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報告と提案

 夜、リビングの机に座ったあゆみは、目の前のノートパソコンをじっと見つめていた。指先は震え、画面に映るログイン画面がどこか現実感を欠いて見える。


「ログインして、受験番号を入力すれば結果が見られるだけ……。」


 自分にそう言い聞かせても、心臓の鼓動がやけに大きく響く。試験結果が発表されるこの日を待ちわびていたはずなのに、いざその瞬間が目の前に迫ると、怖くて指が動かない。


「あゆみ、大丈夫?」


 背後からすばるの声がした。優しいその響きに、少しだけ緊張がほぐれる。


「……怖いです。もし、ダメだったら……。」


「あゆみ、どんな結果でも、君がこれまで頑張ってきたことは何も変わらないよ。それに、結果がどうであっても、僕が隣にいるから。」


 すばるはそっとあゆみの肩に手を置き、安心させるように微笑む。その言葉に、あゆみは大きく息を吸い込んだ。


「よし……やります。」


 あゆみは意を決してログインボタンをクリックし、受験番号を入力する。次に進むボタンを押すと、画面が切り替わり、数秒の待機時間が訪れる。


(この時間、長すぎる……!)


 心臓が喉まで跳ね上がりそうな感覚を覚えながら、画面を見つめる。そして、表示された結果――。


「あった……!」


 目の前に現れた「合格」の文字。自分の受験番号を何度も確認し、間違いないことを確信した瞬間、あゆみは声を震わせた。


「私の番号、ありました!合格です!」


「本当に!?やったじゃないか!」


 すばるが歓声を上げ、子どもたちも驚いた顔で駆け寄ってきた。


「すごいの?おめでたいの?」


 れんが聞くと、すばるは笑顔で頷いた。


「そうだよ。あゆみちゃんが頑張った成果だ!」


「すごいね!あゆみちゃん!」


 りおが手を叩きながらぴょんぴょん飛び跳ねる。あゆみはその無邪気な姿を見て、ようやく少しずつ喜びが実感として湧き上がってきた。


「ありがとうございます……みんな、ありがとう。」


 目が潤むのを感じながら、あゆみは何度も深呼吸を繰り返した。落ち着きを取り戻すと、ふと実家のことが頭をよぎった。


(この結果、早く伝えなきゃ。)


 あゆみはすぐにスマートフォンを手に取り、実家へ電話をかけた。数コールの後、母の穏やかな声が聞こえた。


「あら、あゆみ?どうしたの?」


「あのね、お母さん……一次試験、合格したよ!」


「本当!?よかったわね!おめでとう!」


 電話越しにも母の笑顔が感じられるようだった。母の喜びに胸が温かくなる。


「でも、まだ一次試験だからね。二次試験が本番だし、気を引き締めないと。」


「そうね。でも、せっかくだからお祝いも兼ねて、ちょっと息抜きでもしたら?みんなで旅行に行くのはどう?」


 母の提案に、あゆみは少し驚いた。


「え、お父さんがそんなの許すはずないよ……。」


「あら、じゃあ日帰りでテーマパークに行きましょう。あそこなら気軽に楽しめるわよ。それに、星宮先生と子どもたちも一緒にどう?」


「えっ……すばるさんたちも?」


 突然の提案に戸惑いながらも、あゆみは電話越しの母の楽しそうな声に引き込まれていった。


「いいじゃない。たまにはみんなで出かけるのも悪くないわよ。それに、子どもたちとももっと仲良くなりたいし。」


「……わかった。すばるさんにも聞いてみる。」


 母の提案に応える形で話を進め、あゆみは電話を切った。


(お母さん、本当に嬉しそうだったな……。)


 母の言葉の裏にある、どこか特別な感情を感じながらも、それが何なのかはまだ分からないあゆみだった。

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