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御厨ナギはいちゃいちゃしたい  作者: 希来里星すぴの


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36 夏季講習前本屋で みやび視点

noteの方で、裏話、小ネタを掲載していってます

https://note.com/kirakiraspino/n/n17e524a6235d


noteではこちらの前日譚「0話」も公開中

https://note.com/kirakiraspino/n/na36abbadd334

 参考書を買いに来た駅前の大きな本屋で思いがけない人に出会った。

「加賀宮さん?」

 乗り物系の雑誌コーナーに居たけど、そういう趣味なんだろうか。

 昔走り屋やってたと言われても遜色ない見た目してるけど。

「ん? ああ。珍しいな。そうか、ナギは今日は仕事だったか。朝から機嫌が悪かったな、そういえば」

 私が夏休み中でしかもバイトも休みで1日フリーなのに、残念ながら今日はナギは仕事だ。

 今日みたいな日って機嫌悪いんだ。

 恒例となった、朝の「おはよう」メッセージをやり取りした時にはそんなそぶり一切なかったのに。

 ちなみにいつの間にかおはようとおやすみではお互いの写真を撮って送るようになった。

 寝起きのままの写真は流石に恥ずかしくて送れないから、彼に送るのはきちんと身だしなみを整えた後の写真なんだけど。


「加賀宮さんこそシオンさんは今日は一緒じゃないんですね」と言うと眉間にしわが寄って「あいつと四六時中居るわけじゃない」と不機嫌そうに返された。

 とはいっても、私の中では2人セットなんだよなぁ。

 メイドカフェに初めて来たときにも「あ~ん」ってやってたし。

 加賀宮さんは無視してたみたいだけど。

 アレを見た時には見てはいけないものを見てしまったのかと思ったけど、ナギ含めて3人とも平然としてたから日常茶飯事なのだろうか。

 それにしてもシオンさん、よくこんな怖そうな人をからかえるな。

 あの人見た目に寄らずに豪胆だな。


 ちらと彼の左耳を見たら、以前渡したイヤーカフが着けられていた。

 気に入ったんだろうか。

 だったらいいな。

 私の視線に気が付いたのか、視線を外しながら耳に装着しているイヤーカフを撫でた。

 わかりにくいけど、照れているのだろうか。


「そういやカレー受け取った。――旨かった、礼を言う」

「ふふっ、どういたしまして」

 あれからカレーを作ると、一食分だけ自分が食べて残りは全部ナギに渡してる。

 シオンさんと加賀宮さんとで分けてるらしい。

 名前を書いて冷凍庫に入れてるのにいつの間にか無くなってるとナギから愚痴られたことがあった。

 しかも、毎回無くなるのはナギの分だけで、加賀宮さんとシオンさんの分は無事らしい。

 怖いな、寮生活。

 というかちゃんと盗る相手を選んでるのが笑っちゃいけないけど笑える。

 個人的には隊長なのにおそらく隊員だろう人らに私物を盗まれるって大丈夫なんだろうかと心配になるけど、加賀宮さんの私物には手を出しづらそうだからナギが狙われるのかもしれない。

 あと、シオンさんも怒ると怖そうだし。

「あのカレーには、じゃがいもは入れないのか?」と聞かれた。

 じゃがいもかあ。

 実家で食べていた時には確かに入っていたし、とろみがつくからさらに美味しくなるんだけど。

「冷凍すると食感が悪くなるから、入れないですね。母のカレーには入ってましたが」

 加賀宮さんが残念そうに「そうか」と呟く。

 じゃがいもを入れると2日目にはとろみが増すから私も好きなんだけどなぁ。

 以前調べたら冷凍する前にじゃがいもを鍋の中ですりつぶすという方法があるってネットで見たし、今度はそれを実行するのもいいかもしれない。

 ナギは「美味しい」と喜んでくれるけど、もっと料理上手になりたいな。

 彼が私の為に調理してくれるお惣菜はどれもこれも美味しくて、恋人としては複雑な気分だ。 


 あまり立ち話をするのもどうか、もう立ち去った方がいいのかなと思案していたら、加賀宮さんは私が抱いてた参考書に視線を向けた。

「参考書? んなもん買わずにナギに教えてもらえばいいじゃねえか」

「え。でもうち椿ヶつばきがしま高校ですよ。もう学校を卒業して数年経ってるナギにはちょっと厳しいんじゃ」

 校風が緩いとはいえうちはあれでもかなり偏差値が高い学校だ。

 全国でもかなりの上位だ。

 そして確かナギは今22歳だっけか。

 大学には進学せずに高校卒業後に護国機関入りした、と公式SNSに書いてた。

 とはいえプライベートはあまり明らかにされてないからどこの学校に通っていたかとは一切知らないけど。

 あ、でも多分釣書きに書いてあったな。

 プライベートに立ち入るようでまともに目を通してなかったけど。


「知らないのか? あいつ宮清みやせ高等学校出身だぞ」

「え!」

 それって偏差値ランキング不動の一位じゃない。

 ついでにいうと男子校だ。

 ナギの女嫌いは筋金入りだな。

 多分学校を選んだきっかけは男子校だからだろうな。

「そうなんですね」

 頭が良すぎて逆に頭おかしいやつが通う学校とまで揶揄されてるくらいの高偏差値校だ。

「しかもあいつずっと首席だったらしいぞ」と追い打ちが来た。

 思わず天を仰ぐ。

 完璧星人か、白の貴公子さま。

 眉目秀麗の上に、頭脳明晰という属性まで付属してきた。

 もはやなにが苦手なのか知りたい。

 というか苦手なものがあるのか。

 あの人こそ異能なんじゃないの?

 ちゃんと調べた方がいいじゃないの?護国機関。


「……あれでもただの人間らしいから、そこは安心しろ」

 考えが読まれてしまった。

 ただの人間というレベルを超越してる気がするけど、そう結論づいてるのならそういうことなんだろう。

 非常に疑わしいけど。

「世の中には不思議な人もいるんですね」

 思わずしみじみ呟いてしまった。

「他人事みたいに言うが、お前の番いじゃねーか」

 と言われてもあまり自覚がないんですけど。

 いまだあの整った顔で見つめられると心臓に悪い。

 でもそっか、宮清高首席なら勉強見てもらえるかな。

 学校の夏期講習通いを考えていたけど、行かなくてすむのなら、ナギと一緒の時間が過ごせるのならそれに越したことないしなぁ。

 ナギの仕事が終わったら聞いてみよう。


「もっともあの恋愛ぽんこつが自制して恋人の勉強を見てやれるかは不明だがな」と加賀宮さんがぽつりとつぶやいていた。

 大丈夫でしょ……多分。

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