表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/78

未来への余韻

 朝日が差し込む中、あゆみは机に向かい、便箋を前にして静かに考え込んでいた。子どもたちや中川先生への感謝をどう伝えようか――そんな思いが胸を巡っている。


「何て書けばいいかな……。」


 ペンを手に取り、まずは中川先生への言葉をしたためる。


「中川先生、教育実習ではたくさんのことを教えていただき、ありがとうございました。未熟な私にとって、先生の言葉一つひとつが支えになりました……。」


 書きながら、あの日の職員室でのフィードバックや、子どもたちとの接し方についてのアドバイスが思い出され、自然と微笑みが浮かんだ。


 便箋を封筒にしまい、一息ついたそのとき、リビングかられんとりおの元気な声が聞こえてきた。


「先生!鬼ごっこしよう!」


「違うよ!あゆみ先生は休みの日だよ!」


 二人のやり取りを聞きながら、あゆみは笑みを浮かべた。


「私、先生じゃないよ。でも、鬼ごっこくらいなら付き合ってあげる。」


 リビングに顔を出すと、二人は嬉しそうに手を挙げた。「やったー!」と歓声を上げる姿を見て、あゆみの胸に温かなものが広がる。


 午後、あゆみは近所の書店で教採の問題集を買い込んだ。最新年度の問題集や模擬試験集がずらりと並ぶ中、どれを選ぶべきか悩む。


「これ全部覚えられるのかな……。」


 不安が胸をよぎるが、頭の片隅には子どもたちの笑顔が浮かぶ。


「そうだ、あの子たちみたいに頑張ればいいんだよね。」


 自分に言い聞かせるように小さく頷きながら、問題集を抱えて会計を済ませた。


 その夜、あゆみはリビングでれんとりおと一緒におやつを食べていた。チョコレートの包み紙を広げながら、ふと二人があゆみの手元をじっと見ているのに気づく。


「これ、食べたいの?」


「あっ……うん。」


 あゆみはチョコレートを半分に割り、それぞれの手に渡した。二人が嬉しそうに頬張る姿を見て、あゆみは思わず微笑む。


「これ、あまりしないよね。」


 すばるがぼそりとつぶやいた。その言葉に、あゆみは首を傾げた。


「何が?」


「君が自分のものを自然に分けてあげたの、珍しいんじゃないかな。」


 その言葉に、あゆみの手が止まる。


「あ……確かに、そうかも。」


 すばるは優しく微笑んで言った。


「家族って、そういうものだよ。共有するのが当たり前になっていく。でも、その一歩を踏み出せた君は、もう名実ともに家族だよ。」


 その言葉に、あゆみは少し照れながら頷いた。胸の中に、ぽっと小さな灯りが灯ったような気がした。


 あゆみは机に戻り、問題集の最初のページを開いた。「まだまだ道のりは長いけど……やってみよう。」子どもたちの手紙や似顔絵が、そっと引き出しの中から彼女を見守っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
是非こちらもご覧ください!

この道を歩む登場人物

「砕けた昴」と「この道を歩む」は、関わり合う物語です。

それぞれのキャラクターが織り成すストーリーが、互いに新たな視点を与えてくれます。

それぞれの視点で紡がれるストーリーを、ぜひご覧ください!

砕けた昴

心がほどける時間

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ