39 会議後、蓮見との再会 ナギ視点
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noteではこちらの前日譚「0話」も公開中
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会議が終わり、いち早く出て行った蓮見さんを捕まえて声をかける。
「蓮見さん。お久しぶりです」と頭を下げる。
声をかけたのが俺だとわかって、普段表情を崩さない彼が破顔で答えてくれる。
「おお、御厨。久しぶりだな。お前、護国機関入りしてから全然こっちに顔見せないから弘原海先生が寂しがってたぞ」
「不義理で申し訳ありません」
実際、高校卒業後に護国機関入りしてからは多忙を極めた。
入隊後すぐに隊長として任命され、さらには俺の容姿に目を付けた広報が「白の貴公子」としての偶像を作り上げた。
始まりは「動画を撮るだけ」だと言っていたが、後から考えると色々と不自然な部分もある。
子供の頃から「顔立ちがいい」と言われていた俺の容貌を宣伝に利用しようとしていたのではないか?
「白の貴公子」などとふざけた名称をつけられてからは、護国機関のイメージアップとやらで様々な式典などにも参加させられた。
聖地巡礼もその一環だ。
この間行った神社や店もかなり盛況だと聞いた。
いわく俺が購入した物が品切れを起こしているとか。
酔狂な人間が多いな、この国は。
弘原海先生は俺が子供の頃からの武術の先生で、一通りの戦い方は彼に教わった。
剣術から格闘技まで精通してる彼には本当に世話になった。
その人間離れした強さから彼もなんらかの異能持ちではと推測されているが、自身の事は話さないから定かではない。
俺の祖父が弘原海先生と縁があったとの事で、両親の海外赴任と重なった高校時代には彼の邸宅で3年間過ごしたこともある。
そして、蓮見さんは長年弘原海先生の秘書をしている。
彼にどういった経歴があってその道を選んだのかは知らないが、異能暴走事件の被害遺児や力の制御が出来ずに親からも疎まれ居場所をなくした子供の異能力者らを先生が衣食住含めて面倒を見てるから、もしかしたらその線かもしれない。
さらに、蓮見さんには異能持ちだとか元ノラネコだったという噂もある。
「白の貴公子さまは色々と忙しいみたいだしな」と、子供をあやすように笑う。
先生の秘書の仕事と兼ねて、保護された子供たちの世話も彼がしているから、相手が成人済みのいい年した男だろうが子ども扱いする癖は抜けないようだ。
軽く頭を撫でられる。
「その呼び方はやめてくださいよ」
思わず眉根を寄せてしまった。
「ははは。そういやさっき敬神らが話題に挙げてたが、巫女に番いを探してもらったとか?女嫌いのお前がなあ。身を固める気になったとは親御さんも喜んでるだろ」
蓮見さんはしみじみ言う。
弘原海先生宅で過ごしていた3年間の間にも俺を訪ねて見ず知らずの女が来たこともある。
高校自体は男子校だったのに、電車通学の際に俺を見て一目惚れして着いてきただのと騒いでいたこともあったな。
バレンタインにも押しかけられて困った思い出もある。
そういう類の女たちはみな追い返したが、やけにしつこくて苦労させられた。
苦い思い出だ。
その度に「お前もカノジョを作ってみたらどうだ?」と蓮見さんにからかうように言われたな。
「興味がないので」と躱していたが。
「はい、彼女と知り合ってからは毎日が充実しています。ただ彼女は学生なのでまだ結婚話は進められませんが」
「是非、今度暇を見つけて相手の子と一緒に先生の所に遊びに来てくれ。……加賀宮、お前もな」
俺たちを横目で見てさりげなく通り過ぎようとしていた加賀宮が蓮見さんに首根っこをつかまれて「ちっ」と舌打ちした。
不快さを隠さずに「……あのおっさん話がなげーんだよ」と呟く。
「それだけお前が心配ってことだ。御厨と違ってお前は子供の頃から危なっかしいからな」
「いつまでもガキ扱いすんじゃねぇよ」
不貞腐れたような態度で吐き捨てる。
そういう所が先生も心配してる所以なんだろうな。
加賀宮も弘原海先生の所で暮らしていたが、いきさつは知らない。
恐らくあいつも他の子供ら同様異能暴走事件の被害者で他に身寄りが居なかったからだと思うが、個々の領域に立ち入る気はないから聞いていない。
子供の頃から俺たちは弘原海先生に師事していて加賀宮は俺の兄弟子という、古くからの腐れ縁だ。
進学か就職かで悩んでた時に護国機関入りを勧めたのもやつだが、多分俺をこき使うためだったんだろうなと今では思う。
噂によると「広告塔としてちょうどいい見た目の男がいる」と広報に俺を売ったのも加賀宮だという。
それはかなり信ぴょう性が高いと思う。
ある意味俺が護国機関入りしたことによって三つ目の巫女との縁が出来、みやびと知り合えたからある意味では感謝してるが。
「あーハイハイ、その内行けたら行くっておっさんに伝えてくれ。じゃあ俺は腹減ったんで飯を食いに行くからな」
行く気はなさそうだなと思っていたら「お前、それ絶対に来ないやつだろ」と蓮見さんが加賀宮の頭を軽く小突いた。
尚も加賀宮は舌打ちをしてさっさと去ってしまった。
俺は蓮見さんに礼をして辞する。
そんな俺の背中を参番隊隊長の五行が睨みつけていた。




