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実習の初日、新たな一歩

 朝の冷たい空気が心地よく、澄んだ青空が広がる実習初日。あゆみは、小さな緊張感と大きな期待を胸に、小学校の門をくぐった。


「ここが……私がこれから学ぶ場所。」


 子どもたちの笑い声が響き、元気よく挨拶をする姿が見える。普段の大学とは全く違う雰囲気に、あゆみは少し戸惑いながらも足を進めた。


 職員室のドアをノックすると、中から温かい声が聞こえた。


「どうぞ。」


 中に入ると、実習担当の主任教諭が笑顔で迎えてくれた。彼の名は中川悠真(なかじま ゆうま)。背が高く、眼鏡越しの穏やかな目が印象的だ。


「如月あゆみさんだね。今日はよろしくお願いします。」


「あ、はい!よろしくお願いします!」


 あゆみは緊張しながらも、深くお辞儀をして挨拶をした。中川は微笑みながら、少し柔らかい声で続けた。


「教育実習というのは、ただ教壇に立つだけじゃなくて、子どもたちと一緒に成長する場でもある。気楽にいこう。でも、責任感を持つことも忘れずにね。」


「はい……ありがとうございます!」


 その言葉に、あゆみの緊張が少しだけほぐれた。


 最初のクラスは4年生。教室の中には明るい声が響き、子どもたちが元気いっぱいに動き回っている。中川先生が教室に入ると、子どもたちは一斉に注目し、挨拶の声が飛び交った。


「みんな、今日は新しい先生が来てくれるよ。教育実習の如月先生だ。」


 子どもたちの目が一斉にあゆみに向く。興味津々の視線に、あゆみは一瞬戸惑ったが、できるだけ明るい笑顔を浮かべた。


「みんな、こんにちは。如月あゆみです。短い間だけど、一緒に楽しい時間を過ごしたいと思っています。よろしくお願いします!」


「よろしくおねがいしまーす!」と元気な声が返ってくる。


 だが、その直後、子どもたちの口から次々と無遠慮な質問が飛び出した。


「先生、何歳? 20歳? 30歳?」

「先生って彼氏いるのー?」

「ねえ、先生って何の大学行ってるの?」

「先生、お昼ごはん何食べるの?」


 一斉に浴びせられる質問の嵐に、あゆみは思わず顔を引きつらせる。


「ちょ、ちょっと待ってね、順番に……!」


 小学生らしいデリカシーのなさとテンションの高さに圧倒され、あゆみは冷や汗をかきながらなんとか答えていったが、内心では「やっぱり苦手だな……」と思わずにはいられなかった。


 昼休み、中川先生と職員室で話す機会があった。


「如月さん、初日どうだい?子どもたちの元気に圧倒されてるかな?」


「はい……少し……でも、楽しいです。」


 あゆみが苦笑いしながら答えると、中川先生は微笑みながらうなずいた。


「慣れるまでが大変だよ。でも、慣れてしまえば、彼らの素直さやエネルギーが逆に癒やしになる時もある。」


「そうなんですね……。」

 あゆみはまだその感覚を理解するには遠かったが、少し気持ちが軽くなった。


 中川先生はカップを手に取り、ふと思い出したように尋ねた。


「ところで、如月さんはどうして教師を目指そうと思ったんだい?」


 その質問に、あゆみは一瞬迷ったが、正直に答えることにした。


「高校の時の担任だった星宮先生という方がきっかけです。すごく素敵な先生で、憧れて教育学部に進みました。ただ……今は子どもたちと接する中で、小学生の教育にも興味を持つようになって。それで、苦手意識があるながらも、小学校の先生を目指してみようと思いました。」


 その言葉を聞いた中川先生は、少し驚いたように目を丸くした。


「星宮……そういえば昔、母からその名前を聞いたことがあるよ。珍しい苗字だから印象深くてね。もしかして、その先生の名前ってすばるだったりする?」


「えっ……そうです!星宮昴ほしみや すばる先生です!」


 あゆみが目を輝かせて答えると、中川先生は納得したように微笑んだ。


「やっぱり……それなら母が昔担任をしていた人だよ。母さんが聞いたら喜ぶだろうな。」


「そんな……偶然なんですね……!」

 あゆみは、星宮先生の名前がこんな形でつながることに驚きと感動を覚えた。


 帰り道、夕日が校舎を染める中、あゆみは静かに歩きながら今日の出来事を振り返った。


「小学校教諭への道は、まだまだ始まったばかり。でも……きっと私ならできる。」


 自分に言い聞かせるように呟き、あゆみは未来への決意を新たにした。

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