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御厨ナギはいちゃいちゃしたい  作者: 希来里星すぴの


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81 恋の終わり ナギ視点

noteの方で、裏話、小ネタを掲載していってます

(TOPページ)

https://note.com/kirakiraspino


noteではこちらの前日譚「0話」も公開中

https://note.com/kirakiraspino/n/na36abbadd334

 みやびのバイトが終わるのをいつものように待つ。

 その日も何の変哲もない毎日のはずだった。

 2人で一緒に過ごすだけでも楽しい、そんな幸せな日々がずっと送れると信じて疑ってなかった。


 店から出てきたみやびは俺と目線を合わせようともせず、俺が触れるのも避けていた。

 その表情も暗い。

 なにかあったのだろうか。

 いつもなら笑顔で甘えるように話しかけてくるのに、終始無言だ。

 たまに質の悪い客が店に来るらしく、その時には不機嫌な事もあるからそのパターンなのかと思い刺激しないようにする。

 バイト中の話だと守秘義務だと色々あるだろうし。

 彼女が口を開くまで待とう。


 そう思っていたのだが、あまりにも様子がおかしい。

 彼女が話せる範囲でならいくらでも愚痴を聞くと思い「何かあった?」と水を向けてみても「ん~、別に? 疲れただけ」と素っ気ない。

 みやびは気づいていないだろうが、その口癖は明らかに何かをごまかすものだ。

 俺はそんなにも頼れないのかと思うと自分自身が情けない。


 以前行った保護猫カフェの話をするが、これも反応が芳しくない。

 店では「なんでナギにばかり猫が集まってくるの。羨ましい。なんか体からマタタビでも出てるんじゃないの?」「そんな体質嫌だな」と笑い合ってたのに。


 重い空気の中、みやびの歩みが遅くなった。

 俺は彼女の前に立ち、何かを悩んでるように俯いている彼女の顔をそっとあげる。

 途端、その大きな瞳が揺れ、涙が一筋流れた。

「ゴメン。勝手に話決められるの嫌だったか? それとも猫カフェ楽しくなかった?」

 思い当たることはまるでないが、とりあえず謝る。

 自分が彼女を悲しませたすらもわからないが、とにかく泣き止んで欲しかった。

「ち、ちが……っ」

 だが、とめどなく流れる涙は止まる気配が無い。

 いたたまれなくなり、そっと彼女をいつものように抱擁しようとするが、弱く、だが強い意志をもって俺の体は彼女の華奢な腕によって押しのけられた。


 なにがいけなかったのだろうか。

 触れて欲しくなかったのか。

 どうすればよかったのか。

 答えの出ないまま思案していると「ねえ」といつものような優しい声がした。

 だが、いつも以上にそれは甘さを孕んでいた。

 それが異常だと気づく前に「未成年は番いに選ばれないって、ホント?」という声が路地に響いた。


 息が止まった。

 何故みやびがそれを知っている?

 一般には公開されていない情報のはずだ。

 俺の様子を見てそれが真実だと確信を得たみやびは小声でなにかを呟いた。


「話を聞いて欲しい」かろうじてそういうのが精いっぱいだった。

 だが、何を話そうというのか。

「君は藤原みやびではないかもしれない。母親が戸籍を乗っ取った可能性がある」というのか。

 なにをどう言っても今の俺には彼女を傷つける言葉しか持たない。


「これまで騙していたくせにまだ何を言おうっていうの?」

 騙してない。

 俺もきみが番いだと信じてたし、今も信じてる。

 もし万が一にも違っていたとしても愛してる。

 こんなに心を動かされたのは君だけだというのに。


「あなたの事を好きになっていった私を内心嘲笑っていたの?」

 そんなことない。

 想いが通じあったとわかって心底嬉しかった。

「好きだよ」と言ってくれる君の言葉をもっと聞きたいと願った。

 俺の方がもっと愛してるよ、と思いながら。


「一人じゃまともに生活もできない私に手を差し伸べるふりして、あなたへの依存を高めていって、最後は番いなんて嘘でしたっておしまいにする気だったの?」

 きみの生活が、体が心配だったから。

「大丈夫だから」と笑う君はいつもどこか儚げで目を離したら消えていなくなりそうだから生活を支援したかった。


「――初めて人を好きになったのに」

 俺もだ。

 こんなに人を愛するだなんて思いもしなかった。

 君と出会って、世界が輝くように感じられた。

 ずっと傍に居たい。

 ずっと傍に居て笑っていてほしい。


「っ、もういいよ。終わりにしよう。これ以上傷つきたくない」

 終わりになんかしたくない。

 息が詰まりそうになる。

 君の居ない世界なんて考えられない。

 こんなにも愛してるのに。

「嫌だ。俺は君を、君の事を本当に好きなんだ、愛してい――」

「うるさい!!!!!」

 悲しい言葉をそれ以上聞きたくなくて、言わせたくなくて、唇でふさごうと思ったけど、それがまずかったのか。

 キスしようと彼女の頬に伸ばそうとした俺の手を全力で振り払われてしまった。


「あなたが私を好きになったのって番いだと思ったからでしょ? それが間違いだっていうのなら、私があなたの番いじゃないって判明したのなら、もうお互い自由になろうよ」

 みやびが何を言ってるのか理解できなくてしばし呆然としていたら、俺の掌に彼女の指輪が乗せられた。

 彼女に初めて触れ、嵌めた時には「結婚式みたいだ」とはにかんでいたあの思い出の番いの指輪。


「返す。本当の番いさんにあげたら?」

「――っ!」

「じゃあもう、会いに来ないで。連絡もしないで。――本当の番いさんとお幸せに。さようなら」

 そう、叫ぶように言うとみやびは俺の前から走り去っていった。


 追うべきか、それすらもわからなく、俺はしばしそこに立ち尽くした。





 誰も好きにならない、と漠然と思っていた。


 でも巫女の「番い(つがい)」の託宣を受け、

  俺は、

 人生初めての恋を、した。



 しかし俺たちの恋は、もう終わりだと、彼女に言われた。

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