表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/91

74 望まれるもの みやび視点

noteの方で、裏話、小ネタを掲載していってます

(TOPページ)

https://note.com/kirakiraspino


noteではこちらの前日譚「0話」も公開中

https://note.com/kirakiraspino/n/na36abbadd334

 バイトが終わっていつものナギに送ってもらう道中。

 ナギに腕を絡めながら「ね、誕生日のプレゼント、何か欲しいものある?」と囁く。

 釣書で知ったナギの誕生日がもうじきだって気づいたので軽い気持ちで聞いてみた。

 物欲なさそうだなとは思うけど、そんな彼が何を望むんだろうかっていう興味があったし、なにより初めて好きになった人にプレゼントを贈るって行為に憧れてた。

 高校に入ってかなっぺとはるっちに出会って誕生日のお祝いはしたけど、恋人と友人とはまた違うだろうし。

 ナギには、私が出来るものならなんでもしてあげたい。


「……誕生日プレゼント」

 ちょっと困ったように反芻する。

 やっぱりあまり欲しい物ってないんだなと、ある意味想像内だったから心の中で笑ってしまった。

 本当はサプライズで何かを贈ろうと思ったんだけど、趣味じゃないものを贈られても貰う方は困るだろうなって。

 もっともナギならどんなものでも笑顔で受け取ってくれそう。

「なんでもいいよ。とはいってもあまり金銭的に余裕はないけどね。何でも好きな物を言って」

 ナギの性格から私に負担がかかる高値なものは要求しないだろうけど。

「好きな……もの、か」

 すごく悩ませてしまったようだ。

 エリートな護国機関の警護隊の隊長に対してバイトしてる学生が「欲しいものある?」と聞いても困るんだろうな。

 本当に欲しかったら自分で購入するだろうし。

「服とか、身に着けるものでも、なんか食べたいものとかでもいいよ」

 食べたいものといっても以前の寿司屋みたいなのは私はちょっと遠慮したいな。

 強面の大将は終始怖かったし、なにをしてもマナー違反だって怒られそうな雰囲気だった。

 なにより場違い感が凄かった。

 私みたいな学生のような人間は全然居なく、若くて30代、後はどこかの羽振りの良いおじさんたちが釣り合わない若い女性を侍らしていた。

 しかも煌びやかな大人の女性という人たちを。

 店内の人たちも「あんな小娘がここに?」みたいな視線を送ってきたし。

 ナギは全然気づかなかったのか、あの時は女性の嫉妬の視線が痛かった。

 彼は人目を惹く顔立ちだから。


「どこか行きたい所は?」と、質問しても私もナギが行きたい場所なんて思いつかない。

 しばらく考えていたようだけど「特にないかな」と言われてしまった。

 候補があったのなら口にしてくれてよかったのに。

 そんなに私が乗り気になれない場所なのだろうか。


「うーん。別に今すぐじゃなくていいよ。じっくり考えてからでいいから」

 その時、視線がなんかじっとりとしたものに変わった……気がした。

 ナギは一瞬ためらったようだけど、ようやく口を開いてくれた。

「なんでも、いいのか?」

「決まった? うん! 頑張って奮発するから大丈夫!」

 どんなものを選ぶんだろうかと、ちょっとワクワクした私の耳を疑うような言葉が飛び出てきた。


「キス、して欲しい」

 キスかあ。

 モノじゃなくて行為できたかあ。

 まぁ物には執着しないみたいだし、ある意味納得、納得……。

 うん????

「いいよ。じゃあ……え?? は????? なに????????? 今なんて????????」

 キス。

 接吻。

 口吸い。

 ベーゼ。

 いや、単語としての意味は分かるんだけど、今この人なんつった????

『 キス して 欲しい 』

 聞き間違いじゃないよね。

 あわわわわ。

 なに言ってくれてるの、この人は!!!!!!!

「キス……って、もう、何回も……してる、じゃない」

 キスはもう何回もしてるんだけど、まだそれ以上はしてない。

 以前拒絶したせいもあるんだろうけど、あの時以降は求められる事が無かったから、私がまだ学生だから我慢してるのかなって思う。

 それにしてもキスから先の事を求められるのならある意味納得するけど、キス、なの??

 なんで???

 その疑問が通じたのか「でもみやびからは一度もキスされたことないなって」と言われた。

 実は膝枕の時にしたんだけど、そんなこと言えない。

 ナギの意識のある時に自分からキスだなんて恥ずかしくてできない。

 やり方もよくわからないし。

 あの時のようにただ単に唇を重ねるだけならできるけど、もうずっと最近はそれだけで済まなくてねっとりと絡んでくる。

 主に舌が。

 口の中を蹂躙されてるみたいで、長い間していると腰が砕けそうになる。

「それはっ! ……恥ずかしいじゃない」

 周囲に聞こえないように小声になってしまう。

「嫌か?」

 ちょっと寂しそうに言われた。

 嫌じゃない。

 望むのならなんでも、本当はキスのその先だっていいんだけど。

 あの時はタイミングが悪かっただけで。

「嫌じゃない、けど。むぅ。誕生日プレゼント、本当にそれでいいの?」

「別に今すぐでもいいけど?」

「い、今すぐはダメだよ! 心の準備が」

 それに誕生日プレゼントというのなら当日の方がいいじゃない。

「じゃあ……その、誕生日、に」

 もうそれしか言えなかった。

 どうしよう。

 イメージトレーニングみたいなのした方がいいのかな。

 ってか、当日は私からも入れた方がいいの?

 その――舌とか……。

 多分、チュッとして終わり、じゃないよね、求められてるキスって。

「それはそうと、俺の方からはいつしてもいい?」

 え、さっきから何言ってるのこの人。

 調子乗ってるよね、絶対。

 一発ガツンとやった方がいいんだろうか。

 でも。

「――いいよ」

 ナギとのキスは嫌いじゃない、ってかむしろ好きだから断れない。

 キスでこれだったら、その先ってどうなっちゃうんだろう。


 私の家について二人きりになった瞬間、ナギは遠慮なくキスの嵐を浴びせてきた。

 ホントにナギはえっちだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ