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御厨ナギはいちゃいちゃしたい  作者: 希来里星すぴの


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69 隣の部屋の情事 ナギ視点

noteの方で、裏話、小ネタを掲載していってます

https://note.com/kirakiraspino/n/n2b61a153b062


noteではこちらの前日譚「0話」も公開中

https://note.com/kirakiraspino/n/na36abbadd334

 みやびにはまだ話を持ち掛けていないが俺は明日は公休なので泊めてもらおうと思い、今の内に彼女が使用した皿を洗おうと話を持ち掛けた。 

 彼女は一人暮らしだからあまり食器の数に余裕がないので、今の内に洗っておかなければ翌朝には皿が足らなくなるし。

 最初は「自分の使ったお皿を洗わせるわけにはいかない」と固辞していたが「じゃあ、みやびはその間勉強をしておいてくれ」という流れに持ち込んだ。

 

 最初は不満そうだったが「さっさと皿を洗って、いちゃつきたいから」と言うと軽く頬を膨らませ「もう! えっちなんだから」と返された。

 とはいっても先日のような、彼女を傷つける行為はしないつもりだが。


 皿を洗い終わり、勉強をしてるみやびに声をかけようとしたら何故か硬直していた。

 顔も赤い。

 どうかしたのか? と戸惑っていたら右隣の部屋から女の嬌声が聞こえていたのに気づいた。

 確か若い女性の一人暮らしだと言っていた部屋だ。

 俺は姿を見た事が無いが、会社勤めしているらしい20代くらいの女性だと聞いたことがある。

 夜、女のこの声……つまり今その部屋で情事が行われてるということか、と思い至った時に「ダメ!!! ナギはこの声聞いちゃダメ!!」と、切羽詰まったようなみやびの声で思考をかき消された。

「ダメだよ、私以外のこういう声聞いちゃやだ」

 混乱してなにかとんでもない事を口走ってる気がする。

 しばらくの沈黙の後、顔をさらに真っ赤にして「ちがくて! いや、違うわけじゃないんだけど」とさらに言い繕う。

 ……言い繕えていない気がするが。

 俺もみやび以外の女には興味が無いが、聞くなと言われるには無理なほど女の声はデカい。

 わざと聞かせてるんじゃないかと思うくらいに。

「かといって……どうすれば」

 今後の近所付き合いの手前、壁を叩いて「うるさい」と注意するわけにもいかないだろう。

 第一、男としては邪魔をしないでやりたくもある。

 事に及ぶのなら、場所と時間と近隣住民への気遣いを考えて欲しいが。

「こ、コンビニ行こう!」とみやびは強引に俺の手を取り、共に部屋を出た。


 道中はずっと無言だったがコンビニでアイスを買い、人気のない公園のベンチに座ってアイスを食べ始めたところでようやくみやびが口を開いた。

「さっきはゴメンね。なんか変な事を口走った気がする」

 そうだな。

 あんなことを言われ、どう反応したらいいのかわからなかった。

「自分以外の女の嬌声は聞くな」ということは、つまりいつかみやびはああいう声を俺に聞かせてくれるのかと期待を抱いてしまう。

 だが、この間の失態もあってこの手の話題にはあまり立ち入らない方がいいか。

 好きだからキスの先まで進みたいのは確かだが、かといって彼女の合意の元ではないと嫌だ。

 生まれて初めて好きになった、大事な人。


「いや。それにしても大体どれくらいで終わるんだ」

 1時間くらいかかると、色々とキツい。

「大体20分くらいかな。いつも1回で終わるみたい」

 やけに詳しい。

 時間を計っているのか?

 20分。

 俺には経験が無いからわからないが、諸々含めてその時間というのは短いのか妥当なのかがわからない。

 しかも回数まで数えてるのか?

 もしかしたら、みやびもそういう事に興味があるのだろうか。

 俺の視線に気が付いて「左隣のオバさんがね! 言ってたの。あっちにも聞こえてるらしくて」

 女の声がデカすぎるのか、みやびの部屋を挟んでも聞こえるのか。

 薄々あの部屋の壁は薄いんじゃないかと思っていたが、やはりあの部屋でそういうことをするのは難しいようだな。

 隣の女の声がでかいのか、それともあれくらいが普通なのだろうか?

 情事の時に女がどれくらいの声を出すのかは知らないが。


「もういいじゃない。ね、この話は終わり!」

 アイスを食べ終わり持参していたビニール袋にゴミを入れる。

 俺も飲んでいたコーヒーのカップを差し出された袋に入れる。

 近場を散歩するためのサコッシュには色々と小物が入ってるようで便利だ。

 勉強の息抜きには、これを持ち軽く散歩をすることがあるらしい。

 バイトと勉強漬け。

 確かに息が詰まる生活だな。

 まぁ、たまに変な映画を見てストレス解消しているが。


 時間的にも頃合いだと部屋に帰ろうと促すみやびに非常に言いづらいのだが……。

 当初の目的通りに「今晩泊っていいか?」と言うと目に見えて狼狽した。

「あわわわわ、ええっと、それはどういうアレなの? アレなの?? ナギもしたいの? アレを」

 もはや混乱しすぎて何を言っているのかわかっていないのだろうか?

 アレ、が多すぎだ。

「ち、違う」

 意図は通じたので、かろうじてそれだけ言えた。

 したい? と言われたらそれはしたい。

 以前拒絶されたからみやびもまだその気ではないだろうし、初めてそういう行為をする時には、きちんと時間を取ってちゃんと彼女を愛したい。

 あんな壁の薄い部屋ではなくて。

 いや、彼女の部屋で、というのは魅力的なのだが……。


「明日休みだし、帰るのが億劫だから泊まりたいというだけだ」と弁解する。

 決してやましい想いではない、と強調する。

「そ、そっか。ナギも今日は仕事終わりで疲れてるもんね、そうだよね」と胸をなでおろす。

 それはなんだか「まだその関係には進みたくない」と明確に拒絶されてるみたいで若干胸が痛い。

 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか「ん」とみやびが右手を差し出してきた。

 微笑みで返し、その手を取る。

 俺たちは俺たちのペースで先に進めばいいか。

 焦らずともまだ二人の時間は先が長いのだから。


 ……と思っていたのだが。

 このしばらく後にあんな思いがけない出来事が待ち受けてるとは思わなかった。

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