて帰るつもりだが。
ここを発つ頃合いを見計らっていたらみやびが口を開いた。
「あのね……以前に軽く言ったと思うんだけど、実は明日から4日間中間テストなんだよね、ふふ……。あれからずっと勉強が手につかなくてね……正直、今回ヤバい……ふふ……。最後の悪あがきとして明日早起きして復習しなきゃ」
食べ終わった冷凍パスタの容器を軽くすすぎ捨てて戻ってきたかと思ったら、遠い目をし てそんなことを呟く。
笑い声が怖い。
「本当に申し訳なかった」
かといって今から俺に出来ることはないだろうが。
順位が落ちて優待生の枠から外れた場合でも俺が学費援助を申し出てもきっと断るだろう。
「だから、今日は泊って行って欲しい」
それは、どういう。
「で、朝起こしてくれると助かる。早起きして少しでも勉強しておきたいし」
……なるほど。
朝は異常なほど弱いもんな。
むしろ今まで自分の力で朝起きられた方が不思議なレベルだ。
恐ろしいほどの低血圧なのに朝学習できるのかと思わなくもないが。
でも「いいのか?」
俺が居たら気が散りそうだが。
「ナギパワーを注入したい」
よくわからない単語が出た。
「わかった。みやびがいいなら」
具体的になにをどう注入するのかさっぱりわからないが、とりあえず頷く。
寮母に「急遽泊ることになったので明日の朝飯はいらない」とメッセージを飛ばすが案の定「今度こそ男になってきな」となにか勘違いしてる返答が来た。
そんな色っぽい話ではないのだが。
というか、もはや介護レベルだ。
「明日の朝飯用に何か食えるもの、あるか?」
さっき、冷凍パスタ食べてたから多分この家にまともな食い物はないのだろうが。
「無いね。あはは」
俺が差し入れしなくなった途端にこれか。
思わず頭を抱えてしまった。
前から思っていたが、みやびは自分の体のケアとか色々と疎かにしすぎじゃないか?
以前「栄養とか考えてるか?」と聞いたら目をそらしながら「さ、サプリ飲んでるから」と言っていたが。
断りを入れ、冷蔵庫を一応チェックする。
「今回は卵すらないのか……。朝飯何喰ってた?」
「……シリアル」
「昼は?」
「学食」
そうか、ならいいか。
「……で、うどんばかり食べてた」
「こら」
平手で軽くみやびの額を打つ。
ぺちっと、いい音がしたな。
「……聞くのも怖いが夜飯は?」
「バイト前にゼリー飲料飲んで、バイト終わってからは何も食べずに寝てた。……ナギ?顔が怖いよ?」
自分の体をないがしろにしているから、怒ってるんだよ。
「わかった、とりあえず明日の朝はちゃんと摂ろう。今からコンビニ行ってなにか買ってくるからみやびは風呂にでも入っててくれ」
「生活能力が皆無でごめん……」
まったくだ。
もっと自分の体を大事にして欲しい。
とはいえバイトと学業の両立、さらには一人暮らしは大変なのだろうが。
さっと行って帰ってくる予定だったが思いのほか時間がかかってしまった。
朝飯は何をするかを悩んだ結果、ごぼうサラダとうの花と卵、念のためにインスタント味噌汁も購入した。
出来れば手料理を食べさせたかったが、コンビニではしょうがないな。
せめてだし巻き卵でも焼くか。
焼き魚も買うかと思ったが、量が多いとキツそうだしやめた。
「ただいま……みやび?」
いつもなら「おかえり」と言ってくれるのに返事が無い。
怪訝に思って見たらシャワーは浴びたのだろう、すでにパジャマに着替えてベッドで寝ていた。
中途半端な場所で寝ていたのと布団をかけていない様子をみると、寝落ちしたというところか。
相変わらず異常な寝つきの良さだ。
気絶してるのではないかと疑うレベルだ。
ここ最近は俺のせいで心労をかけたせいもあるだろうが……。
彼女にそっと布団をかけ、朝飯の為に米を予約炊飯する。
流石に今日は色々と疲れたから、俺もさっさとシャワーを浴び部屋着に着替えベッドに入る。
横で熟睡しているみやびの体をそっと抱きしめる。
柔らかく、いい香りがする。
このぬくもり、もう二度と離したくないな……。
俺も疲労が溜まっていたのか、規則正しいみやびの寝息を聞いているといつしか眠りについていた。
みやびが事前にセットしていたスマホで目を覚ました。
予告していた通り、いつもよりだいぶ早い。
俺は問題なく起きられたが……みやびはやはり熟睡して起きる気配が無い。
「朝だよ、起きて」
布団をめくり、横向きに寝ていた体を軽くゆする。
「う~~~。ぅにゃ」
ゆすっていた手を軽く振り払われてしまった。
これ、俺が居なかったら起きられなかっただろ。
ふと見ると、手を振り払った勢いで仰向けになりパジャマがめくれあがってしまっている。
引き締まった腹が……見える。
「……っ」
以前直接触った時には俺の体と違って筋肉があまり感じられない適度な柔らかさだったな。
また触りたい……。
邪念を振り払うように数度頭を振る。
とりあえずパジャマを整えなければ、と彼女の服に手をかけた瞬間おぼろげに開いた彼女の虚ろな目線が俺を捕らえた。
なんてタイミングで目を覚ますんだ。
わざとやってるんじゃないかと勘繰りたくなる。
「んにゃ……、にゃに、してるの?」
言われて気が付いたが、これではまるで俺が彼女の服をめくりあげてるように見える。
「ちっ、違う。誤解だ」
「ナギになら――いいよ」
なにがだ。
と思った瞬間、みやびの両腕が伸びてきて俺の首の後ろで組まれる。
そのままぐっと彼女の身体が近づく。
甘い吐息が耳にかかる。
「ぅ……っ」
色々と、マズい。
だけど「許しも出たし少しくらい触るのはいいんじゃないか」と邪念が膨れ上がる。
「ホントに――いい、のか?」
声が震える。
「……ぐう」
「ぐう?」
見ると二度寝しようとしていた。
「こら、起きて」
ペチンとみやびの額をはたいてしまった。
「んにゃう!?」
「なんか今日、ナギの起こし方乱暴じゃなかった?」
音は派手だったが痛くはなかっただろう額に手をやりながら恨みがましく睨まれてしまった。
「男の純情を弄ばれたからな」
「ん?今なんて」
「なんでもない。お茶のお代わりは」
「ありがと。貰う。……あれ?なんか今誤魔化された?」
「気のせいじゃないか?」
だし巻き卵を口に入れる。
我ながら中々いい焼き具合だな。
どんどんと料理のスキルがあがっていく。
初めの頃は中々上手く巻けなかったが今では店で出されるものと遜色ない仕上がりだ。
「むぅ、釈然としない」
麦茶を入れたコップ片手に睨まれてしまった。
全然迫力が無いが。
というか可愛いだけだ。
「ナギは私が学校行ってる間、これからどうするの?」
ごぼうサラダをよく咀嚼しながらみやびが言う。
「そうだな。放っておくと飯を食わない困った恋人の為に一度寮に戻って差し入れ用の常備菜を作ってくるかな」
「なんか言葉に棘を感じる。ちゃんと食べてたよ」
シリアルとうどんをな。
つくづく栄養面が心配だ。
「気のせいじゃないか?」
「誤魔化された気がする。でも確かにここキッチン狭いから料理しにくいもんね」
出来れば品数や味も多彩にしたいから、寮の広いキッチンは最適だ。
寮長らがキッチンを使うまでの間という制限があるから、俺が使わせてもらうのは昼前から夕方までの間だけだが。
「テストということは、昼には帰ってくるんだよな。昼飯になにか食いたいものがある?」
寮に帰る前に近所のスーパーで軽く食材を買って、昼飯を作っておくのもいいな。
「あ~、もしかしたらかなっぺたちとモス行くかも。ここ最近の私の心配をしてくれてて限定バーガー食べに行こうって話してたし。夕方からバイトだから食べたらすぐに帰ってくるつもりだけど」
「そうか」
一緒に昼飯が食えなくて寂しいけど、ちゃんと食べてくるのなら心配ないな。
しかしテスト期間中なのにバイトか。
テスト中なら休めばいいのにと思うが。
「ご馳走様でした。さてと、ちょっと勉強してていいかな?」
「じゃあ皿洗っとく、皿もそのまま置いてていいから」
「ありがとう」
微笑みながら言うと、さっそく勉強机に向かい集中し始めた。
邪魔しないようにさっさと皿を洗う。
とりあえず今日のテスト科目の古典に的を絞って復習するようだ。
もう1つの科目である英語は得意科目と言っていたから、今日はさほど心配なさそうだ。
学校に向かう時間になったので、揃って家を出る。
「途中まで一緒に行っていいか?」
「いいけど……駅に行くには遠回りになるよ」
「少しでも一緒に居たい」
「……ナギってそういうことさらっと言うよね」
「しばらく会えなかったからな」
責めるつもりはなかったし、そもそも俺の行動のせいでああなったのだがつい口を突いて出ていた。
それほど、みやびが居ない生活は味気なかった。
「……ゴメンってば」
「もう離さないから」と言いながら、みやびの指に絡ませるように手を握る。
「……うん」
みやびもそれに答えるようにそっと力を込めてくれる。
歩きながらポケットの中の指輪の存在を思い出した。
本当は昨晩返すつもりだったが、色々あって忘れてた。
「そうだ、これ」と彼女に指輪をかざす。
「あ」
みやびの瞳が揺れる。
彼女に「本当の番いに渡したら?」と突き返された指輪。
それを思い出したのだろう、一瞬暗い表情になった。
「嵌めて、いいか?」
もう二度と外してほしくない。
「うん。……あの時は本当にゴメン」
「いや、俺こそ不安にさせてすまない」
そして今も大事な事を黙っている。
君の戸籍が偽物だという事を。
それを知ったら、君はどう思うだろうか。
また泣かせてしまうかな。
これだけは絶対に知られてはならない。
以前そうしたように彼女の手を取り、右手で指輪を持ちゆっくりをその細い指に嵌めていく。
もしこの指輪を次に外すようなことがあれば、それは正式な結婚指輪に変える時だったらいいなと願った。
まだ朝早いという事もあり、辺りを見渡しても人通りのない閑静な住宅街。
キスしたい、と彼女の頬に触れ一撫でし、そのまま唇を近づけようとした瞬間……。
男の悲鳴が路上に響き渡った。
「な、なにやってるんだああああああああああ!ふ、ふしだらだぞ!!破廉恥だ!!!淫らだ!!!えっちだろうがあああああ」
さっきまでは人影が無かったのにと思ったが、タイミング悪く曲がり角から出てきたというところか。
みやびの同級生だろうか、同じ制服を着てブレザーのタイが同じえんじ色だ。
以前「タイの色で学年が一目瞭然なんだ」と聞いたことがある。
同学年か。
「げ、宗像」
やっぱり知り合いか。
俺の「誰?」という視線を受けて「以前言ってた、やけに絡んでくる学年一位だよ」と小声で説明してくれた。
ああ、恐らくみやびに惚れてるだろう男か。
顔を真っ赤にしてこちらを凝視している。
俺の頭の天辺から足の爪先までじっくりと何度も繰り返し見られる。
「ま、まさかその男がお前の……」
気の毒なほど顔面蒼白になっている。
好意を寄せている相手に番いが居るとは知っていても、実際に見るとやはりショックが大きいんだろう。
「そうだよ」と、俺の左手を持ち、揃いの番いの指輪を男に見せつける。
男は俺の顔と指輪、そしてみやびを交互に見比べると「く、くそ!!!!これで勝ったと思うなよ!!!!!!!!」と叫びながら去っていった。
――学校とは逆の方向に。
「……大丈夫か、あいつ?」
アレで学年一位なのか?
色々と心配だ。
「まぁ学校には間に合うでしょ」
色々と言いたいことはあったが、あえて触れないでおく。
やつの去っていった方向をしばし呆然と見送ると、みやびに袖を引っ張られた。
「続き、しよ?また誰かが来ないうちに」
「――ああ」と、みやびの腰を抱き、柔らかな唇にそっと口づけた。