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頼る勇気、共に進む道

 夜も更けたリビング。あゆみは机に向かい、すばるのアドバイスを元にディスカッション形式で勉強を続けていた。

 教職教養のテキストを読み上げ、すばるに問いかける。

「この〇〇法ってさ、いつ頃できたのかは覚えたけど、どうして必要だったんだろう?」


 すばるは少し考え込んでから答えた。

「たぶん、その当時の社会背景とか、学校現場での課題が関係してるんじゃないかな?例えば……。」


 二人の会話は深夜まで続き、あゆみは少しずつ「人と一緒に学ぶ」ことの大切さを実感し始めていた。

(教えてもらうだけじゃなくて、一緒に考えることが、こんなにも勉強になるなんて……。)


 しかし、一朝一夕で劇的に結果が変わるわけではなかった。模擬試験の結果は少しずつ向上しているものの、焦燥感は消えない。

「……間に合うのかな。」

 試験日が迫る中、あゆみの不安は募るばかりだった。


 ある夜、リビングで仕事をしていたすばるは、隣でため息をつくあゆみの姿を横目に見ていた。何度も同じ箇所を読み返し、頭を抱えている姿に、すばるの心はざわつく。

(もっと直接的に力になれる方法があるはずだ。)


 ふと思いついたすばるは、翌日、大学時代の友人である遥香に連絡を取った。遥香は小学校の教師として働いており、教職教養や法規の知識を実務で活かしている経験者だ。


「遥香、ちょっと頼みがあるんだけど……。」

 事情を説明すると、遥香は快く了承してくれた。

「面白そうじゃない。ゆうきも一緒に連れて行っていい?」

「もちろん、大歓迎。」


 こうして後日、遥香とその恋人であるゆうきが、あゆみの家を訪れることになった。



 週末の午後、インターホンが鳴り、あゆみは少し緊張しながら玄関へ向かった。扉を開けると、明るい笑顔の女性と柔らかい雰囲気の男性が立っていた。

「あなたがあゆみちゃん?初めまして、天野遥香(あまの はるか)です。小学校の先生をしています。すばるとは大学時代の友人です。」

 遥香が軽く頭を下げて自己紹介すると、隣の男性も笑顔で続けた。

「俺は空野裕樹(そらの ゆうき)。心理士をしていて、彼女の……まあ、恋人ってやつで、すばるの幼馴染だ。」


「あ……初めまして、如月歩己(きさらぎ あゆみ)です。」

 あゆみは不意打ちの自己紹介に少し戸惑いながらも、なんとか返事をする。


「今日は少しでも力になれたらと思って来ました。気楽に行きましょうね。」

 遥香が優しく微笑むが、あゆみの頭の中には「力になる」という言葉が引っかかっていた。


(力になるって何?どういうこと……?)

 何の話か分からずに混乱するあゆみの様子を察したのか、背後からすばるがリビングから顔を出した。

「2人とも久しぶり!急に頼んでごめんね。」

 和やかに挨拶を交わす姿は、彼らが親友であることを物語っていた。


「あゆみ、もしかして聞いたかもしれないけど、大学時代の友人の遥香とゆうきだ。2人にはあゆみの勉強の手助けをしてもらおうと思って呼んだんだ。」


「あ、そういうことだったんですね。ありがとうございます。」

 すばるの説明で状況を理解したあゆみは、少しほっとしたように頷いたが、それでもまだ緊張は残っていた。遥香とゆうきが「先生」としてしっかりとした肩書きを持っているのに対し、自分はまだ勉強中の身だという思いが、どうしても頭を離れない。


(ちゃんと質問についていけるかな。変なこと言って笑われたらどうしよう……。)


 そんなあゆみの心の声を察したのか、すばるが軽く笑いながら肩を叩いた。

「気楽にやればいいよ。二人ともそういうのに慣れてるし、今日の目的は一緒に楽しく勉強することだから。」


「それじゃあ、リビングに行きましょうか。」

 遥香が提案すると、ゆうきが軽く手を挙げて笑った。

「お邪魔しまーす。ところでリビングって、子どもたちのミニカーとか散らかってたりする?そういうの、俺けっこう好きなんだよね。」


 その軽口に、あゆみは思わずクスリと笑みを浮かべた。少しだけ、緊張がほぐれていくのを感じた。


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