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学びの日々



 朝の空気が頬を撫でる中、あゆみは実習初日の慌ただしさを思い出しながら学校の門をくぐった。今日は見学2日目。まだ授業を任されることはなく、観察と準備に専念する日々だ。


「おはようございます!」


 元気な子どもたちの挨拶が響く中、あゆみは笑顔を作りながら応じた。しかし、その裏で内心の緊張感は増すばかりだった。


 教室に入ると、子どもたちが集まってきた。ひとりの男の子が、興味津々な目で質問を浴びせてくる。


「先生、彼氏いるのー?」

「先生って何歳なの?20歳?30歳?」

「先生の髪型って、なんでそんななの?」

「結婚してるのー?」


 無邪気だが無神経とも取れる質問の嵐に、あゆみの笑顔は引きつった。


「え、えっと……それは秘密だよ。」


 笑って返したものの、子どもたちはさらに勢いを増して、「なんで秘密なの?」「先生、赤くなってる!」とからかい始める。


「やっぱり苦手だな……。」


 あゆみは心の中でそう呟き、逃げるように視線をそらした。




 昼休み、職員室で中川先生と話す機会があった。


「如月さん、どう?子どもたちと接するのは。」


 中川先生の問いに、あゆみは苦笑いを浮かべた。


「正直、子どもたちの無邪気さに圧倒されています……。質問が直球すぎて、ちょっと戸惑っちゃいますね。」


 その言葉に、中川先生はクスリと笑った。


「まあ、あの年頃の子どもたちは、思ったことをそのまま口にするからね。悪気はないんだけど、大人からするとびっくりすることも多い。」


「はい……それが分かっていても、やっぱり少し苦手で……。」


 あゆみが俯くと、中川先生は優しい声で続けた。


「でも、それだけ君に興味を持っている証拠だよ。慣れれば、彼らの純粋さがむしろ励みになる時もある。」


「そう……なんですね。」


 まだ実感は湧かないが、その言葉に少しだけ気持ちが軽くなった。


 


 その日の夕方、あゆみは家に帰り、リビングでくつろぐすばるさんに報告を始めた。


「すばるさん、今日も子どもたちに質問攻めにされて……。それに指導案がどうしてもうまくかけずに期限ぎりぎりになりそうで。正直、ちょっと疲れちゃいました。」


 すばるさんはあゆみの言葉に共感したように頷き、微笑んだ。


「分かるよ。僕も教育実習の時は、色々と戸惑ったことがある。指導案だって教材観や児童観、指導観を書き上げることに苦労したし、日誌を書くのも大変だった。それに、授業は思った通りになんていかないしね。」


「えっ、すばるさんでもそうだったんですか?」


 あゆみが驚いて尋ねると、すばるさんは少し照れたように笑った。


「もちろん。だから、指導案を完璧にしようとするよりも、担当の先生に助言をもらいながら、子どもたちの反応を見て調整していくことが大事だよ。」


 その言葉に、あゆみの表情が少し明るくなった。


「そうなんですね……。じゃあ、私ももっと気楽に考えてみます。」


「うん、そうだ。それに、君が苦手だと思う部分も、経験を積めば少しずつ慣れてくるよ。」


 すばるさんの言葉に背中を押されるように、あゆみは静かに頷いた。


「……ありがとう、すばるさん。」


 


 その夜、机に向かったあゆみは、新しい指導案の作成に取り掛かっていた。頭の中には子どもたちの笑顔と無神経な質問が浮かびつつも、どこか不思議とやる気が湧いてきた。


「もう少し頑張ろう。」


 あゆみは小さく呟き、未来への第一歩を力強く踏み出す準備を始めた。



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