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余裕のある大人の背中

 リビングに入ると、待ちきれなかったりおが全力で駆け寄ってきた。

「ゆうきおじちゃん!」

 小さな体で勢いよく抱きつくりおに、ゆうきはよろけながら笑う。

「うわっ、ちょ、りおちゃん!今日も元気だな!おじちゃんじゃなくて、まだお兄ちゃんだぞー!」

「だって、りおから見たらおじちゃんだもん!」

 無邪気に笑うりおの声に、ゆうきは苦笑しながらも肩をすくめた。


 その光景を見ていたれんが、冷静に近づいてきた。

「ゆうきおじさん、久しぶり。」

 少し大人びた挨拶をする兄に、ゆうきは「またおじさんって言うのか!」と抗議しつつ、れんの頭を軽く撫でる。

「でも、礼儀正しくなったな。さすが兄ちゃんだ。」


 そんなやりとりを遠巻きに見ていたあゆみは、彼らのやりとりの中に自然な温かさを感じた。


 リビングでは、ゆうきが子どもたちと遊び始めていた。

「ゆうきおじちゃん、このブロックで何か作って!」

「いいぞ、じゃあお城でも作るか?」

「すごい!大きいの作ってね!」


 子どもたちの笑顔と楽しそうな声が部屋いっぱいに響く中、あゆみたちはダイニングテーブルに座り、勉強に集中していた。


「教職教養はさ、単純な暗記だけじゃなくて、こういう背景や意図を理解した方が覚えやすいよ。」

 遥香が教職教養のテキストを広げながら実例を交えて説明してくれる。

「あ、そうなんですね……じゃあ、この法規の目的って?」

 あゆみが質問すると、遥香はうなずきながら答えた。


「例えばこの法律は、子どもの権利を守るために作られたものなの。現場だと、こんな風に活用することがあるよ。」


 すばるも加わり、具体的なエピソードを交えながらアドバイスを送る。

「そうそう、たとえば君が将来担任を持った時、この考え方が役に立つと思うよ。」


 三人の会話は真剣そのものだったが、部屋の片隅で笑い声が弾けた。


「ゆうきおじちゃん、これ見て!お城が完成した!」

「おー!すごいじゃないか!これならドラゴンも怖がって近づけないな!」


 そのほのぼのとしたやりとりに、ダイニングテーブルで勉強していたあゆみがふと笑みを浮かべる。

「すごいですね……子どもたちともこんなにすぐ仲良くなれて。」


 遥香が微笑みながら答える。

「子どもって正直だから、向き合ってあげればすぐ打ち解けるのよ。特にゆうきは、子ども心を忘れてないからね。」


「おいおい、それ褒めてるのか?」

 ゆうきが軽く肩をすくめて見せると、遥香が笑いながら「もちろん」と応じる。


 そのやりとりを見ながら、あゆみがぽつりとつぶやいた。

「私も、みなさんみたいに余裕のある大人になりたいな……。」


 その言葉に、ゆうきが急に「ちょっと待った!」と声を上げた。

「余裕のある大人って、このすばるのことも入ってる?」


「え?そりゃもちろん……。」

 あゆみが首を傾げながら答えると、ゆうきはニヤリと笑って言った。

「いやいやいや、こいつがどれだけ余裕なかったか知ってる?あゆみちゃんとの初デートの時!」


「ゆうき!その話はやめろ!」

 すばるが慌てて止めに入るが、ゆうきは止まらない。

「あれは笑ったよ。デートの前、こいつずーっと『どう言えば自然かな』とか、『どこに連れて行けば自然かな』とか、ずっとおれに泣きついてきてたんだぜ!」


「ええっ!?」

 あゆみが驚きの声を上げると、遥香も笑いながら続ける。

「そうそう。その日、私たちが子どもたちを預かってたんだけど、れんが『パパ、鏡に話してたよ!鏡ともおしゃべりできるの?』って目をキラキラさせてたのよ。きっと鏡に向かって口説き文句の練習でもしてたのね。」


「だからやめてって言ってるだろ!」

 すばるが顔を真っ赤にしながら必死に二人を止めようとするが、遥香とゆうきは笑いを止めない。


 その様子に、あゆみもつい吹き出してしまった。

(こんな一面があったなんて……。)


 和やかな空気に包まれたリビングで、あゆみの試験への焦燥感は少しずつ和らいでいく。遥香やゆうきとの距離も縮まり、自分の中に新たな力が湧き上がるのを感じていた。

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